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コラム No.82-4

CREコラム

不動産テック入門(4)「スペースシェアリング」

公開日:2019/11/29

スペースシェアリングは、仲介サイトを経由してオフィスや自宅などの空きスペースを貸したり借りたりするサービス。自動車や住居、不動産など、あらゆるものに対して「所有する」ことから「借りる」ことに価値尺度が変化している今、ITの力を駆使して新しい市場が生まれています。

借りて済ますシェアリングエコノミー

わが国で民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」や自動車配車サイト「Uber(ウーバー)」といった米国のシェアリングビジネス大手が活動を開始したのが2015年頃。このころから「シェアリングエコノミー」という言葉が聞かれるようになりました。それ以前の2012年頃には、良くも悪しくも話題になった「シェアハウス」が登場しました。また、SNSなどでシェアするという行為が普及し、シェアは一般的な行為概念になっていきました。
背景には、若者の自動車離れといった現象のように、若年および壮年世代でモノを所有することを求めない考え方が広がっていることがあります。非正規雇用の拡大や低賃金で所得が減少し、経済的に所有することが困難になったこともあるでしょう。クルマでも住まいでも、借りて済ますことができれば良しとする気持ちが働いていると考えられます。そうした心理がより多くの人に広がることで、他人のモノを一時的に借りてコトを済ますという経済行為が支持されています。定着したとまではいい切れませんが、シェアリング経済は少しずつ浸透しているのではないでしょうか。
不動産業界では、前述したように民泊や配車に関連して宿泊施設や駐車場のシェアリング事業が5年ほど前から増加し、現在では貸会議室やプライベートオフィス、倉庫など多様な不動産賃貸ビジネスに発展しつつあります。

資産の不稼働時間帯を埋め、IT駆使し「市場化されない資源」を商品化

不動産テックにおけるシェアリングの意義は、稼働していない不動産を稼働させることにあります。物件は個人宅の駐車スペース、企業のオフィスの一部や駐車スペースの一部、古民家、地方自治体の施設など、あらゆる不稼働不動産が対象になります。それを貸したり借りたりします。貸す側は家主や企業、借りる側には個人事業主や小規模事業者など。
例えば、観光地に程近い地方の小都市の商店街に、長年シャッターを閉じていた酒店を改造して作ったオープンスペースがあるとします。一階は喫茶室が似合う雰囲気で、2階は宿泊施設にも改造できます。しかし、こんなスペースがあるとは誰も知りません、貸す人と借りる人を繋げるツールがないと、改装した意味がありません。そこでITが必要になるわけです。Webサイトを開設してスペースの魅力を発信し、間取りや賃貸価格などの情報を公開します。
不動産テックにおけるシェアリングは、使われていない不動産をインターネットなどITの力を借りて市場化し商品化する賃貸業またはそれに準じるサービス、と定義できるでしょう。当たり前ですが、不動産は文字通り動かすことのできない資産。入居者が絶え間なくあればいいのですが、人気のない不動産はどうしても稼働率が落ち、利益を生まなくなります。そうした不動産物件を入居したい、借りたいと思えるようにするには、リニューアルが必要です。そして最も重要なことは、その物件を広く知らしめることにあります。

一般企業による不動産賃貸業への新規参入

また、これまで不動産賃貸業は、貸す側が専門のプロで借りるのは一般の人たちという構図でした。しかし、貸す側が工夫を凝らしても、借りてくれる人が現れるまでは、忍の一事で待つしかありませんでした。それを繋ぎ合わせるのがマッチング(仲介)サイトです。そうして考えてみると、不動産テックは賃貸業者に加えて、マッチング業者という新しい参入者を生んだ、ということにもなります。
仲介業者は、貸す側を「ホスト」などと称して引き込み、借りる人に対して物件を紹介しています。スペースの利用が発生した場合、成約料金の一定程度(7割~ 9割)をホストの口座に振り込みます。仲介手数料は10%~30%ということでしょうか。こうしたマッチング業者の中には、設立5年目に上場を果たした企業もあり、急成長しています。
不動産の賃貸は多くの専門知識が求められる業種ですが、稼働していない、または稼働率の悪い不動産を保有している一般企業にも新規参入の余地を広げた点で画期的なことといえるでしょう。

働き方も変えられるか?

スぺースシェアリングでは、フリーデスクやプライベートオフィスといった個人単位での利用が目立ちます。利用したいときに簡単に探せて簡単に予約できる。在宅勤務やテレワークが増えている現在、スぺースシェアリングは働き方改革という一種のブームに後押しされている面もあるように見えます。
スペースシェアリングで異彩を放つビジネスがあります。フリーランスの美容師と美容室(サロン)をマッチングするマッチングサービスです。サロン側は貸したい空き席を登録し、美容師がそれを予約します。顧客の獲得はフリーの美容師に委ねられていますが、稼働率を挙げて収益を上げたいサロンと、顧客はいても施術する場がないフリーの美容師のニーズをマッチさせています。「Airbnb」や「Uber」の美容業界版とも言えますが、美容師というプロが主役の一人という点で、注目されます。フリーデスクやプライベートオフィスも、フリーランスという働き方が増加していることで需要が高まっています。スペースシェアリングが個人の労働形態を変えていく原動力になるのか、今後の動向を注視していきたいと思います。

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