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連載:みんなの未来マップ これまでの介護の常識を疑おう NPO法人となりのかいご 代表理事 川内潤

連載:みんなの未来マップ

介護保険の原点、知ってますか? 専門家が語る「親の自立や幸せを追求する」生き方

2025.1.31

    川内さんのロングインタビューはこちら

    「親不孝な介護」のすすめ。仕事や生活を削らない、サステナブルな介護とは

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    企業での介護セミナーや介護相談を通して、介護に対する意識を変えていく活動を行っている「NPO法人となりのかいご」代表理事の川内潤さん。「誰もが最期まで家族と自然に過ごせる社会」をミッションとし、親との距離を取って自分の生活を削らない「親不孝介護」が、結果的により良い介護につながっていくと訴えています。

    課題の多い日本の介護のあり方はこの先どうなっていくのか。川内さんが考えるこれからの介護の展望を伺いました。

    介護保険制度=高齢者の自立を支援する制度

    日本の介護保険制度は、ドイツの介護保険制度を参考につくられた、世界的に見ても大変充実した内容です。ただ、その充実した制度を活用するためには、私たちのマインドがリセットされる必要があります。

    ドイツは個人主義の国で、家族が親の面倒を見るという感覚がありません。つまり、そもそも「高齢者の自立を支援する制度」というのが大前提なんです。それが一丁目一番地と言っていい。“家族が安心するための制度”ではないんですね。

    何となく、高齢者を支える家族のための制度だと思い込んでいました。

    みなさんそうだと思います。でも2000年に介護保険が始まった時の最初の目標は、介護を社会化し、家族だけでやってきた介護を社会全体で支えようと、介護サービスを受けることを当たり前にすることだったんです。そこで壁になったのが「意識」でした。結局、仕組みは整ったけれども家族の意識が変わっていかないので、本当の意味での本人の自立の支援をする制度に至っていません。

    私は、家族を安心させるための制度に人の幸せはないのではないかと思います。家族の安心を優先したら、極端にいえば「転ぶから一切歩き回るな、物忘れをするな」ということになります。転んでも忘れてもいいんです。それが人間という生き物なんですから。本人の意思を尊重し、生きたいように生きられるようにする。そのために、介護保険制度を活用していくことが大切だと思います。

    介護はダイバーシティを伝えるテーマになり得る

    確かに、介護される本人の気持ちが置き去りになっているかもしれません。社会が変わっていくためにも、これからの介護はどうなっていくべきだと思いますか?

    家族の介護を通して、自分自身が成長できたり、自分の考え方が持てるようになるといいですね。「親が祖父母の面倒を見ていたから自分も……」と思考停止に陥らず、生き方を考えるきっかけを介護から得てもらいたいです。それが本当の意味での誰もが生きやすい社会につながっていくと思います。

    介護は考えるきっかけを与えてくれるということでしょうか。

    そうですね。例えばダイバーシティという考え方を伝える時には、介護は良いテーマになります。なぜなら、介護と無関係でいられる人間は、日本にほぼいないからです。

    「何かあったらいけないから」「周りに迷惑がかかるから」と老齢の親を一人でスーパーに行かせないようにしている方がしばしばいます。もちろん心配なのは分かりますが、本人が行きたいのであれば、行かせてあげてもいいんです。それに、スーパーの店員にとっても、老齢者の対応をすることが接客の研修になることもあります。

    また、昨今課題解決型の思考だけでは頭打ちとされていますが、介護は課題を見つけてタスク化させると、やることが際限なく増えていきます。自分と家族が良好な関係を続けていくためには、むしろPDCAを回してはいけないんです。介護を考えることで、普段の仕事でも発想の転換が図れることはいろいろあるのではないでしょうか。

    大切なのは早めの相談

    介護業界についてもさまざまな課題があるかと思いますが、この先のより良い介護のために、私たちができることはありますか?

    介護職の方や地域包括支援センターの職員に楽しく働いてもらうためにも、家族で抱えないことが肝要です。早くから相談してもらえれば、何かあった時にすぐに適切な対応を取ることができます。

    認知症の方がいきなり暴れたり、暴力を振るうわけではなく、突然知らないところに連れて来られたり、知らない人に囲まれたりといった副次的な理由でそうなっているケースが多いんです。早くから相談してもらえれば、事前に情報が把握できるし、関係性をあらかじめつくっておくこともできます。

    ちょっとしたことで相談しては申し訳ないと思ってしまいますが、逆なんですね。早ければ早いほどいい、と。

    要支援1でも、介護認定がついていなくても、お互いのためにぜひ気軽に相談してください。より良い介護の実現に向けて、社会に対して一人ひとりができることはまだたくさんあると思いますよ。

    PROFILE

    川内潤

    川内潤Jun Kawauchi

    社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業後、老人ホーム紹介事業や外資系コンサルティング企業勤務を経て、在宅・施設介護職員に。2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年にNPO法人化し、代表理事に就任。家族介護による介護離職や高齢者虐待をなくし、誰もが自然に家族の介護に関わることのできる社会の実現を目指している。著書に『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』、『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』、『親の介護の「やってはいけない」』などがある。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業が取り組むシルバーエイジ研究所では、医療・介護・福祉施設のプロフェッショナルとして、高齢者が幸せを追求しながら生活できる住まいづくり、ソリューションの提供を行っています。

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