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コラム No.82-7

CREコラム

不動産テック入門(7)「仲介業務支援」

公開日:2020/02/28

不動産の売買および賃貸などの仲介ビジネスは、取り扱う契約書や書類が多く、重要事項の説明を含めて煩雑な事務作業に追われます。不動産テックでは、こうした仲介業務においてITを活用することで業務効率を上げる取り組みが盛んになっています。

不動産取引の完全電子化は近い?

住宅の賃貸は国内の住宅ストックの4割を占めており、私たちの暮らしになくてはならない居住手段になっています。近年はITの進展で賃貸物件をスマートフォンなどの多機能端末で内見することができるようになり、街の不動産屋に足を運ぶ前に、住みたい賃貸物件の「当たり」をつけることができるようになるなど、利用者の利便性は向上してきました。

一方で、賃貸物件を利用者に供給している不動産仲介業者の事務作業は、手作業や郵送物による契約書類のやりとりもあり、業務の効率化はあまり進んでいませんでしたが、不動産テックの領域で、事務手続きの電子化が始まりました。

不動産取引の電子化のきっかけになったのは、2017年に本格運用が開始された重要事項説明のIT化、いわゆる「IT重説」です。重要事項説明とは、契約する前に宅地建物取引士などの専門家が物件の借り主(または購入者)に対して契約上の重要事項について対面して説明すること。説明内容を記した書面が「重要事項説明書」です。顧客へのこうした行為は宅地建物取引業法に規定されています。
これを電子化されたデータで説明書を交付して、インターネットやテレビ画面などで説明を行うのがIT重説です。重要事項説明書は、紙からPDFなどにファイル化されます。「IT重説」は2019年10月に国土交通省が社会実験をスタートさせたことから、不動産業界で普及に拍車がかかっているようです。不動産取引の完全電子化は近いとの指摘も出ています。定期借家契約など一部の不動産取引は現在でも電子化が認められていませんが、仲介業務における不動産賃貸契約の書面は電子化が可能とされています。このため、賃貸物件の仲介業者を対象にした業務支援ツールが注目されています。

サービス提供は次のような流れで行われます。
仲介業者は、支援ツールを提供する企業のサイトで、用意されたテンプレートから選択するなどして契約書面を登録します。賃貸物件を申し込む利用者はサインまたは、支援ツールが持っている生成機能を利用して印影を電子署名で送信します。重要事項説明書はその間添付されます。新規に賃貸マンションや賃貸住宅を借りる場合、契約書に保証人の署名・捺印を付けたり、借り主の戸籍謄本などを請求・回収したりするなど、通常は仲介業者と利用者の間で5~6回、更新時で2回程度の郵送物のやり取りが行われます。収入印紙も必要です。こうした書類の往復だけでも大変な手間がかかります。不動産取引の電子化は、こうした煩雑な作業を大幅に解消し、経費も低減します。

物件確認は音声応答とAI活用で

不動産業界では、同業者の間で売買・賃貸・仲介などの不動産情報を交換するためのネットワークである「Real Estate Information Network System(REINS:不動産流通標準情報システム)」(通称:レインズ)があります。これを利用して各社の営業担当者が自社の顧客の希望条件に合った登録物件を検索しています。該当する物件があれば、売り主または媒介業者に紹介できるかどうかを電話で確認しています。物件が売れていなければ、紹介が可能かどうかを聞きます。こうした行為を物件確認といい、略して物確(ぶっかく)とも呼ばれています。

全国展開している大手の不動産会社になると、仲介業者からの物確の電話は月に数千件規模にもなるといわれています。仲介業者からの電話は、管理している物件が成約すれば手数料収入になりますが、24時間365日、各地の営業所が逐一対応していると、本業である自社の営業活動にも支障をきたしかねません。また休日出勤など人件費もかさみます。これを音声案内とAIを組み合わせた支援ツールで自動対応する仕組みが登場しています。

仲介業者からかかってきた電話は、音声案内に従って対応するので聞き間違いは少なく物件を特定することができます。回答項目は賃料、管理費など利用する不動産会社が自由に設定できます。自動対応だけでは必ずしも仲介会社との連絡は完結しませんが、サービス導入前と比べれば、人件費などのコスト軽減は顕著のようです。

複数社との一般媒介契約オンライン化も

仲介業務の不動産テック領域ではそのほか、サイト上で不動産売却の媒介契約を結ぶことができるサービスもあります。不動産売却は1社に依頼する専任媒介契約か、複数の会社に依頼する一般媒介契約の2種類があります。専任契約は、依頼を受けたら5日以内にレインズに物件登録する義務があるので、情報が拡散して早期に売却が決まるメリットがありますが、他社から好条件で申し込まれても売却できない欠点があります。

一般媒介契約は選択肢が広いメリットはありますが、売却を急ぐあまり値段の交渉で相手である購入希望者のペースになって相場より低い価格になる可能性があるといわれています。このサービスを行っているテック企業はまだ少ないようです。その内容は、売却額の査定から売却依頼までを行い、複数の会社が回答した査定や売却活動計画をサイトで確認したうえでどちらかの契約を選びます。このサービスは無料で、サイトに登録している不動産会社からの手数料収入で事業展開するビジネスモデルと思われます。

不動産業界における仲介業務は、これまで人手に頼ってきた傾向がありましたが、ITを活用して書類の電子化や物件確認など業務の効率化が今後一層進むことで、賃貸物件などを利用する顧客への価格還元が期待できるかもしれません。

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