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2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2026.1.28
石森さんのロングインタビューはこちら
「情報は答えじゃない」。防災アプリNERVが挑む、次世代公共インフラの形
詳細を見る災害が起きた時、私たちは本当に「正しい判断」ができているのでしょうか。
情報はあふれているのに、迷い、立ち止まり、行動が遅れてしまう。そんな場面は決して少なくありません。でも、これが緊急の災害時だったら——?
防災アプリ「特務機関NERV(ネルフ)」(以下、NERV)を手がけるゲヒルン株式会社の創業者・石森大貴さんは、「情報は答えではない」と言います。大切なのは、情報をどう受け取り、どう行動につなげるか。その判断力を、社会全体でどう支えていくかだと考えています。
災害が増える時代において、防災は行政や専門家だけのものではなくなりました。個人、企業、地域が緩やかにつながり、互いに助け合う仕組みが求められています。
NERVの取り組みを通して、「みんなで生きていく」ための新しい防災情報インフラの姿を描きます。
石森さんは、最近の災害の傾向についてどう感じていますか?
気候変動の影響が、もう身近な気象災害として表れ始めています。私たちは防災情報発信で全部の災害にアンテナを張ってるから特に感じるのかもしれませんが、やはり肌感覚として災害は増えているし、その規模も大きくなっている。
NERVアプリの画面。地震だけではなく津波、台風、洪水、土砂災害警戒情報など、さまざまな種類の災害情報を扱っています。
画像提供:ゲヒルン株式会社
これは単なる印象じゃなくて、実際にデータとしても表れています。台風の勢力、豪雨の頻度、地震活動……すべてが活発化している傾向があります。
そうした状況の中で、御社はどのような対応をされているのでしょうか?
私たちができることは、正確な情報をより早く、より多くの人に届けることです。でも、ここで重要なのは「情報を届ける」だけじゃダメだということ。その情報を受け取った人が、適切な判断をして行動できるようにすることが大切なんです。
個人向けのNERVアプリの他に、今年2月からは法人向けの「CRISIS(クライシス)」というサービスも展開予定ですね。これはどのようなサービスですか?
CRISISは、企業や自治体向けの防災情報配信サービスです。基本的な防災情報の配信機能に加えて、組織特有のニーズに対応した機能を提供しています。
例えば、企業であれば社員の安否確認、複数拠点の一括管理、事業継続計画(BCP)との連携などが必要になります。自治体であれば、住民への情報配信、避難所の管理、災害対策本部での情報共有などが重要です。これらの機能を統合的に提供しているのがCRISISの特徴です。
NERVアプリとCRISISは、今後連携の可能性もありますか?
はい。実は、NERVは個人向け、CRISISは法人向けという単純な分け方ではありません。最終的には、この2つが連携することで、より大きな価値を生み出せると考えています。
例えば、CRISISを導入している企業が、災害時に「うちの事業所では備蓄食料をシェアできます」「トイレを開放しています」といった情報を、NERVアプリのユーザーにも共有できるようにする。逆に、NERVアプリのユーザーはリアルタイムで現地から被災情報を投稿することで、企業の事業継続計画の判断に活用してもらう。そういった相互連携を目指しています。
まさに「みんなで助け合う」仕組みですね。
そうなんです。災害時って、行政だけ、企業だけ、個人だけでは限界があります。でも、みんなが持っている情報やリソースを共有できれば、もっと多くの人を助けることができる。ITはそのための手段として、すごく有効だと思っています。
今年の11月1日に防災庁が新設されますが、これによって何か変わることはあるでしょうか?
正直なところ、大きくは変わらないんじゃないかなというのが私たちの見立てです。情報伝達の部分に関しては、すでに気象庁やNHK、民間事業者などが頑張っていますから、劇的な変化は起きないと思います。
ただ、防災への注目度は上がるでしょうし、予算配分や権限の集約といった面での改善は期待できます。さらに、防災庁ができることで、避難所の運営やプッシュ型支援、広域避難など、私たちが見ている情報伝達とは違うスコープの課題解決が進むことを期待しています。
石森さんは「情報が正解ではない」というメッセージを発信しています。一般の人が防災に関する判断力を養うのは難しいと思うのですが、どうお考えですか?
確かに難しいですよね。防災に関する判断力って日常生活で磨かれる機会があまりないんですよ。天気予報とは違って、地震速報の見方とか、避難のタイミングとか、普段は考えないじゃないですか。"20cmの津波"と言われても誰も警戒しないですよね。でも、実際に沿岸到達時には10倍以上になる場合もあるので、身近に迫ってくる頃には2mになってるかもしれないんです。
もちろん、全員が防災リテラシーを持つことが理想的ですが、現実的にはまず、NERVアプリのサポーターのような、普通の人よりは情報リテラシーの高い人たちを増やしていく。そして、何かあった時に、その人たちが隣の人に伝えていく。そうした地道な活動を一歩ずつ積み重ねていくことかなと思っています。
最後に、これからの展望を聞かせてください。
これまでの通説であり、私自身も「防災では稼げない」と言い続けてきましたが、株式会社である以上、持続可能なビジネスとして続けていく必要があります。ビジネスとしてできることはまだまだある。月額会費制の「サポーターズクラブ」も一つの答えでしたし、CRISISという法人向けサービスも始めます。両立の道が、なんとなく見え始めています。
また、地域の企業と住民が、災害がない時から緩やかにつながっていて、何かあった時に情報を助け合える関係。そんなコミュニティを、NERVアプリやCRISISなど、私たちが手がけるITサービスを使ってつくっていきたいですね。
私たちがつくっているのは、単なる防災アプリではありません。「みんなで生きていく」ための新しいインフラでありたい。これからも、その使命を果たしていきたいです。

1990年宮城県石巻市生まれ。大学在学中の2010年にゲヒルン株式会社を創業。2011年の東日本大震災を機に、X(旧Twitter)アカウント「特務機関NERV」で防災情報の発信を開始。2019年に防災アプリ「特務機関NERV」をリリース。現在780万人以上(2025年12月時点)が利用する国内最速レベルの防災情報サービスに成長させる。エヴァンゲリオンの版権元から名称・ロゴの使用許諾を得て、新劇場版のエンドロールにも社名がクレジットされている。「情報に依存せず、自分で判断する」という理念のもと、次世代の公共インフラ構築に挑戦し続けている。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

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