大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

石﨑常務 スペシャル対談

大和ハウスの”将来の夢”は認知と理解から共感フェーズへ。
“将来の夢”実現に向けて取り組みを開始

石﨑常務

石﨑常務(以下、石﨑):
大和ハウスグループは、創業100周年にあたる2055年に実現したい“将来の夢”(パーパス)を描き、動き出しました。この1年は、従業員に”将来の夢”について正しく知り理解してもらうために、全国の事業所を回って”将来の夢”に込めた想いなど説明してきました。2022年10月頃からは、従業員に“将来の夢”について共感してもらえるよう事業本部・事業所・個人の3つの軸に分け、それぞれの分野で“できること”を従業員とともに考え、行動に向けた働きかけを行いました。
従業員も、少しずつ変化を感じているようです。最初は”将来の夢”に懐疑的な意見もありました。しかし、さまざまな活動を通じて世代の壁、上司・部下の立場を越えていろいろな方と対話することで、単なる理想論ではなく私たちが果たさなければならない使命であるという意識が芽生え始めています。先行してスタートした流通店舗事業本部ではワークショップを実施しました。流通店舗事業本部の未来の事業や組織の姿について職種を超えて対話した結果、「有意義だ」「もっと続けたい」という声が多々ありました。このような姿を見ると「私たちの未来はまだまだ明るい」とうれしく思っています。
事業所の活動でも、地域の未来を描く「ミライマチ宣言」を各事業所・工場の全従業員の対話を通じて策定してもらいました。「ミライマチ宣言」を作るにあたっては、『生きる歓びを分かち合える世界の実現」に向かって何ができるかを理解してもらうことから始めました。自分たちが根差すマチの未来はどんな景色が広がっているのかを考えることは、「生きる歓びを分かち合える」に直結します。地域ごとに「生きる歓びの課題」は異なります。全国68カ所から集まった「ミライマチ宣言」は、本当にさまざまで、地域の特性が出ています。また策定にあたっては、オフィスではなく、喫茶店を貸し切って対話したという報告もあり、非日常の時間が持てたのではないかと思います。当社では、これまで中長期な目線で、自分たちが所属する事業本部や事業所のマチの姿を営業や技術などの職種を超えた議論を行う機会はなかったと思います。話し合いが終わったときには、「中長期的の目線が大事だと気づいた」「ありたい姿をイメージしていなかったことに気づいた」という声がありました。個々が描いていた強い想いなど、さまざまな気づきがあり、いい時間になったと聞いています。
パーパスを唱えただけでは企業価値は上がりません。中長期戦略として落とし込むことが必要で、着実にパーパスに近づく活動へとしていかなければなりません。「ミライマチ宣言」が、目指す地域の姿に向け、実際の取り組みとリンクしていければと考えています。
今後は個人にスポットを当て、働く意義、一人ひとりのパーパス、生きる歓びを重ね合わせる大切さも見つけてもらいたいと思います。従業員一人ひとりが自らの働き方、業務の進め方に課題意識を持ち、仕事のやり方を考えていくことが大切だと感じています。たとえばチーム制の導入や中長期目線で業績や成果を捉えるための対話は、個人と会社の双方にとって非常に有意義だと考えています。
このたびお話を伺わせていただく桜の保全活動は、こうした人財育成や組織風土の醸成と共通するものがあると感じています。

公益財団法人吉野山保勝会と大和ハウスとの出会い
―桜を育てるために「土を育てる」

車田理事長

車田理事長(以下、車田):
吉野山保勝会は、桜の保全と文化的景観の保護を目的に1916年に発足しました。吉野山はヤマザクラを中心に200種3万本の桜が群生し、世界遺産と国立公園に指定されているきわめて珍しい自然遺産です。保勝会は地元の方々が大半で、理事10名、評議員14名、桜守3名、事務2名の29名で構成しています。「吉野山を守っていく」という使命のもと、保全活動を続けてきました。昨今、吉野山の桜は衰退してきているという現実があります。私の2代前の理事長の時に「桜の保全に改めて真剣に取り組もうという」という号令のもとにさらに活発な活動に取り組むようになりました。
大和ハウスさんとご縁ができたのは、私たちが「何とか吉野山の桜を再生できないか」と困惑していた2008年のことです。創業者の石橋さんが奈良県吉野郡出身であったことから大和ハウスさんに相談に伺いました。当時は手探りの状態の中、植樹活動を中心に行っていました。苗木を植えればそれなり育つ桜もありましたが、育たないものもありました。そうしたなか、大和ハウスの担当者が紹介してくれた専門家より「土を育てる」という考え方を教わりました。当時は土壌を改良すれば桜が元気になるという考えに懐疑的な意見もありました。しかし、何度も対話を重ね、この考えを取り入れることにしました。

龍見部長

龍見部長(以下、龍見):
土壌改良から約8年が経ち、土を育て続けたエリアには変化が現れています。山はさまざまな草木が生え、生物が生息している状態が健康な状態です。そうした多様性のある山で生きている桜は、他のエリアと比べても幹が太くなることからも、やはり、土が大切だと思いました。2008年当時と比べると、かなり状態は良くなりました。もちろん桜の木も年を重ねれば衰退しますし、自然災害があれば倒れてしまうこともあります。大事なことは、それをどうカバーするかです。そうなった時に元気な桜をいつでも植えられるよう土を育成することが、吉野山の桜を保全することであると信じています。かつては、地元ではそれほど多くの苗木を育てられず、他の地域で育てられた苗木を吉野に持ち込んでいたこともありましたが、現在は吉野山に桜の苗木を育成するための畑を作り、自分たちで育てています。サクランボを拾って、発芽させ、ある程度の大きさになったら山に持っていって植樹する、これが私たちの1年を通じた活動です。その繰り返しです。桜は生き物ですから、放置してはいけない。今、約3万本の桜を3人の桜守が守っています。

大和ハウスの社員が種から拾って育てた苗木の1期生を、2015年4月に
樋口会長(現・名誉顧問)が創業60周年として記念植樹したヤマザクラ

宮川担当(以下、宮川):
当社は、年6回の保全活動にグループ従業員がボランティアとして参加しています。当社のOBや家族連れで参加される方もいて、そこに新しいコミュニティができる楽しみもあります。

車田:
ボランティアの皆さんにはいつも助けられています。

宮川:
私も担当者として長年携わっていますが、本当にいい経験をさせてもらっていると実感しています。ありがとうございます。

車田:
私たちは根を育てることにこだわっています。できる限り病気にかからないよう苗木を大事に育て、山へ還します。力強い桜となるためには小さい種から育った根が、どれだけ元気であるかが重要です。そしてまた土が違えば育ち方にも違いが出てきます。
2008年のあの時、行動に踏み切ったことが今につながっているのだと実感しています。

石﨑:
そういった経緯があったのですね。
お話をお聞きして、植えた後もいろいろな草が共生する方がいい土になるということや、桜の花の色がひとつずつ違う点。また、すぐには育たない点などは、人と同じだと感じました。そして本当の意味で桜のすばらしさがそこにあるとも感じます。その意味でも、桜と人はよく似ており、職場環境をいい状態に保たないと人は育ちません。桜として一人前になるまで50年、そして寿命は70年というのも、人間と似ていますね。土自体に栄養があるから、あえて肥料をやらないようにして根を強くしようとされていることや、強いDNAを次代に残すために母樹(※)から種を拾う重要性についても印象的でした。

母樹とは、特に優良な種苗を生産するための種穂の採取に適する木のこと。

土の改良については、半信半疑で取り組まれたということでしたが、常に新しいことを試さないといけない点は企業も同じです。”将来の夢”は、これまで当社が大切にしてきた創業者精神を未来に継承していくものであり、今の時代に合わせて当社が果たすべき役割を明確にしたものです。昨年実施したエンゲージメントサーベイからも、当社従業員の半数以上が「世の中の役に立ちたい」という想いを抱えているという大きな気づきを得ました。従業員の想いと会社の想いが重なり合うことで夢の実現に向けて大きな一歩を踏み出せると考えています。そのための職場環境、つまり土の改良が重要だと考えており、今、まさに取り組んでいるのが先に述べた「ミライマチ宣言」です。地域密着型で長期にわたって寄り添い共創共生で価値を創出することで、共感していただける仲間が増え、地域課題の解決に向けた新しいビジネスやイノベーションが生まれることを期待しています。少しずつですが、さまざまなステークホルダーとの共感の輪は広がってきています。
私たちは、これまでの取り組みがうまくいっているかどうか、定期的にアンケート調査などを実施しており、この結果ももっと活用したいと考えています。結果の良し悪しに一喜一憂するのではなく、現状を客観的に判断できるデータとして活用し、職場の環境をよりよい状態に変え、働きがいを醸成するための知恵を絞らなければいけません。さまざまなことを試しながら取り組む必要があります。正解はありません。さまざまな人が多様な価値観を持ち寄らないと、会社はいい状態にならないのです。いいサクランボでも、土が悪くて芽が出なかったら悲しいですよね。母樹は企業で言えばリーダーのようなもの。次の母樹(リーダー)もしっかりと育成していかなければならない。保勝会の皆さんとこうやって対話して、知恵を出し合って実践していくことは大和ハウスらしい活動だと実感しています。

土も職場環境も長期目線で地道に取組むことで
満開の花が咲き誇る

龍見部長

龍見:
再生と循環。山はまさしくそのものです。山に真摯に向き合い、取り組んでいく、これに尽きます。何年間も桜が咲く5日間のために、桜を咲かすための努力を360日続けています。今、喫緊の課題は後継者の育成です。保勝会の存続に向けたメンバーの育成と、そして桜守の育成です。特に、桜を守っていく人財の育成は大事です。この地域は若い人が少ないため、なるべく早く次の担い手を見つけなければなりません。現在、桜守は3人で、一人は吉野出身ですが、あとの二人は桜が好きで、吉野の桜を守りたいと思い来てくれた子たちです。この子たちもいずれは歳をとります。技術がある人であっても一人前になるためには時間がかかります。どのタイミングで次の桜守を採用し、育てるかを検討しています。人を雇うには費用がかかりますから、時期の見極めは難しいところです。

車田理事長

車田:
「世界に誇れる日本・吉野の桜になること」、これが私たちの夢です。その想いから、少しずつでも桜を増やしていきたい。何年かかるか分かりませんが、続けることに意味があると思っています。私たちの代でつぶすわけにはいきません。これまで、大和ハウスさんと一緒に繰り返し取り組んできたことで知識も身につき、常に新しいことを考えるようになりました。「和をもって貴しとなす。」これからも世界一の桜を目指して、大和ハウスさんと共に歩ませいただきたいと思います。

石﨑常務

石﨑:
ありがとうございます。
当社の創業者である石橋信夫は「事業を通じて人を育てる」と言いました。人こそが一番大切という考え方によるものです。変化の激しい今、人財はますます重要になります。私たちは、人財を育て、生き生きと活動してもらえるような職場環境、企業文化を醸成していかなければなりません。大和ハウスらしさも失わないようにしながら、未来に向けて一人ひとりの人財が活躍できる環境や組織を作っていきます。”将来の夢”を実現するための組織変容と、桜を育成するための土壌改良はフィールドが違うだけで、やっていることは同じではないでしょうか。皆がさまざまな個性を発揮して活躍し、さまざまな花を咲かせる。これは体感しないと分からないことで、私自身も桜の保全活動を体験したことで気づきました。“将来の夢”への取り組みはまだ始まったばかりで長期的に取り組むべきものです。ステークホルダーの皆さまからも共感をいただきながら、地道に取り組みを行っていきます。そして吉野の桜が満開に咲き誇るように、“将来の夢”が掲げている『人が生きる歓びを分かち合える世界』が広がっている景色となるよう、私も尽力してまいります。

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