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連載:みんなの未来マップ 超高齢社会を、全世代が楽しめるものに 株式会社エイジウェルジャパン代表取締役 赤木円香さん ©Moor Studio

連載:みんなの未来マップ

「全世代が楽しめる未来」をどうつくるか。エイジウェルが描く、超高齢社会の希望のかたち

2025.10.31

    赤木さんのロングインタビューはこちら

    超高齢社会をポジティブに変換する。祖母の一言から生まれた「エイジウェル」という発想

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    ポジティブに年を重ねることを意味する「エイジウェル」な社会の創造をミッションに掲げ、シニアの挑戦と発見を後押しするサービス「もっとメイト」やシニアに伴走する人材の育成事業を展開しているAgeWellJapan(エイジウェルジャパン)。

    代表取締役の赤木円香さんに、エイジウェル社会に向けた今後の取り組みについて伺いました。

    年を重ねることを、喜べない社会

    現代では、なぜ年を重ねることがここまでネガティブなものになっているのでしょうか。

    日本では20歳を過ぎたら、早くも年を重ねることがネガティブに思えてきます。それは、シニアだけでなく「女は30歳までには結婚しないと」とか「いい年してみっともない」というように"この年齢の時はこうであれ"という偏見がすごく強いからなんですね。エイジズム(年齢差別)がはびこっているんです。

    エイジズムは、レイシズム(人種差別)、セクシズム(性差別)と並んで三大差別の一つとされていますね。

    エイジズムが当たり前になっているから、年を重ねることがマイナスだと感じ、誕生日おめでとうと言われても嬉しくない人が増えています。でも、年を重ねることは本当にマイナスなのでしょうか。

    先日開催したエイジウェルカンファレンスで、東京大学名誉教授で高齢社会総合研究機構客員教授でもある秋山弘子先生が、あるデータを示してくれました。

    多くの方は、30代頃をピークに人間の知能は下がっていくと思いこんでいます。だから80代や90代の方に対して、赤ちゃん言葉で話しかけたりする。でも実際のグラフを見ると、年をとればとるほど知能は上がっているんです。なぜなら知識や経験が増え、価値観が洗練されて意思決定力も上がるから。本来、年をとるほど人は成熟し、アップグレードされていくんです。

    ©Moor Studio

    その思い込みが、まさにエイジズムなんですね。

    やってあげる・してあげるというサービスが多い中で「今日は先生、明日は生徒、知識と経験の交換」というのが私たちのサービスのコンセプトです。目の前の人にフラットに感謝し、尊敬し、それを伝える。サービスを提供する上でエイジズムをなくすことはもちろん「対等な関係性」であることを大事にしています。

    地方は高齢化の課題先進地。今後の打ち手は?

    今後は関東だけでなく、全国で事業展開していく予定があると伺いました。

    まずは昨年から、東京の二子玉川で開催している、シニアとウェルビーイングをテーマにした「エイジウェルフェスティバル」を、地方でも展開したいですね。それを1回の打ち上げ花火で終わらせず、スポンサー企業が所有している遊休地を使ってコミュニティスペースを開発したり、エイジウェルデザイナーの企業研修プログラムの提供を行ったりもしていきたいな、と。地元の大学と連携して、各地の大学生にデザイナーとして活躍してもらいたいとも考えています。

    ©エイジウェルジャパン

    高齢化問題においては、地方は東京以上の課題先進地です。両者の違いは感じていますか。

    シニアの方が持っている不安感や孤独感は一緒です。ただ、日本は縦に長いからなのか、海外に来たのかなと思うくらい県民性が違うんです。だから、課題は同じでも解決策は地域ごとに変わってくる気がしています。

    例えば名古屋は、母と娘の仲がすごくいい方が多いので、母娘でフェスティバルに来てもらう仕掛けをつくっています。浜松は、ヤマハ、カワイ、ローランドなど、音楽系の企業が多い街です。あるシニアの方から「体と脳は衰えても、感性だけは衰えることを知らない」って言われたことがあるんですけど、それって最高だなと思っていて。だから浜松は、音楽でつながって感性を震わせようという方向に全振りしています。

    「全方向よし」じゃないと、サステナブルにならない

    地域ごとに最適化した取り組みがあるということですね。エイジウェルジャパンの取り組みが、日本中に広がっていった未来が楽しみです。

    去年、エイジウェルフェスティバルを開催した時に、シニアの方たちにステージで踊ってもらったんですね。それを見て、ベビーカーに乗った男の子が指を差しながら「かっこいい!」って言ったんです。私はこれだなって思いました。ステージのセンターでバキバキに踊っている83歳を子どもがかっこいいと思えたら、年を重ねる意味が変わる。そういうことを伝えていきたいです。

    そのために必要なことはありますか。

    やっぱり「全方向よし」みたいな感覚はすごく大事で。シニアにも、エイジウェルデザイナーの若者にも、企業にも、自治体にもプラスがある。そうじゃないとサステナブルにはなっていきません。

    理想的な超高齢社会は、シニアが嬉しそうに笑っていて、世代間交流が起きていて、テクノロジーを使いこなしたり、サポートし合えるような社会です。エイジウェルジャパンは価値観の社会実装やムーブメントを醸成していく会社なので、その視点と戦い方から、超高齢社会における新たなエコシステムをつくっていきたいと思います。

    PROFILE

    赤木円香

    赤木円香Madoka Akagi

    株式会社AgeWellJapan代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、味の素株式会社に入社し、決算業務を担当。憧れだった祖母が放った「長く生きすぎちゃったかしら」の言葉に衝撃を受け起業を決意。シニア世代の「Age-Well社会の創造」を掲げ、2020年、株式会社MIHARU(現・株式会社AgeWellJapan)を創業。2023年にはエイジウェルを探求・発信する研究ネットワーク「AgeWellJapan Lab」を設立し、研究所代表も務める。Forbes JAPAN「世界を救う希望」100人に選出。メディア出演多数。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業は、超高齢社会の到来に先駆けて医療・介護・福祉施設の研究機関「シルバーエイジ研究所」を設立。研究成果を活かし、高齢者の方々が「安心して穏やかに老後を過ごせる住環境」の実現に取り組んでいます。

    シルバーエイジ研究所について

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