特集:旧耐震賃貸住宅物件のこれから第6回 賃貸住宅建て替えについて
公開日:2018/09/28
POINT!
・築30年を超えた賃貸住宅は競争力を失うため、建て替えを検討する
・今後30年間の需要予測を行ったうえで建て替えを決定する
「旧耐震賃貸住宅のこれから」と題した連載は今回が6回目、最終回になります。
旧耐震賃貸住宅にフォーカスした連載はこれまであまりなかったと思いますが、日本では確実に賃貸物件の建て替え期を迎えており、建て替えは今後かなり増えると思われます。
最終回の今回は、これまでのまとめ的な内容も含めつつ、「賃貸住宅の建て替えの流れ」についてお伝えしたいと思います。
ライフスタイルの変化も自宅戸建て住宅の建て替えの大きな要因
自宅としての戸建て住宅については、築年数が40年を超えた辺りから、持ち主は建て替えや取り壊し、もしくは物件を手放すなどの次ステップを検討し始めるようです。
自宅の築年数が40年を超える頃に検討を始めるトリガーは、建物そのものの老朽化・破損などが一般的ですが、家族環境の変化も重要な要因です。子どもの結婚、進学などにより、このままこの家に住み続けることがベストかどうかを考え始めるといったようなことです。
こうしたライフスタイルの変化のほうが、建物の老朽化より大きな要因になることも多いようです。
賃貸住宅の建て替え要因
一方、賃貸住宅の建て替えの要因となるのは、老朽化でしょう。そして、その老朽化を意識するトリガーとなるのが、「空室が目立つようになること」「ご入居者決定に時間がかかること」などが挙げられます。「空室が増えているのは、ウチの賃貸住宅がもう古いからなのか」というオーナー様の声が聞こえてきます。
都心の人気エリア以外では、築30年を超えた賃貸住宅は競争力を失っていきます。築30年というと1988年施工の物件です。バブル景気の上昇機運のまっただ中に建てられた賃貸物件の中には豪華な仕様のものもあります。しかし、現在はスマホやPCで物件探しをする時代です。
物件内覧に行く前に、ネットで条件を入力して検索し、その検索結果の中から選んで、不動産会社に問い合わせるという流れです。この条件では、立地条件を除けば、まず、賃料、広さ(間取り)、築年数でふるいにかけます。「○万円以下、○○m2以上、築○○年以内」という感じです。「実際は古さを感じない、良い物件だけれど、問い合わせが集まりにくい」となってしまう例も多いようです。
ちなみに、大型リフォームをすれば、見違えるような新しい賃貸住宅になりますが、表記の築年数は変わりません。
空室増、賃料下落は賃貸住宅経営の収益を悪化させます。建物の残債務や該当エリアの将来の賃貸需要などあらゆる要因から判断して、「建て替えを行っても大丈夫」と判断できれば、建て替えステージに進むとよいでしょう。
賃貸住宅建て替えの流れ
自宅と異なり、「普通賃貸借契約」あるいは「定期借家契約」に基づいた賃借人がいる建物を建て替えるわけですから、これら賃借人の方の了解が必要です。ここが大きなハードルになります。賃借人の方々がすぐに了承してくださればいいですが、スムーズに進まない場合、弁護士に依頼する必要もあるかもしれません。
また、ある時点から順次、ご入居者を募集しない部屋が出てきますので、その際の収益が悪化することも考慮しなければなりません。
下図は一般的な賃貸住宅建て替えの流れ(概要)を示したものです。
賃貸住宅建て替えの流れ
建て替えの検討を始めたら、まず管理会社か施工会社に相談してみましょう。建て替えて、そのエリアに賃貸住宅需要がこの先30年以上十分にあるのか、競合する物件数の予測はどうかなど、今後の予測をきっちり立てなければなりません。その計画に対し納得することができれば「GO」となります。その後、賃借人(ご入居者)との折衝を経て、取り壊しを行い、新たな賃貸住宅を建てることになります。
現在賃貸住宅をお持ちの方は、いずれ建て替えの時期を迎えます。セミナーなどで早くから情報を仕入れておくとよいでしょう。