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連載:みんなの未来マップ AI時代、人が担うべき仕事とは? 研究者・実業家 吉藤 オリイさん

連載:みんなの未来マップ

「ありがとう」の循環で働き方は変わる。AI時代に到来する「感情労働」とは?

2025.7.31

    吉藤さんのロングインタビューはこちら

    寝たきりでも、動ける、学べる、働ける。分身ロボットカフェが描く、未来の可能性

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    分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発し、東京・日本橋で「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」を運営する研究者・実業家の吉藤オリィさん。

    このカフェでは、重度身体障害者などの移動困難者が「OriHime」を遠隔操作して接客しています。人工知能によって自動で動くAIロボットではなく、遠くにいる人が実際にコミュニケーションをしているのです。

    吉藤さんは自身が小学・中学時代に不登校だった経験から「孤独の解消」をテーマに掲げ、テクノロジーを活用した社会参加の形をつくり出してきました。海外からも注目を集める中、OriHimeの活動にさらなる広がりが生まれつつあります。吉藤さんが描く未来について聞きました。

    AI時代にこそ、働き手を増やしたい

    昨今、AIによって世の中が大きく変わろうとしています。どう捉えていらっしゃいますか?

    今後、AIで誰にも会わずに生きていけるようになる時代がやってくるかもしれません。誰にも頼ることなく、「ありがとう」と感謝しなくても回っていく世の中。これは逆にいえば、誰にも必要とされない世の中をつくっているのかもしれない。でも私は、我々人間は社会的な生き物で、人に必要とされたいのだと思っています。「ありがとう」と言い合いたい。働かなくても食べていけたとしても、誰かのために何かしたい。つまり働きたくなる生き物だと思います。

    高校時代には当初、「孤独の解消」のためにAIを研究していらしたそうですね。AIとの会話は孤独にどう影響すると思いますか?

    人にもよると思いますし、うまく使う方法はあると思います。ただ、自分の人生を振り返った時に、不登校から学校に戻れるようになった背景には、人との出会いがありました。あの時AIがあったとしても、私は学校に戻ることはできなかったでしょう。私自身は、人が人と出会うことによって人生は変質していくと思っています。

    「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」ではパイロット(分身ロボットを遠隔操作するスタッフ)のお名前を記したお客様のレビューも多く、人と人の出会いが生まれています。AIではなく、人が担うべき仕事は何だと思いますか?

    これは私の知り合いの尊敬する経営者の方が指摘していたのですが、肉体労働でもなく、頭脳労働でもなく、「感情労働」、加えて「関係性労働」だと思います。例えば髪を切る時、近くに安いお店があったとしても、「あの人に切ってほしい」という美容師さんがいたりしますよね。推し文化と同じで、「あの人に任せたい」という仕事がある。もしその人が歳を重ねて能力が多少落ちたとしても、きっと頼み続けるでしょう。

    お客様の肩に乗る、観光ガイドの可能性

    今後、「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」でOriHimeの働き方はどう広がっていきますか?

    OriHimeが、バーやスナックのママみたいに人生相談を受けたりするのは向いているかもしれません。その人がいるからこそ、お客様が来る。そういう場をつくれると思います。

    目の前にはいないパイロットだからこそ、お客様が本音を打ち明けやすいということもありそうですね。

    そうですね。パイロットたちはもともと接客のプロではありませんし、病気で人に接することに慣れていなかったりします。でも、OriHimeというアバターを通し、役割を担うからこそコミュニケーションが増幅するという面もある。

    中学時代に私が引きこもっていた頃、オンラインゲーム上では友達ができました。「このパーティにおける回復役は自分だから、俺が寝てしまうと仲間たちが全滅してしまう。朝まで頑張ってボスを倒すぞ!」と一致団結したり。対人が苦手でも、ある種の匿名性があり、ミッションとロールがあれば会話しやすい。

    店内ではバリスタのパイロットも活躍していますが、ほかにもユニークな役割はありますか?

    最近トライアルを始めているのが、観光ガイドです。外国人観光客の方が多く、せっかく日本橋を訪れたなら歴史ある老舗のお店などにも行きたいですよね。カフェでそういう場所を紹介したら喜ばれたのですが、できれば紹介するだけではなく案内したい。それでお客様にOriHimeを連れていってもらうという方法を考えました。

    肩に乗せてもらい、OriHimeが街案内をします。ちゃんと英語の通訳もして、いいお土産が買えたりする。観光客の方にも、お店や町内会の方にも歓迎されています。

    写真提供:オリィ研究所

    その取り組みは、日本橋以外にも展開していきそうですね。ガイドとして働きたい人もたくさんいると思います。

    移動困難者というと障害者をイメージするかもしれませんが、就職できないヤングケアラーや、夫の転勤で仕事を辞めた妻、家族の介護で会社を辞めた人など、たくさんのケースがあります。こういった方にとっても、遠隔で働ける仕事を増やしていくのは有効です。家にいる方が働くことでどう社会を回すことができるか。これは全人類の課題だと思いますね。

    PROFILE

    吉藤オリィ

    吉藤オリィOry Yoshifuji

    高校時代に電動車椅子の新機構の発明をし、世界最大の科学コンテストISEFにてGrand Award 3rdを受賞。早稲田大学在学中、自身の不登校の体験をもとに対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発し、同年株式会社オリィ研究所を設立。自身の体験から「ベッドの上にいながら、会いたい人と会い、社会に参加できる未来の実現」を理念に開発を進め、2021年には寝たきりでも働けるカフェ「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」を開店。2022年メディア芸術祭メディアアート界のオスカーともいわれるPrix Ars Electronica-Golden Nica受賞。2025年4月には、デンマークに分身ロボットカフェの期間限定店がオープンした。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウスグループでは、障がいがある方の採用を行い働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

    多様な人財活躍(障がい者等)

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