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コラム No.28-20

CREコラム

今さら聞けない「不動産証券化」(20)利益相反について

公開日:2018/11/30

不動産証券化は、多くのプレーヤーが関わりながらその目的を実現するために業務を展開しますが、その仕組みの性質上、利益相反になるリスクを構造的に抱えているともいわれます。

利益相反とは何か

利益相反とは、ある行為が、利益になることと同時に不利益になることを指します。例えば、会社の取締役が自己所有の土地を会社に対して地価よりも高い金額で売るような行為。取締役はより多い利益を得られますが、会社にとっては不当な価格で不動産を購入したことになり、会社に損害を与えます。取締役にとっては利益であり、会社にとっては不利益ということになります。

現代は産業が高度かつ細分化し、また多くの企業が関連会社を傘下に持つようになりました。ある業務が枝分かれしたり付随業務や関連業務が生まれたりすると、それに対応した子会社が次々に誕生します。こうして大企業は傘下に多くの子会社を抱え、事業を拡大していきます。それにつれて取引形態も多様化して利害関係が複雑になっていきます。
企業のこうした成長過程で、利益相反は、すぐには気づかず、見落とされがちな傾向にあるかもしれません。しかし、利益相反は関与する会社に信用失墜という大きな痛手を与えます。露見したり疑われたりすれば、その後の事業継続は厳しくなります。それだけに、最も回避すべき経営リスクといえるでしょう。

利害関係者が多い証券化ビジネスに潜むリスク

不動産証券化は、不動産を小口の有価証券にして投資家に販売し、資金を調達したい人と運用したい人の目的を達成する金融ツールです。
その目的を具体化するために特別目的会社(SPC)を設立したり、リートを組成したりします。ただし、SPCは従業員のいないペーパーカンパニーであり、我が国のリート(J-REIT)は、米国のような会社形態ではなく、経営者は存在しません。不動産証券化は、資金の調達や運用などの目的を達成するために、実体のない組織を利用しているので、これを生きたものとして利用するには多くの参加者が役割を分担していくことが求められます。 また、不動産証券化は比較的歴史の浅いビジネスですから、細分化した役割を実行する担い手たちも、多数存在するわけではありません。証券化ビジネスは多くのビジネスと同様に規模のメリットを享受します。従って、どのような産業から参入するにしても、資本力のある企業が有利に事業を展開していくことになります。不動産証券化は、文字通り「不動産」と「金融」という2つの業界が強く関与していることを連想させます。どちらも裾野の広い業界で、かつ産業界をけん引する代表的な業種です。

とりわけ、資金調達の有力なツールとして成長している証券化は、金融業界のプレーヤーが多数参画します。証券化の対象となる不動産の取得資金を融資する銀行、不動産を小口化して信託受益権(証券)を発行する信託銀行が存在します。証券化の準備から証券発行、配当還元という証券化を取り仕切るアレンジャーは主に証券会社の役割ですし、不動産の買い付けや運用などはアセットマネージャーの仕事で、これは資産運用会社(アセットマネジメント会社=AM会社)が担当します。我が国には、こうした銀行、信託銀行、証券会社、AM会社をグループに抱えているメガバンクグループや大手証券グループが存在しています。もちろん、それぞれの会社は同じグループでありながらも、適切な情報隔壁(ファイアウォール)を維持して利益相反行為を排除するために、厳しい規則を設けて神経を使っています。なぜなら、金融業は巨大資本の企業が集まる業種で、優先的な地位の濫用に陥るリスクがあるからです。証券化事業では、1つの証券化ビジネスで同じ金融グループに属するプレーヤーが独占する可能性が考えられますが、そうした場合は、各参加者は利益相反することのないよう、ファンドや投資家に対して忠実義務を負わなければなりません。

J-REITでは特に注意を払っている

J-REITでは、利益相反に対して特に神経を使っているようです。不動産の所有者(原債権者、スポンサー)と、上場しているリートの運営主体が実体的に同じ企業グループであることが珍しくないからです。例えば、不動産の所有者(スポンサー)である〇△株式会社が、関連のリート会社「〇△投資法人」を持っているとします。〇△社は保有する不動産を〇△投資法人(=リート)により高く売却して資金を調達し、新規事業の資金にしたいと考えます。〇△リートでは、投資家により良い収益を提供するために不動産をより安価に仕入れたいと願います。〇△リートが親会社に対する独立性を堅持していれば問題ありませんが、その意向を少しでも忖度(そんたく)しようとすれば利益相反が起こります。

J-REITは不動産証券化の活性化のためにつくられた便宜上の仕組みです。このため、この仕組みを動かして投資家に配当を還元するまでの仕事は、すべて外部の関係者に依存しています。J-REITにおいてはスポンサーと投資法人、証券化スキームにおいてはオリジネーターとSPCを運営する各種のプレーヤーが相互に適切な関係構築を図り、投資家に不利益になることがないよう、プレーヤー各自がコンプライアンス(法令遵守)を徹底し、内部統制を強固にしていくことが、より一層求められています。

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