住まいづくりを考え始めると、気になるのは「お金」のこと。
いくらで建てられるのか、月々の住宅ローンの返済はいくらになりそうか。
補助金や優遇金利も気になる――そう思うのは、ごく自然なことです。
しかし、住まいにかかるお金は購入時だけではありません。
住み始めてからは、光熱費や修繕費といった支出が長く続きます。
購入時の金額だけで判断してしまうと、
住んでから「思ったより経済的な負担が大きい」と感じる場面が出てくる可能性も。
そこで今回は、お金の面から、住んでからも満足できる家づくりの考え方を探ります。
住まいの資金計画に詳しいファイナンシャルプランナーの山田健介さんには「お金」の視点から、
大和ハウスで住まいの企画に携わる木口正浩には「設備や住宅性能」の視点からお話を伺いました。
後悔しない家づくりのお金。
「物件価格」だけで決めてはいけない理由

――家づくりにかかるさまざまな“お金”に関して、多くの方はまず物件価格に目が向きがちです。一方で、住まいは長く付き合うものでもあります。費用の考え方として、どんな視点が大切だとお考えですか。
山田さん:人は本能的に、目先で確実に判断できる情報を重視しやすいので、物件価格に意識が向くのは無理もありません。しかし、 住まいは30年、40年と非常に長い期間住み続けるものです。そのため家づくりは目先の「買うときの安さ」だけでなく、長い目で見た「ライフサイクルコスト」と、快適性や安心感といった「暮らしの質」をあわせて考える視点が欠かせません。
――「ライフサイクルコスト」とは何でしょうか。
山田さん:ライフサイクルコストとは、住宅購入における初期費用だけでなく、住み始めてから発生する光熱費や修繕費、税金なども含めた、生涯にわたる住居費の総額を指します。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 初期費用 | 登記費用、仲介手数料、印紙税、住宅ローン事務手数料・保証料、火災保険料、引っ越し費用、家具・家電の購入費など |
| 住宅ローン関連 | 土地代・建設費を含むローン元金、利息など |
| 光熱費 | 電気、ガス、水道、冷暖房費、給湯費など |
| メンテナンス・修繕費 | 外壁・屋根の塗装、防水工事、給湯器や空調設備の買い替えなど |
| 税・保険 | 固定資産税・都市計画税、火災保険料・地震保険料など |
| 暮らしの変化に伴う費用 | 家族構成の変化に伴う間取り変更、バリアフリー化、在宅ワーク対応の改修など |
山田さん:ここで 極端な例を出しましょう。物件価格に光熱費や修繕費などをすべて織り込んだライフサイクルコストが1億円になる家が2つあるとします。実際に費用の内訳を見てみると、家によって以下のような違いがあります。

この場合、あなたはどちらの家に住みたいと思いますか?
――同じ価格であれば、家にお金をかけているA(物件価格7,000万円)の家に住みたいですね。
山田さん:実際の相談現場でも、ほぼ全員がAだと答えます。ただ現実の住まい選びでは、予算の制約から物件価格を優先して抑えざるを得ない場面も少なくありませんよね。
一方で、光熱費や修繕費といった「住み始めてからかかるコスト」は、住宅の性能によって大きく左右されます。物件価格を安易に節約したことで、十分な性能が備わっていなかった場合は、入居後の光熱費や修繕費がかさみ、生涯で見た住居費の総額は大きくなってしまうことも少なくありません。
「ライフサイクルコスト」と「住宅性能」の、
切っても切れない関係
――住み始めてからかかるコストが、なぜ住宅性能に影響されるのですか?
山田さん:それは「住み始めてからかかるコスト」の中でも特に家計への影響が大きい以下の3つの要素が、住宅性能と密接に関わっているからです。
1. 住宅ローン関連
家計負担:(大)桁が大きいため、金利差が長期で効く
住宅性能との関係:性能が高いほど、補助金やフラット35の優遇金利の対象になりやすく、結果としてローン総支払額を減らせる
2. 光熱費
家計負担:(大)毎月必ず発生し、長期で積み重なる
住宅性能との関係:家の断熱・気密・省エネ性能が高いと、冷暖房や給湯のエネルギー使用量が減り、光熱費を大幅に抑えられる
3. メンテナンス・修繕費
家計負担:(長期的に見ると大)10~20年周期で大きな費用が発生する
住宅性能との関係:耐久性・耐候性・防水性に優れた構造や素材を採用した住宅は、外壁・屋根・配管などの修繕周期が長くなり、結果的に生涯コストを大きく抑えられる
――でも住宅性能が高いと、どうしても物件価格は高くなりますよね…?
山田さん:たしかに高性能住宅は建築費が上がる傾向があります。ただ、本当に大切なのは購入時の価格だけでなく、何十年先まで「この家にして良かった」と思えるかどうかではないでしょうか。
高性能住宅にかかるコストはいわば、光熱費や修繕費、さらには過去に話題となったシックハウスなどを避けるということを含めて健康面への配慮といった将来の支出を減らすための“先行投資”。初期費用だけでなく、住宅ローンの利息や光熱費、修繕費まで含めたライフサイクルコストで見ると、結果的に高性能住宅のほうが総支出を抑えられるケースも少なくありません。
だからこそ、住まい選びは「物件価格」だけを見るのではなく、「生涯にわたる安心」と「ライフサイクルコスト」をセットで考えることが大事なのです。
家計への影響が大きい要素 (1) : 住宅ローン関連
――重要性はわかりましたが、住宅性能が高いと住宅ローンの返済も大変そうです。どんな返済計画を立てるべきでしょうか?
山田さん:計画を立てる上で一番大切なのは「いくら借りられるか」ではなく、「将来にわたって無理なく返し続けられるか」を考えることです。教育費や転職、介護など、ライフステージによって家計の状況は変わっていきますので、そうした将来のライフイベントを考慮したキャッシュフロー表を作成し、返済計画を立てましょう。
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また、ローンを組む際に変動金利を選ぶ場合は、長期にわたる将来の金利動向を正確に予測するのはほぼ不可能ですので、仮に金利が上昇した場合でも家計が破綻しないかという前提で、一定のゆとりを見込んだ設計にしましょう。
――ローン総支払額を減らせるのであれば、住宅ローン減税や補助金制度などは積極的に活用したほうが良いでしょうか?
山田さん:優遇制度を上手に使うことは賢い選択です。実際に補助金や優遇金利がきっかけで住宅性能に関心が向き、結果として良い家選びにつながることもあります。
ただし、制度の利用が「目的」にならないように注意は必要です。あくまでも条件があえば補助金や優遇金利を活用する、というスタンスでいましょう。
家計への影響が大きい要素 (2) : 光熱費

――最近は電気代も高騰しているので、「光熱費」は毎月の支出としても実感しやすい要素ですよね…。光熱費は変動費として真っ先に節約を考えがちですが、住宅性能とどの程度関係してくるのでしょうか。
山田さん:光熱費は使い方と、住宅そのものの設計や性能によって決まります。そのため、光熱費は我慢して「削る」ものではなく「設計で自然に減らす」ものだと考えましょう。その鍵となるのが、断熱性や気密性といった住宅性能です。
住宅性能が高ければ光熱費を抑えやすくなるだけでなく、住まいの快適性や家族の健康といった「暮らしの質」そのものにも直結します。
一方で、デザイン面は光熱費や修繕・メンテナンス費用削減への影響度が比較的低く、後から変更できる部分が多いもの。よって、見た目よりも住宅性能・設備を優先して考えることをおすすめしています。
――住宅性能の研究に携わる木口さんはどうお考えですか?
木口:ハウスメーカーの立場としても同意見です。住宅性能・設備が充実している家は光熱費、健康や快適性に加えて、(後述する)将来のメンテナンス費の負担も抑えやすくなります。住宅性能は後から変更するのが難しいため、最初にしっかり整えておくと、住み始めてからの暮らしの質が大きく変わりますよ。
――住宅性能が高い家を選ぶ際、私たちが参考にしやすい指標はありますか?
山田さん:「長期優良住宅」の認定を受けているかどうかはわかりやすい基準です。国が定めた耐震性や省エネ性の基準をクリアしているという指標であり、住宅ローン減税の控除額増額や金利優遇といったメリットも付いてきます。
木口:「長期優良住宅」の基準にも組み込まれている「断熱等級」も要チェックです。国としても断熱性が高い家を推奨していて、2025年4月より、すべての新築住宅・建築物は断熱等級4以上であることが義務付けられました。2030年には、断熱等級5が最低基準となる予定です。
――実際、住宅性能の高い住まいだと、どれくらい光熱費が変わるのでしょうか。
木口:1つの目安として、30年前に建てられた断熱等級3の家から断熱等級6の家に引っ越すと30年間の光熱費はどうなるのかを算出したものが次の図です。
試算条件:当社光熱費算出ツール:ecoナビゲーターにて試算
【共通】建物地域:東京/延床面積:97.88m2/空調:エアコン/調理機器:ガスコンロ
【断熱等級3の家】外皮平均熱貫流率UA値1.54・冷房期の平均日射熱取得率ηAC3.8/太陽光発電搭載なし/給湯ガス給湯器/1・2階天井高2,400mm
【断熱等級6の家】外皮平均熱貫流率UA値0.44・冷房期の平均日射熱取得率ηAC1.2/太陽光発電搭載4.104kW/給湯高効率ガス給湯器/1階天井高2,720mm・2階天井高2,400mm/売電価格(1kWhあたり)1~4年24円、5~30年8.3円と仮定して試算。
※試算条件及び時期により異なる
30年前の家では、30年でかかる光熱費は約903万円。しかし、断熱等級6の家だと約690万円、さらに太陽光発電がある断熱等級6のZEH住宅だと、30年の光熱費は約479万円になり、30年で約424万円もの差額が生じます。加えて、「冬は暖かく、夏は涼しい」快適な暮らしを実現できます。
――では、等級は高ければ高いほうがよいのでしょうか?
木口:現段階の最高等級は7ですが、対応しているハウスメーカーは少なく、物件価格がさらに高額になります。光熱費と建築費のバランスを考えると、国が推奨する住宅の補助事業などで対象になり、既存の家と比べて十分に性能が高い「断熱等級6」が、現時点のベストバランス※と言えるのではないでしょうか。
※掲載の情報は2026年2月時点での法令等に基づいたものであり、内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。
――断熱性や気密性が高いと、快適性や暮らしの質が変わるというお話がありました。具体的には、どのような点が変わりますか?
木口:体感温度が全く違いますよ。例えば冬の時期は、特に朝の冷え込みがひどく、布団から出るのがおっくうになったり、朝食作りやお弁当作りのやる気が失せたりしがちですよね。しかし断熱性の高い住まいなら、暖房が稼働していない時間帯も室温が下がりにくいので、そうしたストレスを感じにくくなります。夏もしかりで、外気の影響を受けにくいため、冷房に頼りすぎなくても室温が安定します。1年を通して暑さ・寒さのムラが少ないことは、快適性だけでなく、日々の暮らしに前向きな気持ちを生みやすいという点でも大きな変化だと思います。
実際のシミュレーションをみていただくと、さらに温度の違いがわかりやすいです。最高気温40℃の夏季の例では、断熱等級6の家は、断熱等級3の家に比べ、エアコンを停止した後の温度が最大5〜6℃も低く、長く「涼しさ」を維持できています。
さらに、最低気温0℃の冬季でも断熱等級6の家は、エアコンを停止した後の温度を断熱等級3の家よりも最大4〜5℃高く維持できたという結果があり、季節に関わらず快適に過ごせることが数値からも実証されています。

試算条件:温熱環境シミュレーションプログラム「AE-Sim/Heat」にて試算
【夏季・冬季共通】建設地:埼玉県熊谷市、気象データ:実在年拡張アメダス気象データ2018年を使用、延床面積:97.88m2
【夏季条件】空調:エアコン/空調スケジュール(冷房26℃/運転時間:主寝室 22時~7時)
断熱等級3の家:外皮平均熱貫流率UA値1.54/冷房期の平均日射熱取得率ηAC値3.8/1・2階天井高2,400mm
断熱等級6の家:外皮平均熱貫流率UA値0.44/冷房期の平均日射熱取得率ηAC値1.2/1階天井高2,720mm・2階天井高2,400mm
【冬季条件】空調:エアコン/空調スケジュール(暖房20℃/運転時間:主寝室 22時~7時)
断熱等級3の家:外皮平均熱貫流率UA値1.54/暖房期の平均日射熱取得率ηAH値3.9/1・2階天井高2,400mm
断熱等級6の家:外皮平均熱貫流率UA値0.44/暖房期の平均日射熱取得率ηAH値1.2/1階天井高2,720mm・2階天井高2,400mm
※試算条件により異なる
家計への影響が大きい要素 (3) : メンテナンス・修繕費
――メンテナンス・修繕費用は住み始めてすぐにはかからないからと、つい後回しにしてしまいがちですが、目安としてどれくらいの期間で、どの程度かかるのでしょうか。
山田さん:住宅産業協議会から出ている「住まいのメンテナンススケジュール」が1つの目安になるでしょう。

※住宅産業協議会の「住まいのメンテナンススケジュール」を基に作成
――これは子どもの進学や車の買い替え時期などとメンテナンスが重なると痛い出費になりそうですね…。
山田さん:長く住んでいれば建物の劣化は避けられません。だからこそ大切なのは「支出の時期と金額を予測し、計画的に備える」ことです。
戸建てはマンションの修繕積立金のような仕組みがないため、資金準備が後回しになりやすいです。そのため最初から積み立てる前提で考えておきましょう。仕様や保証内容によって差はありますが、一般的には月1.5万円〜2万円程度を目安にしておくと、将来の大きな修繕にも備えやすくなります。
あわせて重要なのが、ハウスメーカーの保証・点検制度を事前に整理しておくことです。延長保証の条件や、有償メンテナンスが必要になるタイミング、保証対象外となる範囲などを把握しておくことで、「いつ・どの程度の費用が発生しそうか」を見通しやすくなり、より現実的な資金計画が立てやすくなります。
木口:大和ハウスでは、「(骨組みや基礎部分などの)構造耐力上主要な部分」と「(外壁や屋根などの)雨水の浸入を防止する部分」について、業界でもトップクラスとなる30年の初期保証を設けています。さらに、その後も定期点検と所定のメンテナンスを継続することで、60年まで保証を延長でき、60年以降も耐久性能調査をもとに保証年限を提示。末長く建物の安心をサポートする仕組みを整えています。
こうした定期的な点検とメンテナンスにより、大規模補修のリスクが抑えられ、結果的にメンテナンスコストの軽減につながりやすいと考えています。
※商品によって保証制度の内容は異なります。
――経年劣化に加え、最近は地震も多いので住まいの「強さ」も気になります。長く住み続けることを考えると、耐震性や耐震等級なども考慮しておく必要があるでしょうか?
木口:耐震性はもちろん重要ですが、実は「耐震等級」が高いというだけでは安心できません。現在の耐震等級の最高等級は3ですが、これは「数百年に一度の大地震で倒壊しない家」を想定しています。しかし、昨今の地震では、大地震の後に大きな余震が何度も起こるケースが目立ちます。一度の大地震に耐えるだけでなく、繰り返しの揺れに耐え続けられる家が求められています。
そのため大和ハウスでは、耐震等級3を標準化した上で、さらにその先の安心を見据えた高耐震技術を開発しています。独自の「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」は、大きな揺れに対して耐え続けるだけではなく、地震エネルギーを効果的に吸収し、住宅構造の致命的な損傷を防ぐ仕様です。地震被害を最小にとどめるため、修繕リスクも抑えられます。
物件価格を抑えても、災害時の修繕リスクが大きければライフサイクルコストは膨大になる可能性があります。「万が一の修繕費を抑えやすいか」「長期保証によってメンテナンス費用を抑えやすいか」という視点も忘れないようにしてほしいですね。
避難所へ行かないという選択肢 災害時に「在宅避難」できる住まいの条件とは?
山田さん:お金の面から見ても、地震や火災などの災害から家計を守るために最も確実で投資効率が良いのは「家の耐久性を高めること」です。
災害が起きた後の補填を考えることも大切ですが、まずは「壊れない・燃えない家」に投資し、被害そのものを未然に防ぐ。この「予防」の視点こそが、万一の際の突発的な大支出を抑え、資産価値を維持するための最も堅実な備えとなります。
まとめ
住宅購入はどうしても「いくらで買えるか」という目先の数字に意識が向きがちです。しかし、ライフサイクルコストを意識することで、単に支出を抑えるためではなく、長く安心して快適に暮らすための判断軸ができ、結果として満足度の高い住まい選びへと自然につながっていきます。
大和ハウスの戸建注文住宅では断熱等級6を標準化。数字やカタログだけではわからない“満足度の高い豊かな暮らし”を、ぜひ展示場で体感してみてください。
Profile

大和ハウス工業株式会社 ハウジング・ソリューション本部
マーケティング室 ブランド戦略グループ グループ長
木口 正浩
一級建築士。1998年大和ハウス工業に入社。住宅商品開発部で造作家具や水回り商品の開発や住まい方提案に従事した後、商品企画に異動。「xevoΣ」の商品企画、「2.72m天井高」を軸とした商品戦略に携わり現職。

FPplants株式会社 代表取締役
山田 健介さん
住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。
※掲載の情報は2026年2月現在のものです。









