大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

TKC会員・職員の皆様方へ 土地活用情報サイト

インタビュー

清野宏之税理士事務所 代表税理士 清野宏之

地域の課題は多い。仲間と連携し対応していきます。

「家続の会」を発足

インタビュアー(以下:I):「土浦 相続税申告相談室」の運営、「家続の会」の主宰など、資産税に特化した活動をされているとお聞きしました。

清野税理士(以下:清野):私どもの事務所は父の代に始まって51年目になります。私の父は法人業務ばかり携わってきたのですが、私が40歳を過ぎて事務所を継いだ時、資産税をやろうと思いました。10年くらい父と同じ仕事をやってきて、このままではいけないと思ったからです。資産税で有名な今仲清先生に師匠になっていただき、一緒に勉強会をやっていく中で、このまま申告だけをやっていてはだめだと思いました。もっと川上に行くべきだと思い、いろいろな方々とお付き合いするようになりました。そして、2013年には一般社団法人「家続の会」を発足しました。

I:「家族」ではなく「家続」と書くのですね。

清野:相続は家族の問題です。家族が相続するから「家続」です。「家続の会」とは、いつでも相談に行けるクリニック的存在を目指す「安心・安全なコミュニティ」です。相続でお悩みの皆様の「気軽な相談の場」となり、お客様にとって最適な提案をするため、不動産会社、銀行、証券会社、ハウスメーカー、保険会社、保険代理店、FP各社、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、不動産鑑定士など、相続に関連する仲間の協力士業・協力企業約20社とともに立ち上げました。 「家続の会」では、相続に関するイベントや無料相談会を開催しています。「家続の会」の役割は、公共性を高くするために、ほとんどお金をいただかずに、30分の相続無料相談会というかたちで広く皆さんのお悩みを聞くことです。偉そうな言い方かもしれませんが、考え方としては市町村の代わりをやろう、市町村ではできない税務相談を引き受けようと思っています。

I:税理士事務所として商品メニューがあるのはとてもユニークです。

清野:税理士事務所の関連会社として、資産税に関する商品を持ち、製品化、販売しているところはあまりないと思います。商品がないと費用も分かりにくく、相談もしにくいので、私の妻が代表を務める「有限会社KIYONO」を立ち上げ、「相続生前対策!親子でマナブ講座」という商品をリリースするに至りました。この講座を一通り学んでいただくことで、相続での手続きと生前にしておくべきことが分かります。さらに、この講座で気付いた問題を確実に解決の方向へ向ける「相続生前対策!丸っとうけます!」(コンサル業務提携サービス)、その後のフォローアップ「ずっとあなたのコンシェルジュ」(問題解決後の経過観察委託サービス)と合わせて、「相続50の落とし穴」に落ちないための三部作として展開しています。

I:ご相談はどのような流れになるのでしょうか。

清野:「家続の会」の30分の無料相談会では解決までいかず、できるのは問題の整理だけです。そこで大切にしているのは「親子で来ていただく」という構造をつくることです。
三部作の健康診断編である「相続生前対策!親子でマナブ講座」は、10回の講座をだいたい1か月で進めますが、終わる頃には皆様ととても親密になります。税理士事務所に行くのに抵抗があった方々に、「最初に税理士ではなく女性が出てきて、私たちの話を親身に聞いてくれて、自分のこととして受け止めてくれるのがありがたい」と好評価をいただきました。
次が外科手術編の「相続生前対策!丸っとうけます!」で、各界のプロフェッショナルと連携して全面的なお手伝いをします。提携するのは、大和ハウス工業さんのような建築会社、保険会社、弁護士、司法書士をはじめとしたさまざまなプロです。例えば、不動産の売却という話になれば大和ハウス工業さんの出番です。私や妻はあくまでお客様の側に立って一緒に話を聞くという立場で、建物を建てる、土地を売って他のものに転換するなどは、大和ハウス工業さんと一緒に考えます。私たちは一生懸命話を聞いて、誰に引き合わせたらいいかだけをしっかり考えるという仕組みです。

I:不動産に関するご相談も多いのでしょうか。

清野:相続登記が義務化されたため、今は土地家屋調査士への相談も増えています。また、不動産鑑定士による固定資産税の見直しでは、土地評価の間違いはほとんどありませんが、建物評価ではけっこう起きていて、最大で10年の返還になったケースもありました。遺品整理も人気で、鑑定をして5000万円の陶芸品が出てきたこともあります。そういったものが相続財産から抜け落ちていたら非常に危険です。
税の世界は狭いのですが、その周りにある終活や生前整理にはたくさんのジャンルがあります。お宝一つとってもそうですし、古民家など建物もさまざまです。お客様の人生そのものを次世代にどう受け継げばいいのか、ご相談に乗れるよう心掛けています。

家族一人ひとりの感情を知る

I:事業承継が増えていますが、どのように取り組まれていますか。

清野:私は会計型の経理をする税理士ではなく、社長の相談役というつもりでいます。最近は「10年先を考えて動く」ということを始めました。先日、ある会社の社長と次の役員についてお話しする機会がありました。その会社の取引先の方から、「次の社長が誰で、その次には誰を考えていますか。この時の番頭は誰ですか。おたくの会社は本当に大丈夫ですか」と言われ、何も答えらなかったそうです。大きな会社は人材も豊富で、役員も入れ替わる仕組みがありますので、承継上の問題は少ないですが、多くの中小企業の社長は、役員をどうするか、子どもの代がどうなるかを含め、10年後の未来を思い描いていません。中小企業にとって、この事態は事業承継税制よりよほど深刻だと思います。

I:資産に対する捉え方は世代によって異なるため、家族間のコミュニケーションが重要になりますね。

清野:私自身もそうだったのですが、「奥様の思いやお子様の夢は何ですか」と聞いて、きちんと答えられた方はほとんどいません。また、子が会社をほしいと思っていないのに、会社をあげると言っても喜びません。父親が結婚して家を出た娘にどうしても土地をあげたくても、娘さんは要らないということもあります。
賃貸住宅も一緒です。賃貸住宅を購入する時には言葉を尽くして不動産会社から説明を受けますが、親子間の場合はそれがありません。「よろしく、以上」では何も分からないですよね。そういったところを聞いていくのも私たちの仕事です。
最近では、家族会議に参加してほしいと頼まれることもあります。家族間のコミュニケーション不足は深刻な問題です。先日参加した家族会議では、ご子息ではなくお孫さんが仕切っていました。皆様長生きになっているので、子どもといっても70歳ぐらいの方もいます。そうなると、孫、ひ孫のほうが適任ということもよくある話です。

I:先生の事務所では、相続に限らず他の悩みごとも相談できるのでしょうか。

清野:はい。税理士事務所ではありますが、税金の話は最後の最後です。相続において一番大切なのは、家族一人ひとりの感情を知ることだと思っています。税理士となると身構えてしまう方もいらっしゃいますが、私の妻が対応することで安心して話ができるようで、税金だけでなく何でも相談していただいています。先日は、「そろそろ高齢者施設へ入りたいのだけど、どんな施設がいいだろう」というご相談がありました。
ご相談の中で慎重に対応しなければならないのは、「認知症になるかならないかの時に、財産を誰に託したらいいか」という問題です。最終的に認知症になってしまったり、お亡くなりになったりして相続対策が間に合わなかったケースもあり、非常に悔しい思いをしました。公証人のところに行くと決まったのに、ドクターから「残念ですが」と言われてしまったこともあります。だからこそ、生前での相続対策の講座に力を入れていきたいと思っています。
また、この地域では納税資金が工面できないケースも多く、そのときは、大和ハウス工業さんにお力添えいただき、土地を購入していただくこともあります。課題は他にもさまざまです。独居老人や空き家の問題も含めて、地域を挙げて取り組まなければなりません。そのためには、地域の仲間とどれだけ連携していくかだと思っています。

I:ありがとうございました。