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2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ 子どもが減る時代、大人に何ができる?
2024.12.26
土肥さんのロングインタビューはこちら
全国90カ所に広がる、私設図書館「みんとしょ」。焼津のまちから始まった市民自治の輪
詳細を見る静岡県の焼津のまちから始まった、私設図書館「みんなの図書館さんかく」。本棚を月額で借りたオーナーが自分の好きな本やおすすめの本を並べるシステムが話題となり、今では全国90カ所に拡大、地域活性化の新たな形として注目されています。
手がけたのは一般社団法人トリナス代表理事の土肥潤也さん。2024年9月には、新たに「私設公民館」を始めたと言います。土肥さんはどんなまちづくりの未来を考えているのか、そして子どもたちのこれからはどうなるのか、話を聞きました。
公共のイメージが強い「図書館」に続いて、「公民館」をつくられたそうですね。
はい、2024年9月に「さんかく」の向かい側に「みんなの公民館まる」をオープンさせました。「さんかく」の次は「まる」です(笑)。まるのコンセプトは「こども・若者の人生の寄り道」。中学生・高校生・大学生を中心に、10代~20代が自由に立ち寄れる場所で、そこに行けば誰かに会えて、思いがけない発見や出会いがある場所にしたいと思っています。
なぜ公民館に着目したのですか?
公民館って、実は社会教育法で「市民自治の拠点」とも定義されています。ですが、ちゃんと機能していないのが実情です。公民館で地域のご高齢者がサークル的にお花をしたり集まるシーンはよく目にします。もちろんそれ自体は否定しませんが、それにより「地域の自治性が育っているのか?」というと別の話です。市民の学びを促し、自治性を育てることにつながる本来の意味での公民館を、子ども中心につくりたい、と思ったんです。
「学び」となると堅いイメージがあります。どんなことを学ぶのでしょうか。
例えばスウェーデンでは、3人以上で特定のテーマについて学ぶためのサークルをつくると、公共施設の利用料が無料になったり本を買う助成金が出たりするそうです。テーマは堅いものから、そうでないものなどさまざま。
ビジネススキルや勉強的な意味の学びだけが「学び」ではないと思うんです。"まる"では「ドラえもん研究会」や「ギャルメイク勉強会」なんてサークルもあります。「ドラえもん研究会」は、高校生2人と社会人1人のサークルで、世代もさまざま。一見何につながるのか分からないテーマでも、それでいいんです。重要なのは、何かを"学び続ける"市民がいるということ。それを若者中心につくりたかった。
大人がチケットを購入して、小中高大学生世代が「まる」で無料で飲み食いできる「みらいチケット」。子どもたちの学びをあたたかく支える仕組みが印象的です。
2024年の出生数は70万人を割り込むだろう、という驚きのニュースがありました。土肥さんはこども家庭庁こども家庭審議会にも有識者として参画していますが、こうした現状をどう捉えていますか?
子どもが減っていること自体は悲しいですが、生まれた子どもたちが幸せに暮らしているのかという視点も大切です。ユニセフが発表した2020年のデータでは、日本の子どもたちの幸福度は非常に低く、先進国38カ国のうち20位、精神的幸福度※1は37位とほぼ最下位でした。子どもの数は減っているから、子どもを支えられる大人は多いはず。なのに、どんどん不幸になっている…。
貧困率は上がり不登校者数※2も増えているように、数少ない子どもたちの中で、社会とつながれない子が増えています。そうした子どもたちが大人になり、結婚したいか、子どもを産みたいと思うかというと、そうならないんじゃないかな。
現在、若年層の引きこもりは4万人※3を超えるといわれています。こうした社会との関係を絶っている子たちを、いかに社会と結び直すかを考えたほうがいい。
若者が主体的に自治に関わるにはどうしたらいいと思いますか?
ユニークな取り組みをしているのが愛知県の新城市です。新城市では16〜29歳までの若年層が「若者議会」をつくって、年間予算1000万円のもと、政策を提言する取り組みを2015年から毎年続けています。
政策は市議会の承認を得れば、実際に予算がつき、実施までこぎつけます。この取り組みを約10年間続けたら、若者議会から市議会議員になる人が出てきました。若者が自主的に政治に参加した好例だと思いますし、延べ1億円の投資でもその効果は十分にあったんじゃないかと思います。
図書館から公民館へと土肥さんの取り組みは広がっていますが、今後考えていることがあれば聞かせてください。
30代の目標は学校をつくりたいと思っているんです。楽天グループ株式会社の元副社長・本城慎之介氏が、私財を投じて2020年に軽井沢で開校した「風越学園」という幼稚園と小中学校があるのですが、そこでは、年齢でクラスを分けない「混在学級」など、従来の学校教育に縛られないユニークな教育を実施しています。人口5000人ほどの徳島県の神山町では2023年にテクノロジー×デザインを掲げている「神山まるごと高専」が開校したことで、移住者も増えています。
これから学校は"余る"時代になりますが、学校は地域の基礎であり、未来への種まきをする場所なのは変わりません。なので今こそ学校なのかもな、と。小さく始めた"みんとしょ"が広がったことで、少しだけ自信が生まれました。図書館、公民館、そして次に学校。子どもたちを中心に学びや自治性を育んでいけたら、少しだけ日本の未来も変わるかも、って思っています。
1995年、静岡県焼津市生まれ。早稲田大学社会科学研究科修士課程修了、修士(社会科学)。2015年に、NPO法人わかもののまちを設立。2020年に一般社団法人トリナスを共同創業、現在は代表理事。焼津駅前通り商店街を起点に、完全民営の私設図書館「みんなの図書館さんかく」を開館。内閣府 若者円卓会議 委員、こども家庭庁こども家庭審議会 委員、東京都青少年問題協議会若者部会座長などを歴任。2024年9月に「みんなの公民館まる」を立ち上げる。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
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2024年3月にリニューアルしました。