インタビュー

TKC東北会 宮城県支部 木幡四郎 会員
精力的な活動で関与先さまの有意義な資産活用を支えるTKC会員にお話を伺いました。
※本コンテンツは、情報誌TKC&D CREARE vol.84掲載記事のロングバージョンです。
資産の見える化を通じて理想の将来像を提案する
関与先を経営者として成長させる
インタビュアー(以下:I):資産活用についてのお考えをお聞かせください。
木幡会員(以下:木幡):私は、『関与先の大切な資産は、ご本人の人生やご家族のために有意義に活用してほしい』との思いから、特に所有されている不動産について、活用に対する意識の確認や、さまざまな視点からの提案をすることがあります。それは、たとえ本業の傍らに1棟しか所有していなくても賃貸業は立派な事業。経営者である関与先は、自身でその内容をある程度は把握すべきだと考えているからです。
年間の収益だけに注目するのではなく、管理会社からの報告書にきちんと目を通し、入居状況や維持管理コストがどれだけあるのか。さらに、改築や建て替えの時機はどう考えているのか。担当職員を通じて、そうした意識を常に持っていただくよう、注意喚起を行っています。もちろん、これから賃貸住宅等を建てようと考える方にも、将来を見据えた計画の重要性を理解いただくことも大切です。
I:関与先さまの理解も必要ですね。
木幡:もちろん、年1回(確定申告)の顧問契約では、そこまで話題を展開するのは難しいかもしれません。当事務所では、関与先に月次もしくはそれに近い頻度での巡回監査をご提案し、可能な限りの自計化を推進しています。これは、関与先が賃貸事業の経営者として成長していただくための取り組み。経理や会計全般をこちらが代わりに行う状態が続けば、いつまで経っても真の経営者にはなれません。
少しずつでも成長していただき、その上で私たちがアドバイスするというカタチにしていくことが理想だと思います。徹底できればリレーションを深めることができますし、「賃貸住宅を建てたことを確定申告時に初めて知った」といったこともなくなりますから。
さまざまな視点から資産活用を考える?
I:実際の提案についてお聞かせください
木幡:まず着手するのが、関与先それぞれの資産の把握です。これは、大和部会でも推進している『不動産の見える化』(所有不動産の一覧リストの作成)がとても役に立っています。
当事務所では、関与先に届いた固定資産税の通知は、その明細を必ず見せていただき、不動産の利用状況をはじめ、各々の築年数や入居状況を把握。また収益物件に関しては、管理台帳を拝見して部屋ごとの稼働状況の情報など、「そこまでやるの」と思うほどマメに、定期的に検証している担当職員もいます。そして決算時には、物件ごとに「今年はどうだった」と検証。たとえば、空き状況に気づきがあるなら管理会社に要望を出し、こちらを意識してもらいます。さらに、建物自体に課題があるなら、大和ハウスさんをご紹介するといった流れです。
親と子、双方の立場から相続に向き合う
I:相続対策へのお考えは?
木幡:金融資産を多く持つ方の相続対策として、“分譲の収益物件”を提案するケースが最近増えています。しかし、相続を受ける次世代に不動産賃貸業への意欲がない場合、私は積極的に勧めません。受け継いだ資産をこれから大切に育んでいくのは相続人。その意向を踏まえた提案でなければと考えているからです。もちろん、定期的な相続税の試算は提案しており、親と子それぞれに相続に対する意識を高めてもらうよう努めています。
I:関わるすべての方の納得が不可欠なのですね。
木幡:はい。また、不動産はあるが金融資産のない方には、どのタイミングで売却し納税資金を調達するか、それは相続前か相続後かといった確認もします。そして、相続人の立場としては、「いまのうちに売っておいてもらった方が楽」だよねといった話をすることもあります。
ここで重要なのは、『相続の話題は、できるだけ相続人も交えた場で出す』こと。親子間で相続の話はしづらいものです。私たち税理士なら、その場でクッションになることができます。盆や正月など家族が集まる機会を使って、「一度、税理士に話を聞きに行こう」なんて話していただけると良いですね。関与先には、「親子が相続について考えるきっかけに、私たちを活用してください」とご案内しています。そして、それは子世代と事務所がつながりを持つことにも役立つのです。
I:大切なのは相続への意識づけ。
木幡:多くの方が「自分はまだまだ大丈夫」とおっしゃいます。しかし、誰でもいつかは引退されますから、お元気なうちにしっかり考えないと。むしろ次世代のほうが心配しておられますね。親世代に相続への意識を持ってもらうため、「あなたの場合は…」ではなく、一般論として「こんな事例がある」といった話をすれば、比較的スムーズにご理解いただけるようです。
また、前述した『不動産の見える化』がなければ、ご本人しか所有不動産の詳細を把握していないことになります。「整理しておかないと、後々お子さまたちにご苦労を掛けることになるかもしれませんよ」と伝えることが、関与先自身が資産への意識を高めることにもつながっていると思います。
専門家の力を大いに借りる
I:不動産活用の提案で気を付けておられることは?
木幡:私は不動産の専門家ではありませんから、「あなたにはこの提案が適している」とは言えません。土地活用を考える関与先に、大和ハウスさんをご紹介する理由としては、「10年・20年・30年後に、その建物はどうなっている」という長期の収支予測を、しっかりとしたプロ目線で提案いただける点にあります。関与先には、単に建てればいい、貸せばいいのではなく、あくまで経営における選択のポイントとして、このような“長期的視野でみた計画”が大切だとアドバイスしています。
また、“その方の身になって考える” ことも重要。自分が賃貸業を行うという観点を持てば、仮に建てたのは良いが、見込みがないと感じたなら、「苦労して子どもたちに不動産を残すより、早めに売却して自身の楽しい人生に活かすほうがいい」という関与先ファーストの考えもできるわけです。
「関与先ファースト」で考えることが大切だと。
I:不動産活用の提案で気を付けておられることは?
木幡:はい、資産をしっかりと次の世代へ承継することは大切ですが、ご本人が人生を楽しく送ることのほうが、もっと大切だと私は考えています。
やはり、関与先をどこまで心配してあげられるかに尽きるのではないでしょうか。自分に置き換えて課題を感じることができれば、いままで見えなかった紹介案件に気づけるかもしれません。
そして、「関与先にこんなことで困った人がいる。何か良いアイデアはない?」など、不動産のプロである大和ハウスさんと、もっと気軽で有意義な連携が図れると考えます。

木幡 四郎 (こはた しろう)
2012年8月に税理士登録。翌年5月にTKC入会。2024年10月には、税理士法人すがわら会計を設立し、代表社員税理士に就任されました。同法人は、職員総数18名の内5名が税理士(相続税専担2名含む)という構成で活動されています。
現在、TKC東北会 宮城県支部 資産活用委員会大和部会部会長。