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コラム
<空き家/賃貸>
害虫・不法投棄・放火……
空き家の放置は危険だらけ!
いま住んでいる家のほかに、手入れをしていない「空き家」や、近い将来「空き家」になる可能性がある家をお持ちですか?もし、所有する空き家を何週間も見に行っていないのが当たり前になっている場合、将来大きなトラブルにつながるかもしれません。また、「人が住まない家は傷みやすい」ということはよくいわれていますが、実際にそのとおりであり、資産としての価値も落ちてしまいます。場合によってはさらなる経済的負担を強いられる可能性もあるため、空き家を手入れせずに持ち続けることにはリスクが伴います。
この記事では、空き家を放置することによるリスクについてご紹介します。「特定空き家」に関する法律である「空家等対策の推進に関する特別措置法」についても、あわせて理解しておきましょう。
「空き家」の法律的な考え方とは
まず、「空き家」の法律的な考え方についてご紹介します。空き家は国土交通省の考え方では「おおむね年間を通じて人が住んでいない家」とされています。ただし、以下6つのポイントも鑑み、総合的に判断されるものとなります。
【空き家であることを判断する6つのポイント】
- 1. 住宅の用途(「別荘」などの場合は、人の出入りがない期間のみで空き家とは判断されない)
- 2. 人の出入りがあるかどうか
- 3. 電気やガス、水道などのライフラインが使われているかどうか
- 4. 住民票情報と不動産登記の確認
- 5. 家の管理状況
- 6. 所有者本人の説明
空き家を放置することにより考えられる2つのリスク
空き家を放置することによるリスクは、大きく分けて2つあると考えられます。「資産としての価値が下がるリスク」と「犯罪を誘発するリスク」です。以下、それぞれについて詳しくご説明します。
(1)資産としての価値が下がるリスク
空き家として長らく放置することで、建物の劣化が早くなります。すると、当然ながら資産としての価値が下がってしまうことになるでしょう。資産価値が落ちた建物は、高値で売却できないだけでなく、売却するために修繕費用が必要になる可能性があります。また、場合によっては「買い手がつかない」ということもあるため、注意が必要です。空き家が劣化する理由としては、次のようなものが考えられます。
■換気が不十分なために起こる建材の劣化
空き家は、人が住む家と異なり、空間が密閉された状態が長く続くことになります。すると、湿気が滞留し、壁や天井、床などの建材が傷みやすくなります。具体的には、水分による染み・サビ、ドアやドア枠のゆがみ、湿度差によるひび割れなど、建材によって異なる劣化が発生します。
■シロアリ、ハチなどの害虫や、ネズミなどの害獣を原因とする被害
人の活動がない場所は、ハチなどの害虫、ネズミ、野鳥、野良猫などの害獣の被害を受ける可能性が高くなります。ハチの巣ができること、ふんによる環境悪化、建材が削られることなどが考えられるでしょう。シロアリは人が住んでいても木材を食害しますので、点検を怠り早期発見が遅れると、多大な被害につながる場合が多いものです。
■監視が減ることにより、雨漏り、機器の故障、ガラスの破損などへの対応が遅れる
人が住んでいたとしても、住宅では雨漏りや機器の故障、ガラスの破損などは起こり得るものです。しかし、空き家にしておくと、これらの被害への対応が遅れ、さらに大きな損害につながる可能性があります。
(2)犯罪を誘発するリスク
空き家は「人の気配がないこと」の目印のような役割を果たしてしまうため、犯罪を誘発するリスクが大きくなります。どのような犯罪が発生し、さらにはどのような危険性につながるのか、把握しておきましょう。
■不審者が不法滞在する
建物の戸締まりをどんなに厳重に行っても、人の侵入を完全に防ぐことはできません。不審者が不法に滞在する恐れもあり、ガラスやドア、鍵を破壊されたり、内部を荒らされたりする可能性もあります。また、不審者が犯罪者である場合には、破壊や盗難、犯罪拠点としての利用など、さらに大きなトラブルに巻き込まれる危険性も否定できません。
■放火、火災の発生を招く
不法侵入者による放水、放火の可能性だけでなく、水道や水道管の劣化による漏水、光の反射などでも起こり得る「自然発火」を原因とする火災も考えられます。いずれも発見が遅くなれば被害は大きなものになり、建物が全壊するほどの規模になることもあるでしょう。
■周辺の治安を悪化させる
老朽化した建物、整備されていない庭などの外観は、周辺の治安を悪化させる可能性があります。また、治安悪化までに至らなくとも、近隣住民に迷惑をかけてしまったり、クレームを受けたりする可能性もあります。近隣住民との関係を悪化させてしまうことは、避けたいものです。
空き家の所有者には、所有者責任がある
空き家は人が住む家と比べ、さまざまなリスクがあることをご理解いただけたかと思います。さらに注意したいのは、その「責任」は誰にあるかという点です。事故・事件を起こした当事者がいるとしても、その「責任」は空き家の所有者が負うことになります。以下、詳しくご説明します。
空き家の責任に関する法律
空き家で発生したトラブルに関する法律は、民法717条の「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」となります。この法律では、「空き家でトラブルが発生した場合には、空き家の所有者に責任がある」ということを定めています。
過失がなくとも責任を問われる
注意すべきポイントとしては、「空き家の管理に問題がなかった場合」においても、所有者の責任となる点です。きちんと管理していたとしても、空き家を所持しているだけで責任を問われる可能性があることを理解しておく必要があります。きちんと管理することでリスクは減りますが、人が住む家と比較すると「回避しにくいリスク」があることを考え、今後持ち家をどのように扱うべきかを考えていきましょう。
放置したままだと「特定空き家」に指定されてしまう
運よく他者を巻き込むようなトラブルは避けられたとしても、空き家を放置して「特定空き家」に指定されてしまうと、大きな損害につながることになります。特定空き家とはどんなものなのかについてご説明します。
(1)「特定空き家」とは
「特定空き家」とは、2014年(平成26年)11月27日公布、2015年(平成27年)2月26日施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)」において定義されたものです。
「特定空き家」とは、下記のような空き家などを指します。
- ・そのまま放置した場合、倒壊など、著しく保安上危険となるおそれのある状態にある空き家
- ・そのまま放置した場合、著しく衛生上有害となるおそれのある状態にある空き家
- ・適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態にある空き家
- ・その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態にある空き家
下記にて詳しく説明します。
■そのまま放置した場合、倒壊など、著しく保安上危険となるおそれのある状態にある空き家
- ①建築物が倒壊するおそれがある屋根、外壁等が脱落、飛散などをするおそれがある
- ②擁壁(高低差のある土地の側面の土が崩れるのを防ぐ壁状の構造物のこと)が老朽化し危険となるおそれがある
■そのまま放置した場合、著しく衛生上有害となるおそれのある状態にある空き家
-
①建物や設備が破損し、次のような状態にあること
- ・吹き付け石綿などが飛散して、それらに暴露する危険性が高い状態
- ・浄化槽などの放置、破損による汚物の流出、臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態
- ・排水などが流出し、臭気が発生して地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態
-
②ごみ等の放置、不法投棄が原因で、以下の状態にあること
- ・ごみ等の放置や不法投棄によって臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態
- ・ごみ等の放置や不法投棄が原因で、多数のネズミやハエが発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態
■適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態にある空き家
①適切な管理が行われていないことにより、既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態
-
②次のような状態になっており、周囲の景観と著しく不調和になっている状態
- ・屋根や外壁などが、汚物や落書きなどによって外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されたりしている
- ・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている
- ・看板が原型をとどめず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている
- ・立木などが建築物の全面を覆う程度まで繁茂している
- ・敷地内にごみなどが散乱、あるいは山積したままで放置されている
■その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態にある空き家
-
①立木が原因で、次のような状態になっていること
- ・立木の腐朽、倒壊、枝折れなどが生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている
- ・立木の枝などが近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている
-
②空家などに住みついた動物等が原因で、次のような状態になっていること
- ・動物の鳴き声や動物によるその他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
- ・動物のふん尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
- ・敷地外に動物の毛または羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
- ・多数のネズミ、ハエ、蚊、ノミ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
- ・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある
- ・シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある
-
③建築物などの不適切な管理等が原因で、次のような状態になっていること
- ・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている
- ・屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている
- ・周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している
(2)特定空き家に指定された場合、どうなるのか
特定空き家に指定されると、以下のような段階を経て、最終的には行政による措置(行政代執行)が行われます。途中段階で所有者が対応すれば、行政代執行に至ることはありません。
■1.特定空き家に指定
行政の調査により、特定空き家と指定されます。
■2.助言・指導
特定空き家の所有者は、行政による助言や指導により、空き家の管理状況改善を目指すことになります。これにより空き家の状態に問題がなくなれば、特定空き家の指定は解除されます。
■3.勧告
助言と指導が行われても空き家の状態が改善しなかった場合には、市町村長から必要な措置を取るよう「勧告」がなされます。勧告された者は、期限内に指定された措置を行わなければなりません。
また、勧告を受けた時点で、地方税法の規定により、「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外されることになります。すると、住宅用地であれば受けることができる固定資産税の軽減措置を受けることができなくなり、固定資産税による負担が大きくなってしまいます。
■4.命令
特定空き家の所有者が勧告に従わなかった場合、市町村長により、勧告の措置を行うよう「命令」がなされます。命令は勧告よりも法的拘束力の強い通達であり、命じられた者がこれを無視した場合には、最大で50万円の過料(行政処分においての罰金)を支払わなければなりません。空き家については次の「行政代執行」の段階に移行します。
■5.行政代執行
空き家の所有者に代わり、行政が必要な措置を行います。行政代執行によって発生した費用は、本来措置を行うべきであった空き家の所有者から徴収されます。日程などは所有者の事情に関係なく、あくまでも強制的に実施されます。
ごみの処分や立木の剪定、壁の修繕など、行われる措置は空き家とその敷地の状態によって異なりますが、場合によっては家屋の取り壊しも行われるため、多大な費用が必要となるおそれもあります。また、空き家の所有者が業者を指定することはできないので、費用は個人で手配するよりも高額になると考えたほうがよいでしょう。
行政代執行の例
大阪府泉佐野市/2021年(令和3年)10月26日から12月27日まで
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態の特定空家と認められる建築物について、行政代執行を実施。
(参考)大阪府泉佐野市「特定空家等の行政代執行について」
徳島県阿南市/2022年(令和4年)10月31日から11月10日まで
特定空家等に認定した建築物について所有者等を確知できないため、行政代執行を実施。
(参考)徳島県阿南市「特定空家等の行政代執行について」
広島県広島市/2022年(令和4年)1月17日から(完了は同年3月中旬の見込み)
老朽化で屋根の一部に穴があき、雨水の浸入等によって柱および梁の一部が腐朽し、一部の柱が傾斜することにより、建物全体が前面里道側に約5度傾いている。また、外壁についても、北側2階外壁の一部が剝落するとともに、南側外壁もほぼ全面剝落しているといった状態であったため、手続きを経て行政代執行を実施。国税徴収の例により、費用の約520万円は空き家所有者から全額徴収。
(参考)広島県広島市「危険な空き家の行政代執行による除却について」
費用については規模や工事日数により大きな差が発生しますので、ご注意ください。また、行政代執行と並び「略式代執行」という言葉もありますが、略式代執行は「所有者が特定できない状態」で行われる措置を指します。略式代執行による費用は、所有者を特定してから請求されます。
行政代執行における費用は、個人が納める税金と同じ扱いです。支払えない場合には財産が差し押さえられることになります。
なお、行政代執行は、2019年(令和元年)に28件、2020年(令和2年)に23件行われています。なお、最初のステップである「助言・指導」はそれぞれの年度で5,000件以上行われており、多くの住宅が特定空き家である危険性があるとして注視されていることがわかります。
空き家がトラブルの温床になる前に…管理をはじめましょう
空き家の管理不足は、さまざまなトラブルを招く可能性があります。空き家を所有しているだけである程度のリスクは覚悟しなければなりませんが、リスクを最小限に抑えるためにも、その家に適した管理が必要なのです。
空き家の管理はご自身やご家族でも可能ですが、専門知識が必要なケースもあります。身内での管理が難しいと思われる場合には、専門の管理業者にも頼るようにしましょう。ある程度の費用はかかりますが、トラブルに巻き込まれないための必要経費です。管理を怠ることでさらに大きな負担につながらないよう、ご家族とも話し合ってみましょう。空き家が遠方にある場合も、管理業者に依頼することで無理なく管理することが可能です。
※掲載の情報は2023年1月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。
写真:Getty Images