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コラム
<空き家/賃貸>
実家は大丈夫?「空き家の放置で、
税金6倍」の仕組みを解説
将来、「実家が空き家になる可能性」を考えなければならない方は多いものです。空き家のままでも大きな問題はないと思われるかもしれませんが、空き家で起きたトラブルは空き家の所有者が負うものであり、放置するのは大きなリスクが伴います。
空き家は社会問題となるほど増えており、行政による新たな対策も打ち出されるようになりました。インターネットで少し調べるだけでも、「空き家を放置すると税金が6倍になる」といった情報が目に留まります。これは一体どのようなことなのでしょうか?
この記事では、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)以下、空き家法」に基づき、空き家にかかる税金について解説します。また、「特定空き家」や2023年に新たに設定された「管理不全空き家」についても紹介。税金による負担を増やさないためにはどうしたらいいのかについても、一緒に考えてみましょう。
空き家でも税金がかかる
不動産を所有していると税金がかかりますが、これは人が住まない「空き家」も例外ではありません。居住者の有無に関係なく、不動産を所有していると税金が発生します。それが「固定資産税」と「都市計画税」です。いずれも、土地や家屋などの「固定資産」を所有している方に課される税金で、各市区町村が税額を計算し、不動産の所有者(=納税義務者)に納税額を通知します。不動産の所有者はそれに基づき税金を納付します。計算方法は次のとおりです。
固定資産税の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額 ※) × 1.4%(標準税率)
都市計画税の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額 ※) × 最高0.3%(制限税率)
※固定資産税評価額
これらの固定資産税・都市計画税ですが、「固定資産税等の住宅用地特例」という制度により、税金が安くなります。「住宅用地特例」の条件は「住宅が建っていること」ですので、空き家もこの軽減措置の対象となります。いくら程の税金になるのでしょうか。計算方法は次のとおりです。
軽減措置の計算方法
赤字部分は住宅用地だからこその減税であり、これを「特例率」として覚えておくといいでしょう。
なお、これは空き家が「特定空き家」に指定されていない場合の税率となります。特定空き家については『害虫・不法投棄・放火……空き家の放置は危険だらけ!』 をご覧ください。
空き家を解体しないほうが税制的には得
空き家も固定資産税と都市計画税を支払う必要がありますが、ある程度の管理さえしていれば「空き家であっても特例は適用される」ということになります。なお、これを更地にすると、特例は適用されません。以下、順を追ってご説明します。
空き家も「固定資産税等の住宅用地特例」は適用される
前述のように、空き家であっても「特定空き家」でなければ「固定資産税等の住宅用地特例」は適用され、軽減措置を受けることができます。なお、固定資産税は「建物」と「土地」、それぞれに課税されるものです。
更地にすると建物の固定資産税はなくなるが、固定資産税の総額は増える
建物を解体して「更地」にすることで建物に対する固定資産税はなくなりますが、「固定資産税等の住宅用地特例」が適用されなくなることで、土地にかかる税金の特例率はなくなります。その結果、固定資産税の総額は増えてしまうのです。
空き家を維持する方が多いのは、この課税問題が原因であるとも言えます。たとえ人が住んでいなくとも、建物を残したままのほうが税制的に有利だからです。
「特定空き家」に指定されると減税の特例が適応されない
固定資産税の増額を回避するため、多くの人々が空き家を維持するようになりました。しかしながら、空き家を安全に維持するには相応の管理が必要です。空き家による社会問題は、人口減などが原因で空き家そのものが増えること、そして、空き家をきちんと管理できないケースが増えたことが原因だと言えます。
そこで制定されたのが、「空き家法」です。この法律により、管理が不十分とされる空き家は「特定空き家」に指定されるとその翌年から「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から外されることになりました。
また、2023年には新たに「特定空き家」の前段階となる「管理不全空き家」という区分が設けられました。「管理不全空き家」の指定を受け、状況が改善されない場合には、「特定空き家」と同様に減税の特例が適応されなくなります。管理不全空き家については、この後ご説明します。
小規模住宅用地の場合、次のような計算となります。
固定資産税等の住宅用地特例が適用される場合
特定空き家に指定され、固定資産税等の住宅用地特例が適用されない場合
上記のように、固定資産税だけを見ると、特例率1/6が適応されないため、6倍もの金額になります。これが、冒頭でもご紹介した「空き家を放置すると税金が6倍になる」という言葉の意味です。税金の負担を増やさないためには、所有している空き家が「特定空き家」および「管理不全空き家」に指定されないように管理する必要があります。
特定空き家とは?
「特定空き家」とは、「空き家法」に基づいて指定される、「放置すべきではないと判断された空き家」のことを言います。どのような基準で特定空き家の指定を受けるかどうかは、『害虫・不法投棄・放火……空き家の放置は危険だらけ!』をご一読ください。
(1)空き家の現状
2023年10月1日の「総務省統計局による「令和5年住宅・土地統計調査」において、日本の総住宅数6,502万戸のうち、空き家は13.8%を占めています。これは、調査が開始されて以来、最高の値です。
管理が行き届かない空き家が周辺住民に与える影響は大きな社会問題となっています。今後、さらに空き家が増えるであろうことを考えれば、空き家対策は急務と言えるでしょう。「空き家法」は、その対策として制定された法律です。
(2)空き家法の制定のねらい
この法律がつくられた目的(要約)は、次のとおりです。
- ・空き家の周辺に暮らす住民の生活環境の保全を図ること
- ・空き家を減らすこと(空き家の活用を促進する)ための対策を講じること
この法律は、国内の空き家の数を減らす(不動産としての活用を目指す)ことを目的の一つとしていますが、空き家の適切な管理を推奨するものであり、空き家の所有を禁じる法律ではないことを理解しておきましょう。ただし、空き家の所有・維持が将来においてご家族の大きな負担とならないかどうかは、ご家族でしっかりと話し合う必要があります。
(3)管理不全空き家とは?
2023年、空き家の中でも「管理不全空き家」という新しい分類が制度化されることになりました。管理不全空き家とは、「このまま放置すれば、いずれ特定空き家になる恐れのある空き家のこと」であり、法律上の定義は以下の通りとなります。
- ① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- ② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- ③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
詳しくは総務省「空き家対策に関する実態調査 結果報告書」をご覧ください。
「管理不全空き家」に指定されると、自治体はその所有者に対し「特定空き家」にならないために改善するよう指導・勧告を行います。改善に向けての対応を促され、それに応じない場合には「特定空き家」と判定されます。
「管理不全空き家」から「特定空き家」として判定されるまでの流れは、以下のようになります。
また、この制度が開始されると、「管理不全空き家」としての判定を受けた段階で、小規模住宅用地の固定資産税などの特例が措置の対象から外されることになります。
特定空き家や管理不全空き家にならないためにすべきこととは
では、所有している空き家が「特定空き家」や「管理不全空き家」にならないようにするためには、どのようなことをすればいいのでしょうか。
(1)空き家のままにしない方法
空き家を手放す(売却する)、空き家を賃貸物件として貸し出すなどの方法があります。
■空き家を中古物件として売却する、あるいは貸し出す
建物と土地を売却、あるいは賃貸物件として貸し出すという方法です。なお、「相続した空き家」を売却する場合には、最高3,000万円の特別控除があります(2023年12月31日まで)。空き家を譲渡した際に得た利益から、最高3,000万円を控除することが可能です。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
特例の対象や条件などはさまざまなものがありますので、国税庁のウェブサイトでご確認ください。「被相続人が一人で住んでいた場合」に限られる点、1981年5月31日以前に建築された家である点などが、条件として含まれています。
賃貸物件にする場合には、空き家の修繕や、貸し主(大家)としての管理が必要となります。ご自身では難しい場合、遠方であっても賃貸に関する業務を業者に依頼することが可能です。
大和ハウスグループのリブネスでは、これまで蓄積した経験・ノウハウ等を活用し、中古住宅の売却や、賃貸としての運営をサポートいたします。住宅の売却、賃貸管理をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
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■空き家を解体して更地にする
前述したように、この方法では固定資産税が増えてしまうため、その負担をカバーするだけの活用方法が必要となってしまいます。解体費用も必要です。ただし、エリアによりますが「更地にしたほうが売却しやすい」という場合もありますので、不動産会社などにきちんと相談してから決めましょう。
(2)空き家のままで維持する方法
いま住んでいる家から遠方にある建物を、「空き家」として維持する場合、次のような方法があります。
■自分で管理する
まずは自分で管理するとして、その場合の手間や費用を考えてみましょう。交通費も含めて計算します。あまりにも遠方であれば現実的でないこともありますが、これが「本来必要とされる費用」です。他人に任せる場合、管理業者に任せる場合の費用と比較することが重要です。
■親戚や知人に管理を依頼する
空き家になったばかりの短い間であれば、親戚や知人に任せても問題ないでしょう。ただし、長期になる場合は管理にかかる費用やお礼としての報酬などについてより詳細に考える必要が出てきます。また、決して家の管理についての知識があるわけではないので、完全に任せるということはできません。どのポイントをどのようなペースで確認してほしいか、こちらの要望の詳細を伝えておく必要があります。また、管理を任せたことによりトラブルが発生しても、その責任は所有者にあることを理解しておく必要があります。
■専門の管理業者に依頼する
親戚や知人に管理を依頼するにはさまざまな手間が必要になりますし、気遣いも必要です。そういったことを避けたいと考える方は、専門の管理業者に依頼することで解決します。費用は少々高めになるかもしれませんが、空き家管理のプロに任せる安心感は大きなものです。所有者の要望を聞いてくれるだけでなく、プロの観点から必要な管理はどんなものかの提案もしてくれるでしょう。予算に合わせてのプランなどもありますので、ぜひご相談してみてください。
空き家を「特定空き家」にしないことも重要ですが、それ以前に、損害賠償責任など問われないよう適切な管理をすることが重要です。管理費用や税金など、発生し得る経済的負担を算出し、今後どのように空き家を管理していくべきか、しっかり考えていきましょう。
※掲載の情報は2024年7月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。
写真:Getty Images