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Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2025.5.29
コムアイさんのロングインタビューはこちら
「マイノリティにも、マジョリティにもなる私」。コムアイが語る、多様性の視点
詳細を見るアーティスト、俳優として活躍し、身体的なパフォーマンスや映像作品への出演など、幅広く活動するコムアイさん。気候変動をはじめとする社会問題についても発信しています。
現在は、日本とブラジルで2拠点生活を送り、パートナーの映画監督・文化人類学者の太田光海さんとともに子育て中です。2023年、ペルーのアマゾンに暮らすワンピス族の村で出産したことも話題を呼びました。多文化に触れる日々の中、日本について見つめ直すことも多いそうです。コムアイさんは目指したい未来をどう思い描いているのでしょうか。
ブラジルでお子さんと過ごす中で、日本との違いを感じますか?
感じますね。例えば、日本では子どもと一緒に電車に乗っても、誰とも話さず、すごく静か。ブラジルではすれ違う人たちが子どもに「かわいいね」と言ったり、いきなり抱きかかえたり、投げキスをしたり。みんなが子どもを構うので、通りをなかなか歩ききれないんです。
写真:ご本人提供。
レストランでも、子どもが食事に飽きてバーっと走っていってしまったと思ったら、別のテーブルにいたおばちゃんが膝にのせて一緒に遊んでくれて。その間に私たちは「ラッキー、今だ!」という感じでご飯を食べたり(笑)。おばちゃんも「あなたたちのために面倒を見てあげている」みたいな様子はなく、ただかわいいから遊んでいるだけという感じで、私たちに挨拶したりしないし、こちらもお礼を言わなきゃというプレッシャーは感じないんです。もちろん話してもいいんですけど、どっちでもいいという感じかな。その瞬間に「こんなに楽で良かったのか」と思いました。
日本だと、親も周囲の人ももっと気を遣う空気がありますね。
でももしかしたら、日本も昭和の時代にはそういう感じだったのかもしれないですね。失ったものを取り戻すのってすごく難しい。
ブラジルで過ごしていて、ブラジルに対して「もっとこうなってほしい」と思うことはないんです。暮らしている期間もまだ短いし、好きだけど自分の国だとは思っていないからだと思います。「こう変わってほしい」という思いを抱くのは、やはり生まれ育った日本。海外でいろいろ経験していくうちに、日本について感じたことを発信する意味があるのではないかと思うようになりました。
例えば、どう変わってほしいと思いますか?
やっぱりコミュニケーションです。もっと思いやりが感じられて、あったかい気分になるためにはどうしたらいいのか。孤独に感じている人や自殺してしまう人、困窮している人を減らすためには、制度設計ももちろん必要だけれど、根本にはお互いを思いやれるかということがあると思います。
日常的なことで例を挙げるなら、電車の中でお年寄りや子どもを抱っこしている人に席を譲れるかどうか。中南米ではみんな1秒で譲ります。自分がものすごく疲れていてそれどころじゃない時もあるし、私自身、高校生の頃に譲れなかった時もあります。でも、「自分よりこの人のほうが大変かも」と思いやれたら、疲れていても「どうぞ」と言えますよね。それに、譲ったことで自分がしんどいかといえば、かえって会話に元気をもらえたりもします。
先ほどの「日本は電車に乗っている時、人に話しかけない」ということにもつながってきますね。
まさに、話せばいいだけなんですけどね。話さないと、相手を「人」として見れない。日本だけの問題ではなく、欧米でもそういう傾向があるなと思います。他人となるべく関わらないようにしようと変わってきている。うまく表現できませんが……ブラジルでは都会でも「人を人として見ている」感じがして、それに感動することがあります。
どうすればもっと思いやりのある世の中に変わっていくと思いますか?
日本にも外国から来た方が増えていますよね。「郷に入っては郷に従え」とよく言われますが、コミュニケーションの冷たさにはあまり染まらないでほしいなと思います。この間、知人がバスに乗っている時に隣に座っていた外国の方に話しかけられて、ずっと話し続けるので寝られなかったと言っていたんです(笑)。それってなんかいいなって。
私の場合は子どもがほかの人にちょっかいを出してしまったりするので、そういうのをきっかけに話すことができたりします。ほかの小さい子にも「かわいいね〜」と遠慮なく話しかけたりするようになりました。みんなが黙っていると、子どもがいて迷惑かけちゃってるかなって親はどきどきしちゃうんですよね。変だと思われそうでも、気にしないことが大事かもしれません。
写真:ご本人提供。
コミュニケーションもそうですが、例えば駅の表示一つとっても、色や記号で判別できるとか、外国の方にわかりやすい工夫があれば、日本人だってもっと感覚的に歩けるようになるかもしれない。何かができないとか、不便を感じている人がいることで、制度やルールが見直されて、みんなが生きやすい社会になっていくと思います。
お子さんを育てる中で、ご自身に何か意識の変化もありましたか?
"前にも後にも伸びた"感覚があります。自分は脈々とつながる"鎖"の一個なんだな、と。未来に対する意識が大きく変わりました。ちゃんとこの先も世界が続いていってほしいと思う。自分がいない未来を想像するのは寂しいことでもあるけれど、そう願うことが嬉しくもあります。これは子どもを持たなくても、自分より若い世代にすごく大事に思う人がいれば、きっと抱く気持ちだろうと思いますね。
1992年神奈川県川崎市生まれ。音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして活動し、2021年9月に脱退。 伝統音楽活動以外にも映像作品への出演、執筆など独自の表現活動を展開する。水資源の課題を考えるプロジェクト「HYPE FREE WATER」をはじめ、社会問題を積極的に発信している。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
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