類まれな成形合板技術
1~1.5mm程度の単板(スライスした木の板)に熱硬化性の接着剤を塗布して重ね、プレス機で圧力をかけながら高周波電流で熱を与えて、さまざまな形状に成形します
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生活を考える
特集 冨士ファニチア・大和ハウス 座談会
1959年の創業から半世紀以上にわたって木製家具をつくり続ける冨士ファニチア(本社・徳島県板野郡)。
使う人の暮らしに寄り添うデザインとそれを支える独自の技術、良い家具と暮らす喜びについて、
同社の布川(ふかわ)社長と開発部デザイナーの田中氏、大和ハウスの設計士池原が語り合いました。
池原設計士としてお客さまに家具をご紹介することも多いのですが、貴社のチェアは実際に腰掛けると必ず気に入っていただけます。Koti〈コティ〉というシリーズなどは、海外の名作チェアと比較しても座り心地が良いですね。
田中ありがとうございます。Kotiはタイムレスに愛されるシリーズです。昨年発売20周年を機に細部をアップデートし、KotiNoa〈コティ ノア〉を発売しました。
布川当社は1959年に徳島県で創業し、一貫して木製家具の製造を行ってきました。完全受注生産体制で、お客さまの理想に寄り添う家具をご提供しています。
田中大きく舵(かじ)を切ったのは20年ほど前、私が入社した頃でしたね。
布川はい。バブルが崩壊して安価な輸入家具が市場に大量流入した頃、他のメーカーと同様に当社も停滞期を迎えました。一時はコストダウンに注力したものの、商品の独自性や魅力を損なっては生き残れないと、製造の都合でデザインを調整することを一切禁止し、デザイナーの意図を細部まで具現化すると決心したのです。
田中たとえば超軽量ダイニングチェアCalm〈カーム〉は、私が入社後間もなく担当した商品です。その躯体構造やパーツの薄さは当時の常識ではタブーの領域でしたが、何度もサンプルをつくり、強度試験を受けて商品化にこぎつけました。結果、生産が追い付かないほどの大好評をいただきました。
池原貴社が理念に掲げる「創造的破壊」を表すエピソードですね。
田中開発時はとても苦労しましたが、挑戦によって製造技術がさらに進歩し、当社の財産になりました。今後も挑戦を重ね、お客さまが使い続ける中で驚きや発見を得られるような商品を生み出していきます。
田中氏がデザインを担当した新作コレクション、Note〈ノート〉。内部構造まで一新し、新しい座り心地と構造美を追求しました
池原家具のデザインにおいて大事にされているのはどんな点でしょうか。
田中家具単体の魅力も大切ですが、それを置いた空間がいかに心地良く美しいかが重要です。たとえば大和ハウスの内装との相性を念頭に、お客さまにご提案いただきやすい色や素材を検討します。
池原昨今はお客さま自身がSNSなどで情報を収集し、「こんな空間にしたい」とイメージを提示されるケースも多くなりました。空間のイメージには家具やカーテンが大きく影響しますので、それらを軸に設計することも増えています。
布川現在の社会は変化の真っただ中にあると感じます。大きな流れの一つは「フレキシブルなライフスタイル」です。もともと家はくつろぎの場でしたが、コロナ禍以降はリモートワークが定着し、平日の昼は仕事、夜はリラックス、週末は仲間とパーティーという具合に、空間が多様に使われるようになりました。
田中2026年の新作コレクションであるNote〈ノート〉は、そうした変化を受けて開発したアイランドソファで、ソファを中心に自由に過ごせる空間づくりを想定しています。ソファに座りながらタブレットで動画を見たり、ダイニング側にいる人と会話したりと、さまざまな過ごし方ができます。また、ソファではなくパーソナルチェアを家族それぞれに使われるケースも増えました。
池原ライフスタイルが変化し、自分を見つめる時間が増えたことで、人々がオリジナリティーを大切にする傾向があるように感じています。トレンドは繰り返しますがライフスタイルの変化は不可逆です。私たちデザイナーは未来の暮らしを見据えて提案していく必要がありますね。
軽やかでシャープなフォルムで長く愛されるシリーズ、Koti〈コティ〉。写真左のチェアはアームレスでありながらさりげない肘掛けがあり、「ちょい肘」の愛称で親しまれています
ロングセラーのKotiを現代的にアップデートしたKoti Noa〈コティ ノア〉
独自の機構で滑らかにリクライニングするチェアKangu〈カング〉
リビングとダイニングを兼ねた空間にぴったりのソファPerche〈ペルシェ〉も田中氏のデザイン。深く座るとリラックスに、浅く座ると食事や作業に適したクッション構造が特長
池原田中さんは開発部のご所属ですが、デザインから材料選びまで関わられるのでしょうか。
田中当社開発部は商品企画から設計・開発、プロモーションまで幅広く担っています。
池原家具づくりを総合的にプロデュースされているのですね。
田中はい。先日は広葉樹が自生する徳島県内の山林に赴いて現地視察を行い、林業従事者から話を聞いてきました。当社では現在、SDGsの観点から、国産広葉樹の活用を広める取り組みを進めているのです。
布川徳島県内の森には未利用の広葉樹が多く、間伐材はバイオマス燃料やシイタケの菌床に使われる程度で、後は山中で朽ちていくしかない現状があります。県内の広葉樹を家具として活用することで、地元の森を守り、地域の雇用を支えることにつなげたい。そして家具を購入されるお客さまには、日本の風土とともに生きる喜びをお届けしたいと思います。
軽くて扱いやすいダイニングチェア、Calm〈カーム〉。セミアームタイプは掃除の際、テーブルに引っ掛けることもできます
池原貴社のものづくり技術についてご紹介いただけますか。
布川一番の強みは成形合板技術です。これほど複雑な形状の成形ができるのは、国内では当社を含め2社しかないといわれています。
田中成形合板は天然木より高い強度を確保できるため、繊細なデザインが可能になります。
布川成形の工程はセッティングの難易度が非常に高く、動かし方一つでズレたり割れたりするので、機械化もマニュアル化もできません。当社ではこの道10年以上のベテランが担当しています。
田中塗装や縫製、張りなどの工程も、技術の高い職人が担当します。一方で、複雑な立体形状の削り出しや穴あけ、表面の研磨を一気に行う最新鋭の加工機も稼働しています。
布川機械にできることは徹底して機械に任せ、効率化を図っています。ただ、最終的に家具のクオリティーを支えるのは人の手であることは間違いありません。
池原今後の目標をお聞かせください。
布川ライフステージに合わせたラインナップを目標とするプロジェクトを発足し、2029年の70周年に向けて準備しています。愛着を持って長く使っていただき、必要に応じて買い足していただくという具合に、人生の節目節目でお選びいただけるような家具メーカーでありたいと思っています。
田中父親が昔愛用していたチェアを修理して使いたいといったご要望もしばしばお受けします。新品より高くつくような修理でも、思い入れのある家具だからと希望されるのです。私は、このように愛着を持ってお使いいただける家具をつくることに誇りを持っています。
池原家具への愛着は、住まいにさらなる満足をもたらしてくれます。新築の際は家具の予算もしっかり確保して、長く愛せる家具に出逢っていただきたいですね。 本日は貴重なお話をありがとうございました。
(敬称略)
正確に削り出した無垢材と成形合板を融合した、曲線が美しいチェアNagi〈なぎ〉
冨士ファニチアの商品は、
一人ひとりのお客さまのためにつくられる完全受注生産。
全ての工程を徳島県内の工場で手掛けています。
美しい曲面と高い強度を実現できる成形合板。北欧の家具メーカーを手本に1977年から取り組み、難易度の高い成形にも対応する技術を磨いてきました
1~1.5mm程度の単板(スライスした木の板)に熱硬化性の接着剤を塗布して重ね、プレス機で圧力をかけながら高周波電流で熱を与えて、さまざまな形状に成形します
削る・形をつくる・磨くといった工程を一気にこなせる加工機。左右のパーツを同時に加工でき、完全受注生産と相性が良いそう


研磨(下地処理)をきちんと行わなければ、どれだけ丁寧に塗装してもきれいに仕上がりません。滑らかな下地処理は職人の手が成し遂げます
生産体制が高度に管理された冨士ファニチアの工場。部材や道具の置き方一つとっても厳格にルール化されています。高品質な家具をつくるための姿勢であり、プライドの現れといえるでしょう

座談会 出席者
田中 智也 氏
冨士ファニチア株式会社 開発部 開発課 デザイナー(左)
布川 知則 氏
冨士ファニチア株式会社 代表取締役社長(中)
池原 尚志
大和ハウス工業株式会社 ハウジングマイスター(社内認定)(右)
取材撮影協力
冨士ファニチア株式会社
徳島ショップ
〒771-0219 徳島県板野郡松茂町笹木野字八北開拓412
TEL/088-699-5004
2026年2月現在の情報です。