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Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2026.6.29
静岡県浜松市で13代、300年以上にわたって農業を営む「京丸園」の代表取締役・鈴木厚志さん。障がいのある人たちや高齢者との協働を通じた「ユニバーサル農業」を実践・研究し、約30年で売上・従業員数ともに10倍の成長を実現しました。
鈴木さんが目指すのは、どんな人でも安心して、稼ぎながら働ける環境づくりだと言います。福祉の現場、超高齢社会へ一石を投じる農園の挑戦とは?
京丸園には、土耕栽培の「土耕部」、水耕栽培の「水耕部」に加えて「心耕部(しんこうぶ)」という部署がありますね。どういう部署なのでしょうか。
ここは何かを生産する部署ではなく、障がいのある人たちが所属し、彼らが安心して長く働けるようにするための仕組みをつくる部署です。
京丸園の主力商品であるミニ青梗菜。
具体的にどういったことを行っているのでしょう。
うちの心耕部に入ると、まず「あなたはどういう働き方をしたいですか」という質問から始まるんです。普通の雇用は「この仕事をやってください」から始まりますよね。でも心耕部は逆で、既存の仕組みに当てはめるんじゃなくて、あなたに合わせて環境やプランをつくりますよ、という考え方です。
本人が言葉で答えられない場合は、支援者や親御さんから聞き取ります。どれくらいの時間働けるか、人がいる環境の方がいいか、一人で集中できる方がいいか。そうして集めた情報をもとに、その人が働きやすいプログラムを農園側が設計します。
芽ねぎにつく小さい虫を取る装置。移動させながら虫を吸い取っていきます。「仕事って早くすればいいと思うでしょう。そうではなくて、この仕事は“ゆっくり”作業することで虫がちゃんと取れる。ゆっくりが褒められるんです」(鈴木さん)。足に麻痺がある方や、高齢者の方が活躍している仕事だと言います。
能力と給料を一致させるために最低賃金の除外申請という制度も活用しています。労働基準監督署の監督官が農園を訪れ、国が能力判定を行います。
片方の手が動かない人に、その手を動かせと言っても動かない。だとしたら、動かない手でどういう仕事をつくればいいか、という発想です。企業側の過度な期待やリスクを取り除けば、採用を断る理由がなくなりますよね。
心耕部では、最長勤続年数は27年。30年前に最初にうちに来てくれた障がい者の方が、今も農園で働き続けてくれています。
昨今、転職やキャリアアップという考え方が当たり前になりましたが、障がいのある方たちが求めているのは安心して長く働ける環境ですよね。
まさにそうなんです。だから農業とも相性が良くて。そもそも農業は途絶えてはいけない産業なんですね。ブーム的に浮き沈みがあっていいものではありません。また、長く経験を積み重ねることに価値が置かれるため、終身雇用とも相性がいい。一人の人に長く働いてほしいのは、農業側も求めていることなんです。
障がい者雇用に注目が集まりがちですが、京丸園は下は20歳から、上は90歳の方までが働いていると聞きました。
私たちがつくりたかったのは、“障がい者雇用をする農園”ではありません。彼らの力を借りて、高齢者も含めた多様な人たちが活躍できる場所をつくりたかったんです。
90歳の社員はうちの親父ですが、今も田んぼの担当として現役で働き、80代のスタッフも4人います。半日働いて月10万円ほどを稼いでいます。
2050年には高齢化率が40%近くになると言われています。70歳で会社を引退した後、そこから30年をどう生きるかを迷う人は少なくありません。でも、70歳からの居場所として地域の農園があって、役割があって、手伝ってくださいよって言われたら、生きていけるよねって思うんです。
「老後に2,000万円」という話が世間を賑わせる中、70歳から農業の現場に来てくれれば年金と合わせて最期まで生きていける。そんな未来が見えてくれば、闇雲に将来や老後を不安に思わず、若いうちにしかできないことにお金を使えるようになると思うんですよね。
それに、人口減少・少子高齢化が進む中で、福祉にお世話にならずに生涯働ける高齢者が増えたら、日本の財政にとってもいいことです。
多様な年齢層がいることは、組織の安定にもつながります。韓国・台湾からは年間100人規模の研究者が視察に訪れるようになりました。いずれも日本と同様に少子高齢化・人口減少・過疎化が進む国々で、ユニバーサル農業を超高齢社会のモデルケースとして研究しています。海外的な広がりは、私の老後の楽しみですね。
鈴木さんにとって、ユニバーサル農業の最終的なゴールはどこにあるのでしょうか。
豊かに最期を終われるか、ということだと思っています。自分自身もそうありたいし、農業がその場所になれるんじゃないかと。
農業は今や、日本に唯一残された「システム化されていない産業」です。工場はオートメーション化され、IT企業はソフトウェアの仕組みの中で人が動く。農業だけが、経験と勘で成り立っているがゆえに、“周回遅れ”とも揶揄されますが、人に合わせて仕事をつくり出すことができる。
皆さんの周りの仕事の中で、人に合わせて仕事をつくり出せる業種って、ほかにありますか?
確かにあまり思い浮かばないです……。
農業だけだと思うんですよ。だから農業は、これから新しくデザインができる。地域の農園がホスピスのような役割を担う未来を描いてるんです。生産の現場としてではなく、人が集まり、役割を持ち、豊かに時間を過ごせる場所になってほしい。
自分の最期は、みかんの木の下に椅子を置いて、何十年後かに、そこで眠るように最期を迎えたいと思っていて。最近、農園にみかんの木を植えたんですよ(笑)。
鈴木さんにとって、「サステナブル」とはどういう意味を持つのでしょうか。
多様な人たちがいてくれることで、組織に安心感が出てくる。それが長く続くということにつながっていくような気がしています。だから私にとってのサステナブルは「安心」という言葉が一番近いかもしれないですね。

京丸園株式会社 代表取締役。静岡県浜松市生まれ。約300年間続く農家の13代目。障がいのある人たちとの協働を通じた「ユニバーサル農業」を実践・研究し、約30年かけて売上・従業員数ともに10倍の成長を実現。浜松市ユニバーサル農業研究会の中心メンバーとして、農業界への普及活動にも取り組む。韓国・台湾・インドなど海外からの視察も多数受け入れている。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

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