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特集:検証!サステナブルの10年、その現在地 SDGs、10年間の変化。それでもごみ問題が進まない理由 一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事 坂野晶さん

特集:検証!サステナブルの10年、その現在地

ごみ問題を"環境"から"資源"へ。ゼロ・ウェイストが描く次の社会

2026.3.26

    コンビニやカフェのコーヒーカップ、スーパーの食品トレー、ネット通販の梱包材——。便利な暮らしの裏側で、私たちは毎日たくさんのごみを生み出しています。しかし、日本のごみ問題はすでに「解決された」と思っている人も多いのではないでしょうか。

    実際、日本ではごみの多くが焼却処理され、街中でごみがあふれることもほとんどありません。けれども、その"見えにくさ"の裏で多くの問題が片付けられずにいます。

    2025年時点の最新データによると、日本の一般廃棄物のリサイクル率は19.5%。この数字は過去10年間ほとんど変わっておらず、20%前後で横ばいの状態が続いています。

    「日本の場合、ごみの"適正処理"はきちんとできています。ただ、それによって"ごみ問題は解決した"かのように見えてしまっているんです」。

    そう話すのは、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事の坂野晶さんです。

    SDGsが国際社会で掲げられてから約10年。環境問題への関心は高まったようにも見えますが、状況は本当に変わったのでしょうか。日本のSDGsの現在地、そしてこれからの可能性について話を聞きました。

    世界的にも、環境問題の優先順位は下がりつつある

    坂野さんが代表理事を務めるゼロ・ウェイスト・ジャパンでは、無駄や浪費を減らし、そもそもごみを出さない社会を目指す「ゼロ・ウェイスト」の考え方を広げるため、企業や自治体に働きかけてきました。

    特にこの10年は、SDGsという言葉の広まりとともに、レジ袋の有料化やフリマアプリの普及など、私たちの生活に身近なところでも環境への意識が高まってきました。

    ©lithiumcloud

    SDGsの達成期限である2030年まで、残り4年となりました。しかし現在の進捗を見る限り、すべての目標を達成することは難しいと指摘されています。

    「SDGsには全部で17の目標がありますが、達成が進んでいるものと、ほとんど進んでいないものの差が大きいのが特徴です。教育や飢餓・貧困といった"ヒューマン領域"はある程度前進した一方で、環境領域は大きな進展が見られていません。今後は、前進が十分でなかった領域について、次の目標をどう設定していくかが重要なテーマになると思います」。

    さらに坂野さんは、世界のリスク認識の変化にも注目しています。コロナ禍以降、世界経済フォーラムが発表する「グローバル・リスク・レポート」では、社会課題やリスクを「短期(ショートターム)」と「長期(ロングターム)」に分けて整理するようになりました。

    「短期のリスクでは、社会構造の変化に関する問題が上位に並ぶ傾向があります。トップにはジオポリティカル※1の問題があり、その次に情報秩序の混乱や社会分断のリスクが続く。その後にようやく異常気象の問題が出てくるんです」。

    ©RadekProcyk

    「一方で長期のリスクでは、異常気象や気象災害といった環境リスクが上位を占めています。つまり、環境問題が重要であるという認識自体は世界的に共有されている。ただ、どうしても各国は目の前の短期リスクへの対応を優先せざるを得ない。その結果、気候変動対策への投資が積極的に進みにくいという構造ができあがってしまうんです」。

    つまり、環境問題は「重要ではない」わけではありません。重要だと理解されていながらも、各国が目の前の社会的・政治的リスクへの対応に追われることで、どうしても後回しになりやすい構造にあるのです。

    ※1:地理的環境(地形、位置、資源、人口等)が国家の外交や政治、安全保障政策に与える影響を指す言葉。

    10年で何が変わったか。個人、企業、国・自治体は?

    坂野さんは、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町で、2015年から5年間、ごみ問題に取り組みました。

    上勝町では住民がゴミステーションに自らごみを持ち込み、13種類45分別(2024年からは13種類43分別)する仕組みを採用しています。その結果、リサイクル率は80%に達し、世界中から視察が訪れるゼロ・ウェイストの先進地域となりました。

    ただし、今後さらに取り組みを前進させるには、「3者の努力が必要」だと坂野さんは言います。

    「個人は日々の生活の中でできることに取り組む。企業はそのためのサービスやソリューションを提供する。そして国や自治体は、個人や企業の動きを後押しする制度や政策を整える。このバランスが取れて初めて、ゼロ・ウェイストは実現すると思います」。

    こうした考えのもと、ゼロ・ウェイスト・ジャパンでは、ゼロ・ウェイストに取り組む全国の地域、自治体に対し、行政の計画策定とその実装などの支援を幅広く行っています。

    「日本では、廃棄物処理の政策は自治体が担っています。つまり自治体ごとに制度も意思決定も違う。だからこそ、一つ一つの地域で丁寧に変えていくことが最善なんです。地道で時間のかかる取り組みですが、逆に言えば、地域はグローバルな動きに左右されずに着実に進められる強みもあると思います」。

    一方で坂野さんは、2023年に循環商社「ECOMMIT」に参画。衣料品等を回収し、リユースするビジネスを全国で展開しています。

    PASSTO(パスト)WEBサイトより

    「ゼロ・ウェイスト・ジャパンが、一つの地域で100のことを積み重ねていく活動だとすれば、ECOMMITがやっているのは、100の地域に1つのソリューションを届けることです。どの地域でも導入できる仕組みが広がれば、一気に"ゲートオープン"になる。それがビジネスの強みだと思います」。

    さらに坂野さんは、サーキュラーエコノミーによってビジネスの構造自体が変わる可能性もあると指摘します。

    「自分たちの商品を循環させる仕組みができれば、それは資源を再確保する戦略にもなります。これまでは1着つくって売るだけだったので、つくれるだけつくって売る方が儲かりました。でも洋服をリユースするのが当たり前になり、1着が2回売れるようになれば、ビジネスモデル自体が変わっていく可能性があるんです」。

    地域での地道な取り組みと、ビジネスによるスケール。この二つが噛み合うことで、ゼロ・ウェイストの取り組みは初めて社会全体へと広がっていきます。

    ごみが「資源」になる——。坂野さんは、この意識の変容が10年の大きな変化の一つだと言います。さらに今後は、ごみ問題を単なる環境問題として扱うのではなく、「資源」として位置づけ直すことで、社会のさまざまな分野と結びついていく可能性があると続けます。

    「例えば、地域で生ごみから堆肥をつくって循環させる仕組みをつくれば、農業の持続可能性にもつながるかもしれない。そうなると、これは単なる環境の話ではなくなるんです。さらに『福祉』や『産業』など、他の分野とも掛け合わせながら地域政策として実装していくこともできる。

    最近は国との議論でも、『環境』ではなく『資源』という文脈で説明すると、耳を傾けてもらいやすくなりました。活動を続けていると、やはり最終的には法整備が必要だというところに行き着きます。私は今ロビイング※2に多くの時間を費やしていますが、どうすれば国のポリティカルアジェンダに近い言葉で伝えられるかを常に意識していますね」。

    ※2:企業や団体が自社に有利なルールや政策を実現するため、政府・国会議員・行政機関などに働きかける活動。

    必要なのは「水の人」

    今年度、坂野さんは「状況が大きく動き始めた」と感じる出来事があったといいます。

    「自治体で資源循環を推進する環境省の事業が始まったんです。これまでゼロ・ウェイスト・ジャパンが1地域ずつ取り組んできたことを、環境省が約50自治体で進めてくれることになりました。最初は半ば強制的な形だったとしても、取り組む地域が増えれば、動きはどんどん加速していくのではないかと期待しています」。

    ただし、取り組みを広げていくためには、人材の存在が欠かせないと坂野さんは言います。

    「加速させるためには、私のように地域と行政、企業をつなぎながらコーディネートできる人を増やしていく必要があります」。

    脱炭素社会を実現させるための人材育成を目的とした「Green Innovator Academy」を2021年に開講。さらに2026年4月からは、ゼロ・ウェイスト分野に特化した新たな人材育成プログラムをスタートさせる予定です。
    提供:Green Innovator Academy

    坂野さんは、地域の変化を生み出す人材を「風の人」「水の人」「土の人」という言葉で説明します。

    「土の人は、その地域で地道に頑張る地元の人。風の人は、新しいアイデアを持ち込んで種をまく人。そして、その種が芽を出して育つためには、水をやる人が必要です。地域には、この"水の人"が圧倒的に足りていません」。

    水の人とは、地域・行政・企業などの主体間をつなぎながら、取り組みを実装していくコーディネーターのような存在です。

    「でも最近、ごみの分野で仕事をしたいという若者が増えてきているんです。これまで誰もが積極的にはやりたがらなかった"ごみの仕事"が、若い人たちに選ばれる仕事に少しずつ変わってきている。それは、この10年の社会の変化でもあると思います」。

    最初から、100%を目指さなくていい

    個人への啓発、自治体への伴走支援、そしてビジネス領域——。坂野さんの活動のフィールドは、この10年で大きく広がってきました。

    坂野さんがよく口にする言葉があります。

    「『ポロッと宣言しちゃうのって大事ですよ』ということです(笑)。日本人は真面目すぎて、100%できないと宣言してはいけないと思ってしまう。でもゼロ・ウェイストも同じで、ごみを完全にゼロにすることが必ずしも大事なのではありません。ごみゼロを目指して、その結果80%減れば、それはものすごく大きな成果なんです」。

    完璧な答えを求めるよりも、まずは動き出すこと。その小さな行動が、社会の変化につながっていくと坂野さんは言います。

    「これからは、違う立場の人たちが一緒に取り組むことがますます重要になります。企業、自治体、市民。それぞれ立場が違うからこそ、一緒に動くのは簡単ではありません。でも、そのハードルを乗り越えることに力を使ったほうが、何もしないで止まってしまうよりも、ずっと前に進んでいける。私たちも、その挑戦をしっかり支えていきたいと思っています」。

    完璧を待つのではなく、まず動き出すこと。その積み重ねが、ゼロ・ウェイストという未来を少しずつ現実に近づけていきます。

    PROFILE

    坂野晶

    坂野晶Akira Sakano

    一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事/一般社団法人Green innovation 共同代表/株式会社ECOMMIT 上席執行役員 CCO(Chief Circularity Officer)。日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町の廃棄物政策を担うNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー元・理事長。2019年世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)共同議長。2020年より一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンにて循環型社会のモデル形成に取り組む。2021年、脱炭素に向けた社会変革を起こす人材育成プログラムGreen Innovator Academyを共同設立。2023年より株式会社ECOMMITに参画。2025年より至善館大学院大学 循環未来デザインセンター共同センター長。

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    SDGsの達成期限となっている2030年をひとつの通過点として、大和ハウスグループでは世界共通の課題解決に向けて、前へ進み続けています。取り組み事例一覧はこちらよりご覧ください。

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