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連載:みんなの未来マップ 「植物工場」が、日本の未来を照らす

連載:みんなの未来マップ

「植物工場」から日本経済の夜が明ける。カギは「サイエンス」と「ものづくり」

2025.6.27

    古賀さんのロングインタビューはこちら

    日本のイチゴから始まった農業革命。「オイシイファーム」の植物工場が世界の食糧危機を救う

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    アメリカで創業し、植物工場として世界初となるイチゴの栽培と量産に成功した「Oishii Farm(オイシイファーム)」。同社代表の古賀大貴さんは、ものづくり大国の日本は、社会にパラダイムシフトを起こす大きな可能性を秘めていると話します。日本の農業や産業はどうなっていくのか、古賀さんの未来予測を聞きました。

    日本にオープンイノベーションセンターを開設

    2025年、日本にオープンイノベーションセンターを開設予定だと伺いました。さらなる技術革新を目指した、世界最先端の植物工場の研究開発拠点だそうですね。なぜアメリカではなく、日本に開設することにしたのでしょうか。

    この9年やってきてよくわかったのは、植物工場のベースの技術はほとんどが日本にあるということです。植物工場は、グリーンハウス農業(施設園芸)と工業の組み合わせで、グリーンハウス農業は、日本とオランダにしかない技術です。また、植物工場に必要な空調やロボティクス、IoT、LEDなどの工業技術は、空調ならダイキン、ロボティクスならファナックや安川電機というように、日本の企業が世界のトップを独占しています。オイシイファームも、植物工場の研究者は日本から来てもらっていましたし、機材も日本から輸入しています。であれば、研究開発は人材がいて技術もある日本でやったほうが早く進むと思いました。

    写真提供:Oishii Farm

    なるほど。

    センターには日本の企業、十数社に入っていただいて、植物工場に関するありとあらゆる研究開発を一緒にやっていきたいと思っています。そして、植物工場をパッケージ化したい。オイシイファームが世界に進出する時には、そのパッケージを送って、どこであっても現地の人たちで工場を回せる形をつくりたいと考えています。

    日本企業の総力戦ですね。今後の展開が非常に楽しみです。

    日本企業が最先端の技術を開発していけば、この先、植物工場が増えていった時に日本の設備や技術がどんどん利用されることになるはずです。これは、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスだと思います。

    植物工場が、農業を魅力的な産業に変えていく

    古賀さんは、いずれは既存の農業が植物工場にとって変わるだろうとお話されていました。果たして、農業はこの先どうなっていくと思いますか。

    今までは、農業のコストはタダみたいなものでした。土地と水、安く働いてくれる人。この3つに加えて安定した気候と農薬の使用が揃っていることが、所与の条件でした。でも、この後さらなる人口爆発が起こること、資源は有限だということ、昨今の異常気象などを踏まえると、この5つはやがて崩壊するでしょう。今、多くの植物工場の事業者は、何とかそれに間に合うようにという思いでやっていると思います。

    日本の農業においても、問題は同様でしょうか。

    日本の農業の問題は全然違っていて。最大の問題は後継者不足ですね。大して儲からないのに、朝から晩まで炎天下で働かなければならないから、誰も農業を継ぎたくないんです。でも、それが植物工場になれば、事態は変わってくると思います。まず、農業が工業に変わります。工場で働くように朝9時に来て夕方5時に帰れる。社会保障もついているし、賃金もしっかりもらえます。そうなると農業はむしろ魅力的な産業になっていく。実際、我々が日本のインターン生を募集したところ、説明会に1000人来て、実際の応募も数百人あったんですよ。

    現在、社員数は約230名(2024年時点)。農業、生産、研究開発、技術などさまざまな国から人材が集まっています(写真提供:Oishii Farm)

    パラダイムシフトを起こすのはディープテック

    それはすごいですね。ゆくゆくは若い人たちの間で「植物工場で働くことがかっこいい」という時代がくるかもしれません。

    日本は、消費者のレベルが世界一高い国です。ミシュランの星付きレストランも非常に多く、農作物は、美食家がたくさんいる日本で生き残ってきた品種しかありません。ほかの国が今から品種改良をやろうと思っても、完成まで10年はかかりますが、日本には、すでに選抜されたおいしい品種がたくさんある。この貯金が、世界中どこでも日本の気候を再現できる植物工場になった瞬間、活きるわけですね。僕はその点でも、ものすごく大きなチャンスが来ると思っています。

    日本の農業の可能性が広がるわけですね。

    また、ここから30年は間違いなく、人類存続のために、ありとあらゆる産業においてパラダイムシフトが必要になります。それを可能とするのはディープテックしかなく、植物工場はその最たる例です。ディープテックが商用化していくために重要なのは、サイエンスとものづくりの力。実はこれは、いずれも日本が強い領域なんです。

    10年前には、日本が植物工場なんて変なことを始めたと冷ややかに見ていた世界が、農業が崩壊するかもしれないとわかった瞬間、植物工場で解決できるかもしれないと気がついた。こういう可能性のある領域が、ものづくり大国である日本にはおそらくまだたくさん隠れている。だから僕は、もっと日本の未来に期待していいんじゃないかと思います。

    PROFILE

    古賀 大貴

    古賀 大貴Hiroki Koga

    1986年、東京生まれ。少年時代を欧米で過ごす。2009年に慶應義塾大学を卒業。コンサルティングファーム勤務を経て、UCバークレーでMBAを取得。在学中の2016年に「Oishii Farm」を設立し、日本人として初めて、同大学最大のアクセラレーターであるLAUNCHで優勝。2017年から米ニューヨーク近郊に植物工場を構え、日本品種の高品質なイチゴ、トマトの栽培を行っている。2025年、日本国内に世界最先端の植物工場の研究開発拠点「オープンイノベーションセンター」を設立予定。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウスグループはOishii Farmと協業し、さらなる高度化を目指した植物工場の実現に取り組んでいます。

    農業の工業化推進によりサステナブルな農業と世界的な食糧問題解決への貢献を目指します

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    大和ハウスベンチャーズはグループの既存事業やスタートアップの事業ステージにとらわれず、社会課題の解決につながる6つの投資キーワードを軸に、幅広い領域で投資検討しています。

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