大和ハウス工業株式会社
~大和ハウス工業が取り組む熱中症対策~
熱中症対策の義務化に企業はどう応えるか

大和ハウス工業は、職場環境を整備し、従業員の安全を確保することを目的に、当社および協力会社を対象とした熱中症対策を実施しています。昨年は記録的な猛暑となりましたが、今年の夏も全国的に猛暑が予想されています。また、2025年6月1日から事業者の熱中症対策が罰則付きで義務化されたことを受けて、各社が職場における対策を強化しています。今回は、当社の取り組みについて紹介します。
1.今年も猛暑の見込みで熱中症のリスク大
気象庁は、2025年の6月から8月の単月平均気温が1991年から2020年までの平均気温を上回り、全国的に厳しい暑さになる見込みだと発表しました。30度を超える真夏日や高温多湿の環境が予想されますが、そのような環境下では熱中症のリスクが高まります。総務省によると、2024年の熱中症による全国の救急搬送人員は約半年(2024年5月~9月)で97,578人となり、前年度同期間の91,467人を6,000人超も上回る結果となりました(※1)。また、厚生労働省が発表した過去5年間(2020年~2024年)の業種別の熱中症の死傷者数によると、熱中症による死傷者数が最も多い業種は建設業となっています(※2)。建設現場は、作業内容や条件によっては一定の危険を伴います。特に長時間にわたり高温下で作業することや、高所での作業が多いことから、不安定な足場による転倒・負傷などのリスクが存在します。
※1.総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
※2.厚生労働省「職場でおこる熱中症」

2.当社のこれまでの熱中症対策と外部の評価
当社は以前から熱中症対策に力を入れており、施工現場でのファン付き空調服の購入補助や貸与、遮光ネットを用いた休憩所の整備などを行ってきました。また、関東の一部の大規模施工現場では、休憩所に設置する自動販売機において、スポーツドリンクやイオン飲料などの飲料を50円で提供しており、当社および協力会社の従業員からの評価が高い取り組みとなっています。

また2024年11月には、当社の環境保全への取り組みとともに、これらの熱中症対策も評価され、環境省「令和6年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞しました(※3)。
※3.「水害リスク・熱中症対策への取り組み」と「地中熱・排熱利用供給システム」が「令和6年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞しました(ニュースリリース)(2024年12月2日配信)
3.今年から職場における熱中症対策が罰則付きで義務化
厚生労働省は昨今の猛暑と熱中症の深刻化を受け、労働安全衛生規則の一部を改正し、2025年6月1日以降は事業所に対して熱中症対策を罰則付きの義務とする省令を施行しました。対策を怠った場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。当社は、熱中症発生時に適切な対応を行うため、労働安全衛生規則に準拠した体制を構築するとともに、熱中症の発生を未然に防ぐ環境づくりも推進していきます。
4.熱中症を早期発見し、適切な対応ができる体制を構築
今回の省令改正では、熱中症の重篤化を防止するため、熱中症のおそれがある作業者を早期発見するとともに、発見後には応急措置などの適切な対応ができるよう、医療機関への搬送の手順などをあらかじめ決めて、その内容を関係作業者に周知しておくことが求められています。
省令改正以前より、当社では各施工現場にて、施主、事業本部、近隣の消防署や病院などの連絡先を記載した緊急連絡先を作成・管理しており、熱中症対策にも活用しています。今回の省令改正を受け、熱中症処置手順を新たに作成し、熱中症の判断基準や処置の方法、注意点を記載しました。各施工現場の工事担当者へ緊急連絡先と合わせて配布するとともに施工現場に掲示し、あらかじめ関係作業者が熱中症の初期症状や緊急時の対応を把握しておくことで、熱中症を早期に発見し、発生時には適切な対応が行える体制を構築します。
5.熱中症の発生を未然に防ぐ環境づくり
当社は熱中症の発生を未然に防ぐために、体の中心部の体温である深部体温を冷却するベストと飲料を2024年度から導入しています。また、WBGT(暑さ指数)を推定する機器の施工現場への設置を進めています。

(1)深部体温を冷却するベストや飲料を導入
熱中症は、高温多湿な環境や活動などにより体内の熱を外部に放出できずに深部体温が上昇することで発生します。そのため、深部体温を下げることが効果的な熱中症対策になります。
そこで当社は、ペルチェ素子という半導体によって金属面を零下19℃まで冷却し、血流のポイントを冷却するベスト「D-COOL PAD」を2023年12月に開発しました。2024年度には購入補助金制度を用いて、協力会社の従業員を中心に普及を推進し、700着を施工現場に供給しました。2025年度には、1,000着を目標に供給体制を整えています。また製品内容の改良にも注力し、排熱効率を高めた「D-COOL PAD Ⅱ」を開発し、普及する計画です。
さらに当社は協力会連合会と協力し、細かい氷の粒子が液体に分散した飲料「アイススラリー」を施工現場に一部無償で提供しています。「アイススラリー」は、細かい氷と液体が混合した流動性のある飲料で、水や氷よりも効率よく内部から体を冷やすと言われています。

(2)WBGTを推定する機器の設置
当社は2016年度に株式会社キッズウェイと共同開発した、温湿度・風速・侵入検知を同時に行う環境センサー「WEATHERY(ウェザリー)」を各施工現場に設置し、現地でWBGT(※4)を推定しています。熱中症の予防に必要不可欠なのが、施工現場のWBGTの把握です。「WEATHERY」は、設定した値を超えるWBGTが測定された際に、事務所や施工現場の管理者にメールを送信します。そのため、管理者は現場の状況に適した熱中症対策を迅速に実施することができます。
※4.気温・湿度・熱環境を総合し、暑さを評価した指数

6.熱中症対策の効果を実証し施工現場に共有
当社は実証実験を行い、その効果が認められた熱中症対策を施工現場の管理者や協力会社に共有していますが、その1つがウインドウエアコンです。戸建住宅の施工現場では休憩所を設置できないことが多く、夏場は高温の現場内で作業を続ける時間が長くなります。そこで、状況に応じて窓サッシに取り付けられるウインドウエアコンの導入も推奨しています。
2024年7月から8月にかけて実施した実証実験では、2階建ての戸建住宅現場の1階と2階の腰窓に、それぞれ1台ずつウインドウエアコンを設置し、稼働させた期間と稼働しない期間を比較しました。その結果、1階と2階のWBGTを平均2℃低下させる効果が確認できました。
熱中症対策を強化することで、従業員が安全で健康に働ける職場環境を実現するとともに、従業員の働く意欲と生産性の向上にも貢献します。熱中症を含めた施工現場での災害を未然に防げるように、引き続き取り組みを進めていきます。
- カテゴリ:
- タグ: