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連載:5分でわかる!サステナブルニュース 気になる疑問、調べてみた 【GNPS2026レポート】世界が注目した熊本サミット。大和ハウス工業が示した「自然と共生するまちづくり」

連載:5分でわかる!サステナブルニュース

【GNPS2026レポート】世界が注目した熊本サミット。大和ハウス工業が示した「自然と共生するまちづくり」

2026.8.30

    2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震により、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。現在もなお、多くの方々が避難生活を余儀なくされ、地域の復旧・復興に向けた取り組みが続いています。一日も早い生活基盤の回復と、皆さまの安寧を心よりお祈り申し上げます。

    このたびご報告する「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)」は、地震発生の約2週間前にあたる7月14・15日の2日間、熊本市の熊本城ホールで開催されました。大和ハウス工業も参加し、自然共生に向けた各地の取り組みや議論が交わされたばかりの会場は、その後の地震により一時休館を余儀なくされましたが、施設の安全確認を経て現在は営業を再開しています。

    現地で交わされた議論やそこに込められた思いを風化させることなく、少しでも多くの方に届けたいという思いから、本レポートを掲載させていただきます。

    ※取材は開催当日に会場にて実施いたしました。

    2026年7月14日・15日の2日間、熊本市の熊本城ホールで「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)」が開催されました。企業や国際機関などで構成する国際的な連携組織「ネイチャーポジティブ・イニシアティブ(NPI)」と国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)が主催するこのサミットは、2024年のオーストラリア・シドニーに続く第2回目で、アジアでは初の開催です。

    環境省・農林水産省・国土交通省も共催に名を連ね、27の国や地域から企業、自治体関係者など3,000人以上が集まりました。最終日の15日には、参加組織の合意のもと「熊本宣言」が採択され、世界に向けたネイチャーポジティブ実現への決意が発信されました。

    大和ハウス工業は、このサミットにプラチナパートナーとして参加しました。ネイチャーポジティブの最前線では何が話し合われたのでしょうか。レポート形式でご紹介していきます。

    「解決策は私たちの手の中に」。産学官の連携が始まる

    ネイチャーポジティブとは、日本語で「自然再興」といい、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指す、国際的な目標です。

    大和ハウス工業でも環境における重点テーマとして取り組みを進めており、近年は多くの企業がその実現に向けて動き始めています。開会式には高円宮妃久子さまが出席されたことも、今回のサミットの存在感を物語っています。

    サミットの基調講演で、NPI主宰のマルコ・ランベルティーニ氏は、ネイチャーポジティブは企業の競争力や事業価値の向上につながると強調するとともに、実践を加速するには科学的で実用的な指標による「測定」が重要だと訴えました。

    開催地・熊本市の大西一史市長は同市の水道水が全量地下水でまかなわれていることを紹介し、サントリーホールディングスの浅木純常務執行役員サステナビリティ経営推進本部長は「使用する天然水の2倍の地下水を涵養(かんよう)すべく活動している」と語りました。

    今年10月にはアルメニア・エレバンで生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)が開かれ、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組の進捗が初めて本格的に検証されます。各国の取り組みはもちろん、その実現を支える企業の行動にも大きな注目が集まります。

    「理念を語る段階から、誰が何をどこまで実行したのかを問う段階へ」——熊本の地から発信された熊本宣言は、その転換点における民間セクターの決意を世界に向けて示したものとなりました。

    水素焙煎コーヒーから藻場造成まで。「NATURE TECH!」に集まった最前線

    メインホールでは、産学官の各分野から集まった登壇者たちが次々とセッションを展開しました。企業・大学・金融機関のトップが登壇し、各社が自社の取り組みをアピールしました。

    例えば、セブン&アイ・ホールディングス(HD)の伊藤順朗代表取締役会長は、3,000品目以上の商品に対しネイチャーポジティブの視点を盛り込んだ持続可能な調達に乗り出していることを発表。セブン-イレブンのコーヒーについては、焙煎に必要な熱源を天然ガスから水素に代替することで焙煎時のCO2排出ゼロを実現した「水素焙煎コーヒー」をアピールしました。「毎日2杯を水素焙煎コーヒーに切り替えたら、1年間で植樹1本分のCO2削減効果があるんですよ」というメッセージは、身近な行動と自然保全を結びつける具体例として印象的でした。

    同じ熊本城ホールの1階では、サミットと同時開催の展示イベント「NATURE TECH!」に約90の企業・関連団体が出展し、産学官にまたがりながら、衛星センシング・AI・IoTなど先端技術を活用した「ネイチャーテック」の最前線が並びました。

    ソニーセミコンダクタソリューションズグループは、半導体製造に不可欠な熊本の地下水を守るため、2003年から農地湛水による地下水涵養(かんよう)に取り組んできた実績を展示で紹介していました。

    他にも、東北大学が主導する環境DNA生物多様性観測ネットワーク「ANEMONE」も出展していました。バケツ一杯の水から生息する生物の種類と分布を把握できる環境DNA技術を活用し、全国をカバーする生態系ビッグデータをオープンデータとして提供しています。

    大和ハウス工業のブースでは、当社が取り組む5つのチャレンジを紹介。

    • ①地球が暑くならないようにする(脱炭素・省エネ住宅)
    • ②森を守りながら木を使う(Challenge ZERO Deforestation)
    • ③みどりをつなごう(在来種緑化・グリーンインフラ)
    • ④生きものの居場所を増やす(ビオトープ・都市の生態系)
    • ⑤1000年続く阿蘇の草原を守る(ASONOHARA)

    大和ハウスグループのネイチャーポジティブアクションの動画はこちら

    パネルの中央には二次元コードから動画にもつながる仕様になっており、ネイチャーテックの最先端技術が並ぶ会場のなかで、大和ハウス工業の展示は「建設・まちづくりを通じた自然との共生」という一貫したメッセージを発信しました。

    「開発による損失を上回る自然への貢献を」。大和ハウス工業が示した実装の姿

    グレーから「グリーン&ブルー」へ。インフラのあり方を問うパネルディスカッション

    サミット2日目の午後、メインホールには多くの聴衆が詰めかけました。テーマは「ランドスケープ・シースケープにおけるネイチャーポジティブインフラ」。日本を代表する各企業がどのようなネイチャーポジティブな取り組みを行っているのかを紹介するパネルディスカッションです。

    モデレーターを務めるヘレン・クローリー氏(Nature Positive Landscapes Initiative)の進行のもと、建設・不動産、商社、金融、保険という各セクターを代表するパネリストが登壇しました。大和ハウス工業からは、経営戦略本部サステナビリティ統括部の山下裕部長がマイクを握ります。

    在来種50%以上を使った緑化の取り組み

    山下さんはまず、大和ハウス工業が2010年にハウスメーカーとして初めて包括的な「生物多様性宣言」を公表したことに触れ、理念と行動指針を示しました。

    「住宅の建設には自然環境の改変が伴います。だからこそ、再生と循環は私たちの社会的使命だと認識しています」。

    続いて、2022年から本格始動した緑化の取り組みを紹介しました。COP15でネイチャーポジティブの反転が目標として定められたことを踏まえ、グループ共通の緑化指針として、顧客に対して植栽の在来種50%採用を提案していること、単なる装飾ではなく緑地の質にも配慮していることを説明しました。

    「日本の都市部では緑地が減少し、生態系ネットワークの分断が起きています。定量的な評価が欠かせません」。

    2022年から4年間で、生態系に配慮した緑化面積は100万m2を超えました。そして今年から改定した環境行動計画(EGP2029)では、2035年までに300万m2(2022年度からの累計)を目標に掲げています。

    2050年までに自然を回復させることは本当に可能なのか?

    登壇後、山下さんに詳しく話を聞きました。そもそも「緑化において在来種を50%以上採用する」という基準や効果はどのようなものなのでしょうか。

    「単に見た目の装飾的な緑だけではなく、地域の自然に配慮した種を植えるという緑地の質にも配慮した取り組みです。 やはり生き物は元々暮らしていたところが暮らしやすい。外来種を置くことで、在来の生き物が住みにくくなってしまった現状を鑑み、植栽のうちの半分以上を在来種にすることで、在来の生き物が暮らしやすい環境を取り戻そうというものです」。

    その効果は数多くの生物種のデータを保有するシンク・ネイチャーによる調査でも裏付けられています。在来種をまったく入れていない植栽と比較した時、生物多様性保全効果が約3倍であることが確認されています。

    2050年をめどにネットゲイン※1を目指す試算についても聞きました。

    「都市化がピークを迎えた1970年代から約50年の緑地の喪失部分を推計し、在来種50%以上の緑化に取り組むことによって、少しずつ回復に向かわせます。そして2050年の手前には生物多様性の回復効果がノー・ネット・ロス※2の転換点を超える、つまり事業とネイチャーポジティブが両立する状態を目指しています」。

    ※1 自然環境や生物多様性を開発以前よりも良い状態にすること。
    ※2 開発などによって失われる自然環境や生物多様性の価値を、別の場所での保護や再生によって同等以上に補い、全体としての損失をゼロに保つという環境政策の原則。

    ビオトープから阿蘇の草原まで。広がる「自然に優しいインフラ」

    取り組みは数字だけにとどまりません。物流施設ではビオトープを整備し、ホタルやトンボなどの水生昆虫を呼び込むエリアを設けています。

    また、熊本県阿蘇市で開発した環境共生型住宅地「ASONOHARA-あそのはら-」では、国立公園内の草原景観を保全しながら、地域住民とともに草原のモニタリングや堆肥づくり、インセクトハウス「BEE HOTEL」の設置などに取り組んでいます。「昔いた小さなカヤネズミがまた帰ってきた」と驚く地域の方の声も聞かれるようになりました。

    こうした取り組みを業界全体に広げるため、大和ハウス工業は現在、他社と協働でネイチャーテックを用いた定量評価の仕組みづくりも進めています。

    ネイチャーポジティブな未来への決意、「熊本宣言」は未来への道しるべ

    2日間のサミットの集大成として、閉会式では「ネイチャーポジティブな未来に向けた熊本の決意」(通称:熊本宣言)が発表されました。

    熊本宣言は、「昆明・モントリオール世界生物多様性枠組(KMGBF)」の使命に沿い、2020年を基準に2030年までに自然の損失を食い止め、その傾向を逆転させ、2050年までに完全な回復を達成するという目標に向け、政府・企業・金融機関を結びつける「社会全体を巻き込んだアプローチ」の必要性を訴えています。

    さらに、自然と人間活動の調和を重視する日本の里山モデルを「公正な移行(Just Transition)」の具体例として強調し、都市部、企業、農業コミュニティの連携による地域協働の重要性を記しました。

    「人々にポジティブな未来を実現する唯一の道は、ネイチャーポジティブな未来を築くことです」

    大和ハウス工業にとって、この熊本宣言への署名は単なるシンボルではありません。グループ共通の緑化コンセプト「みどりをつなごう!」に代表される現場の取り組みを積み重ねながら、業界・社会全体を巻き込んでネイチャーポジティブを実装していく。その覚悟を、熊本の地で世界に向けて示した2日間となりました。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業は「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)」にプラチナパートナーとして参加しました。

    GLOBAL NATURE POSITIVE SUMMIT 2026

    詳細を見る

    ネイチャーポジティブ実現への取り組みはこちらよりご覧ください。 「在来種を採用した緑化活動による都市の生物多様性保全効果が未実施時の3倍であることを確認」

    在来種を採用した緑化活動による都市の生物多様性保全効果が未実施時の3倍であることを確認

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