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コラム No.82-6

CREコラム

不動産テック入門(6)「不動産情報」

公開日:2020/01/28

不動産には土地・建物の所在地や面積から所有者、権利関係の移転の推移など多くの情報が詰まっています。不動産登記の情報を見れば一目瞭然ですが、不動産テックの世界では、こうした情報を加工して関連事業に提供する企業が登場し、注目を集めています。

不動産登記情報は「宝の山」だが活用するには「ひと手間」

不動産登記は、土地や建物の権利関係を公示するために設けられた国の制度で、各地の法務局に行けば所在地や所有者、住宅ローンの借り入れ状況などの情報が記録されています。登記簿謄本(登記事項証明書)は一般にも公開されているので、手数料を払えばだれでも入手可能です。2000年代に入ってからオンライン化されており、インターネットで自宅に居ながらにして閲覧できます。

不動産登記情報は、不動産に関する多種多様な情報が満載されているので、不動産の売買・仲介業やデベロッパーをはじめ、住宅ローン貸付実績を上げたい金融機関、相続税に関わる事務代行件数を増やしたい税理士や行政書士など、多くの業界で有効活用されています。

しかし、不動産業界や金融機関、士業にとって不動産登記を取得したり分析したりする作業は、本来の業務ではありませんし、社員の労働生産性を考えれば非効率です。また、そうした情報を積み上げて「ビッグデータ」に加工し情報の使い勝手や精度を上げるには、ひと手間かかります。その分の時間が取られるだけでなく、技術的な専門性が求められます。

不動産テックにおける「不動産情報」は、第一義的には(不動産登記情報の)取得代行です。これにより、情報取得のコスト軽減が図れます。次のステップは入手した情報の管理と活用。不動産登記情報は多種多様で、正に「宝の山」ですが、それだけに本来業務に活用するためのデータベース化もまた複雑になります。不動産は売買されれば権利が移転します。差し押さえや相続、抵当権設定など情報は絶えず変化するので、一度取得してもメンテナンス(情報更新)しなければ、その情報は陳腐化して価値が低下します。

不動産情報分野における「テック企業」では、取得代行業務のほか、謄本をPDF化して、「表題部」と「権利部(甲区)」、「権利部(乙区)」をエクセルに変換するなどの加工サービスを行っています。エクセル化では情報の絞り込みやランキングなど任意の抽出作業ができるメリットがあります。例えば、抵当権設定情報から一戸建ての情報を取り出し、住宅ローンの借り換えリストを作成できます。また、不動産会社では、同じ登記情報を複数の社員が取得することもあり、重複購入のリスク回避にもなります。

賃貸物件の空室情報を都度更新EC詐欺対策にも

インターネットの普及で、不動産賃貸の一次情報は簡単に見ることができるようになりました。こうした状況が恒常化すると、空室情報のなかには、実際には入居済みなのに「空室」として公開されている賃貸物件がある、との指摘があります。これは一種の「おとり広告」とも言われていますが、必ずしも悪意によるものではないようです。

インターネットによる不動産賃貸情報が急増しており、物件情報(ネット広告)の掲載期間は1週間から2週間程度といわれています。しかし広告掲載している企業は新規の空室情報をいち早く掲載して成約に結び付けたいあまり、新規物件の掲載には積極的でも、契約が成立して入居済みとなっている情報の「消し込み」が疎かになりがちです。こうした情報更新に対する取り組みの遅れが利用者の一部で不評を買っているようです。

背景には、「実際に(不動産仲介の)事務所に来てもらわないことには商売にならない」という現場主義がもたらしているとの意見があります。正式に入居するには、街中の不動産屋に出向いて契約書を取り交わす必要があります。このため、ネット広告は顧客を誘引するためのツールであり、良質物件は、入居済みでも来訪を促すためのものと考えて情報更新しない傾向がある、ともいわれているのです。 こうした不動産情報の更新漏れや不正検知を行っているテック企業は、賃貸物件の情報の最適化を独自の手法で不動産業界に提供しています。この企業が提供しているサービスは、ECサイト詐欺の防止にも役立つといわれています。
ECサイト詐欺は、クレジットカード情報を盗み取ってショッピングし、購入した商品をネットで見つけた空室を送付先に指定。その後に転売し現金化する手口です。こうした犯罪を防ぐため、ECサイトの送付先住所を検知して空室の不正利用を未然に防ぐというものです。

不動産情報の取得代行だけでなく、データ加工さらには賃貸物件情報の更新や空室情報の不正利用防止など、最新テクノロジーによる不動産情報の利活用分野で、テック企業はまだ多くありません。今後競合相手が増えれば、サービス内容は進化し技術的な進展が不動産業界及び関連業界の発展に寄与するでしょう。

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