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連載:未来の旅人 お得を選ぶだけで、フードロス削減。デンマーク発「1億ユーザー」のメガアプリ、日本上陸の舞台裏

連載:未来の旅人

お得を選ぶだけで、フードロス削減。デンマーク発「1億ユーザー」のメガアプリ、日本上陸の舞台裏

2026.9.30

    閉店間際のパン屋さんやお惣菜屋さんの前を通ると、まだたくさんの商品が並んでいるのを目にすることがあります。「あれ、全部捨てちゃうの?」そう思ったことは、一度や二度ではないはずです。

    日本で廃棄される食品は、年間約461万トン。これは、全国民が毎日おにぎり1個を捨てているのと同じ量にあたります。経済損失は年間約4兆円、一世帯あたりで約6.5万円にもおよびます。

    まだおいしく食べられるものを捨てずに救う方法はないか……。そこで注目を集めているのが、売れ残りを割引価格で販売するデンマーク発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go」です。2026年1月、アジア初の進出先として日本にも上陸し、早くも国内の登録ユーザー数は60万人を突破しています。

    世界中のフードロス問題の解決に挑む「Too Good To Go」とは、いったいどんなサービスなのでしょうか。Too Good To Go Japan代表の大尾嘉宏人さんに、多くの人に支持されてきた理由を伺いました。

    すでに世界では大人気。登録ユーザー1億2000万人 

    「Too Good To Go」では、売れ残る可能性のある食品を、消費者が半額以下※の価格で購入できます。

    ※ 海外では定価の⅓。

    写真提供:Too Good To Go Japan

    毎日必ず出る余剰食品を、前日から予約販売する「スケジュール販売」と、売れ残り具合に応じて販売数を決める「都度販売」の2種類の販売方法があり、店舗側はお店の形態や都合に合わせて設定します。

    さらに、Too Good To Goらしさが表れているのが「サプライズバッグ」という売り方です。

    写真提供:Too Good To Go Japan

    「日によって、何が残るかはわからないし、残る量も違いますよね。なので、中身は店舗にお任せする『サプライズバッグ』という形で販売しています。その日残ったものを自由に組み合わせて販売できるので融通が利きやすく、お客さまは、何が入っているかわからないワクワク感が楽しめます。予約を開始した瞬間に、売り切れてしまう店舗もありますよ」。

    フードロスを確実に減らしながら、店側は少しでも売り上げを増やすことができ、さらにはお客さまはおいしいものをお得に手に入れることができます。

    「また、食品の廃棄に起因する温室効果ガスの排出量は、人為的排出量の約10%といわれています。フードロスという社会課題を入り口に、消費者、お店、地球の『三方よし』を体現するサービスなんです」。

    今や世界最大級のアプリの仲間入りを果たしており、2026年9月現在、登録ユーザー数は20カ国で1億2000万人に上ります。ヨーロッパ圏のApp Storeのフード/ドリンク部門でマクドナルドやUber Eatsをおさえて上位にランクインすることも。累計のフードロス削減効果は6億食分で、1秒間に4食分を救っている計算です。

    日本がアジア進出の最初の拠点だったわけ

    Too Good To Goは、2015年にデンマークで誕生しました。きっかけは、創業メンバーがホテルのビュッフェレストランで食事をしていたときに、大量の料理が捨てられているのを見たこと。食べ物をゴミにしないで済む方法はないかと思いを巡らす中で思いついたのが、このサービスでした。

    「Too Good To Goは、直訳すると『捨てるには良すぎる』。日本語の『もったいない』がこの言葉に近いですね」。

    実は、日本はフードロス削減の先進地です。2030年度までに2000年度比で半減(547万トン→273万トン)させるという事業系食品ロス削減目標を、2022年度に達成しています。SDGsの「2030年までに食品ロスを半減させる」という目標を、現時点では世界で唯一達成した国となっています。アジア進出の最初の拠点として日本が選ばれたのも、それが理由の一つでした。

    「理由は大きく3つあります。まずシンプルに、経済規模が大きいこと。食品小売や飲食店の数が圧倒的に多く、それだけロスも多いという試算がありました。2つめは、世界で唯一フードロス削減目標を達成していることからもわかるように、国や地方自治体、企業の意識が高く、フードロスにしっかり取り組んでいること。3つめは『もったいない精神』や近江商人の『三方よし』という日本の価値観が、Too Good To Goの価値観とフィットしていると考えたことです」。

    実際、2026年1月にローンチすると、最初の1週間で登録ユーザー数は約25万人に達するなど、想定をはるかに超える急速な伸びを見せました。

    サービス提供エリアは一都三県まで拡大、加盟店も着実に増えつつあります。個店だけではなく、クリスピー・クリーム・ドーナツ、ローソンやNewDaysといった有名チェーン店も多数参画しています。

    例えば、クリスピー・クリーム・ドーナツはテスト導入から1ヶ月で、約30%のフードロス削減を実現しました。NewDaysでは、パンを詰め合わせたサプライズバッグの消化率が99.6%と、ほぼ完売状態を維持しています。

    アプリのマップ上で、サプライズバッグを用意している店舗がわかります。

    フードロス削減を入り口にした、サプライチェーン改革

    「日本がフードロス削減先進地とはいえ、消費期限や賞味期限があるものを扱っている以上、ロスは絶対に出ます」と大尾嘉さん。「うちはほとんどロスはありません」という店舗に詳しく話を聞くと「夕方になると店頭に並べる商品数を抑えている」というケースが多いのだそう。

    「日本は特に、売り上げを抑えてでもフードロスを減らそうとする傾向があります。本来であれば、夕方以降はもっとも人通りが増える時間帯で、売り上げを増やすチャンスなんです。なので、残ってしまったものはToo Good To Goに出品して販売してください。だからこそ、安心して少し多めにつくってくださいとお伝えしています」。

    消費者側が必ず来店して受け取る仕組みのため、サプライズバッグごとに1組の来店が確約されるというマーケティング効果もあります。スーパーマーケットの「スーパーバリュー」では、来店した人の多くがそのほかの食品も「ついで買い」することがわかっています。

    Too Good To Go導入によって、フードロスだけでなく、販売機会の損失もなくしていく──。

    「つまり、Too Good To Goは食品のサプライチェーンへ伴走するソリューションであり、新しい仕組みなんです。実際に、導入後に売り上げが増えたという声を多くの加盟店からいただいています」。

    ヒットの背景は「無意識のサステナブル」

    どうして日本でこれほど注目を集めるに至ったのでしょうか。大尾嘉さんは「これが最大の特徴なのですが、サステナブルを謳っていないから」だと説明します。

    「カギとなるのは『無意識のサステナブル』です。すべての人がサステナブルなことをしようと思わなくていいんですよね。半額以下で買えるというお得感と、何が入っているんだろうというワクワク感を楽しみながらサービスを利用した結果、温室効果ガスの排出量が削減できる。日常の生活の中で、ちょっとだけ環境にいいことをしたと感じられる。この『ちょっとだけ』という感覚が大切だと思っています」。

    写真提供:Too Good To Go Japan

    大尾嘉さんは「サステナブルは、みんなが思っているほど大変なことではない」と続けます。

    「家で、冷蔵庫の食材を余らせないように気をつけるだけでもフードロスは減らせますよね。それと同じで、サステナブルは大それたことでも大変なことでもなく、ちょっと意識するだけで大きなベネフィットを環境にもたらしてくれます。『お得だから』でいいんです。日常の中でToo Good To Goを通じて、一人ひとりがちょっとだけサステナブルな行動をする。きっといつか必ず大きな力になるはずです」。

    PROFILE

    大尾嘉 宏人

    大尾嘉 宏人Hiroto Ooka

    1994年に凸版印刷(現・TOPPANホールディングス)に入社。1999年に米国西海岸に駐在し、戦略的投資および提携案件を担当。2007年に楽天(現・楽天グループ)に転職。国内外の子会社におけるPMIをはじめ、楽天グループ執行役員や楽天モバイル常務執行役員を歴任。2020年にはアゴダに参画し、日本法人の代表取締役および北アジア地区統括アソシエイト・バイスプレジデントとして、日本・韓国の事業を管轄。2025年7月にToo Good To Go Japanの代表取締役に就任し、「Too Good To Go」の日本におけるサービス立ち上げと事業推進をリードしている。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業は、持続可能な調達や環境負荷低減を目指し、取引先との共創によるサプライチェーン全体の取り組みを強化しています。

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