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連載:みんなの未来マップ ゴミが、未来の景色をつくる fabula株式会社 代表取締役CEO 町田 紘太さん

連載:みんなの未来マップ

ゴミと資本主義をつなぎ直したい。廃棄物を宝に変えるfabulaの未来戦略

2025.5.29

    町田さんのロングインタビューはこちら

    ゴミを建材や家具に生まれ変わらせる。新たな物語や未来を紡ぐ「新素材」の潜在力

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    食品廃棄物を建材や家具へと生まれ変わらせるスタートアップ、fabula(ファーブラ)。対象になる食品廃棄物は、白菜やカカオ豆の種皮、さらには賞味期限切れのコンビニ弁当まで、多岐にわたります。

    サステナビリティに力を入れている企業として注目を集めていますが、代表の町田紘太さんはどのような未来を描いているのでしょうか。話を伺いました。

    fabulaは「サステナブルに力を入れている企業」として、ESG領域のスタートアップとして、注目を集めています。

    確かにそういう側面はあると思います。環境に配慮している、ゴミを減らしている。廃棄物を素材にしている……。こうした事実だけで、商品や企業が評価されることは少なくありません。ですが、「環境にいいことしてるから、このクオリティでも許されるよね」ではダメだと思います。

    やっぱり、「面白い、素敵、欲しい」といった感情が最初にこないとダメなんです。きちんと資本主義の文脈で評価されないと、事業としての継続性もないし、結果的に僕たちのやりたいことも実現できなくなる。サステナブルであることは"理由"ではなくて、"副産物"くらいでちょうどいいのかもしれません。

    確かに。直感的に「欲しい」と思わせるほうがその後も続いていく。結果的にサステナブルなのかもしれません。

    例えば、このコースターは使用済みのお茶をもとにつくられていますが、嗅いでみると、お茶の香りがしっかりします。普段生活していてコースターを嗅ぐことなんてありませんよね(笑)。思わず行動に表れてしまうような、人の神経をくすぐる「感動」をゴミからつくりたいんです。

    お茶だけではなくお米や柑橘類など、さまざまな廃棄物でつくられています。

    なので、僕たちの基準はシンプルで「感動しないことはやらない」って決めています。例えば新素材にプラスチックを混ぜることだって可能です。でも、僕たちは不用意にはやらない。商品に込めた付加価値や素材の面白さが損なわれて、手に取った時の感動が半減してしまうと思うんです。

    感動、つまりゴミから付加価値を生み出すのがfabulaの使命、ということですよね。

    そうですね。将来的に静脈産業を動脈産業と同じくらい評価されるようにしたいんですよ。

    どういうことでしょうか?

    これまでは資源を採取、加工したり、製品を生産し販売する「動脈産業」が評価されてきました。多くの人に認知されやすく、経済成長と直結してわかりやすい特徴があります。一方、使用済み製品を回収して再生利用する「静脈産業」は、社会を支える大事な機能であっても、目立ちにくい。生活の中で実感できることはまだ一部分で、価値として伝わりづらい側面があります。結果、産業として評価されにくいと感じています。

    ただ、2つの産業はいわばコインの表と裏のようなもので、産業が発展すればするほど、廃棄物は増えていきます。だから静脈産業で付加価値を生むことができれば、将来的には動脈産業と同じ、またはそれ以上に認知され評価されるようになると思うんです。

    また、「エンドユーザーに価値を届ける」という、動脈産業では当たり前に行われていることが、静脈産業における現状では限定的であり、もっと伸ばせる可能性を秘めているのではないか、と。静脈産業において、動脈産業化が実現できれば世の中の価値観もきっと変わっていく。

    「ゴミが原料になり得る」。そんな価値観が共有されれば、近い将来、ゴミと原料の境目ってどんどん曖昧になっていくと思います。買ってきた豆苗を使って、残った根本から再び豆苗を育てている人もいますよね。他人から見たら価値がないかもしれないけど、別の人から見れば「宝の山」に見えるようなことって、いろいろあります。いつかは「ゴミ」という概念すらなくなるかもしれない。そうした価値観を浸透させていきたいですね。

    そんな価値観が根づいた遠い未来、どんなふうになっていると思いますか?

    遠い将来、人類が宇宙で暮らすようになるかもしれないといわれていますよね。はるか先の宇宙生活時代でも、僕たちの有機廃棄物を利用する技術やレシピがあれば、きっと役に立ちます。どんなに高度な科学技術が発展しても人間はゴミを出し続けます。髪が伸びれば切るし、宇宙でもミカンの皮は捨てるでしょうし、不要になった衣類も出つづけます。捨てられていたものに、新たな価値が吹き込まれ、当たり前に使われる宇宙生活。そんな未来が実現できたら楽しいですね。

    そのためにも、さまざまな方々とともに社会課題にまっすぐ向き合い、たくさんの感動をつくりたいです。

    PROFILE

    町田 紘太

    町田 紘太Kota Machida

    1992年生まれ。幼少期をオランダで過ごし、環境問題に興味を持つ。東京大学生産技術研究所酒井雄也研究室で、卒業研究として食品廃棄物から新素材を開発し注目を集める。2021年、小学校からの幼馴染3人でfabula(ファーブラ)株式会社を設立。同社の代表取締役を務め、現在も新素材に関する研究を進めている。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウスグループでは、建物建材の再利用をはじめ、サプライチェーンマネジメント(環境)に取り組んでいます。

    環境経営の基盤強化 環境マネジメント

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