大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-22

サプライチェーン

秋葉淳一のトークセッション 「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」Ⅲ:これまでにないビジネスを提供するフレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤大和

公開日:2018/02/28

大和ハウス工業の新たな「物流事業」への取り組みを具体化する事業体として、株式会社ダイワロジテック(以下、ダイワロジテック)が設立されました。物流センターのシステム開発を担う、秋葉淳一代表取締役社長率いるフレームワークスを中心とするダイワロジテックの新たなメンバーとして、株式会社アッカ・インターナショナル(以下、アッカ社)が加わりました。

次世代のロジスティクスサービスを実現するために、何が必要なのか。
フレームワークスの秋葉淳一氏がホスト役となり、株式会社アッカ・インターナショナル 代表取締役社長 加藤大和氏をゲストにお迎えし、これからの物流のありかた、物流が経営をリードするためにやらなければならないことを語り合っていただきました。

Ⅲ:これまでにないビジネスを提供する

すでに加藤社長の頭の中には、すでにやりたいビジネスが見えているのではないですか。

加藤:はい、こうしたらいいのに、といったことはたくさんあります。たとえば、インターネットの世界だとサーバーをホスティングするというビジネスあります。そのサーバーをホスティングしている会社にとっては、あまりトラフィックがない方がいいわけです。大量のアクセスがあると、負荷がかかるし、もっと強固なものにしなければいけなかったりします。eコマースのホスティングだと特にそうで、サーバー会社からすると、なるべくお客様は来ないでほしいわけです。
しかし、サーバーを借りているメーカー、売り主側からすれば、もっと多くの人にアクセスしたいわけです。同じビジネスの中にいるパートナーなのに、向いている方向が全然違うのです。なるべく来るなという人と、ぜひ来てくださいという人。なぜ違うのかというと、彼らの定められているゴールが、同じプロジェクトの中で違うからです。

秋葉:アッカ・インターナショナルのビジネスモデルも、まさにそこからの発想ですよね。

加藤:建築の世界であれば、建物を建ててテナントを募集する。入居が決まって10年間の契約を結ぶことができれば、その10年間は、何もしなくてもいいわけです。お客様が物件を選ぶときは、家賃が安い、立地がいい、人が集まるなどいろいろなことを考えながら、どこでその10年を決めようかと考えます。しかし、そうしたビジネスだと、その範囲の中でしかビジネスをすることができません。
でも、もっといろいろなことができるはずです。たとえば、その10年の間に、入ってもらっただけでなく、そこで荷主がやるビジネス自体を伸ばしてあげる機能があったりすれば、まったく違ってきます。
伸ばすことによって家賃が上がる、もしくは伸ばせなかったら家賃が下がる。そういう面白いプランがあったとしたら、荷主はどのような選択をするでしょうか。収益が上がるのであれば、家賃が高くても望んで入るはずです。
自分たちのビジネスモデルに共感していただくことができれば、リスクもリターンも共有し、自分たちはフロア提供者ではなく、事業をサポートすることも可能になるのではないでしょうか。たまたま、今は建物というかたちでサポートしますが、我々にできる最大限のことはこういうかたちですと提案し、実施することができれば、それこそハートのあるビジネスモデルだと思うんです。

加藤:ですから、さっき言ったような、サーバーホスティングとeコマースの売り主のような関係であってはいけないと思うんです。
仮の話ですが、固定概念を一回壊して、小規模でもいいので、坪単価通常4,000円で売っているというところを、もしかしたら3,000円になってしまうかもしれいけど、8,000円になる可能性もあると。そこはロジテックがリスクを持つのでやらせてほしい、というようなことができるわけです。それも、ものすごく大規模に行う。これからつくる物流施設が全部そうなっていってもいいぐらいの気持ちでいます。
むしろ市場のほうが、シビアにこうしたことを望んでいるのではないかと思います。こうした市場に対して、スピーディーにアイデアを出していきながら、壁を破っていきたいと思います。正論ですから。(笑)
こうしたことができるのが、ダイワロジテックではないかと思っています。

まさしく、物流をコストセンターからバリューアップできる、バリューチェーンの一環にしたいという話だと思います。そういう意味では、ダイワロジテックには、ビジネスのバリューアップができると期待が集まりそうです。

秋葉:ぜったいにできると思います。何よりも大きな価値として提供できるのが、時間価値です。僕らにまずできるのは、そこだと思うのです。時間価値というのは、配送の時間価値だけではなく、タッチ回数もそうだし、いろんなところでの時間があります。それを意外とおざなりに見ているような気がします。これまでの時間価値は、ほとんどがオーダーしてから届くまで、当日配送だとか当日着だとか、最後の部分だけの話でした。
さっき加藤さんも言いましたが、データが溜まると、見込み生産の精度がものすごく上がるので、ギリギリまで引っ張ってものをつくり始めることができるわけです。なおかつ精度が高ければ、サプライチェーントータルの時間が非常に短くなります。早くものをつくると、それを保管しておく場所も必要だというようなことなど、どんどん起こりますから、時間を縮めるということは、ものすごくコストに効いてくるんです。時間を無駄に使うことが最大のコストなので、無駄なコストが間違いなくなくなります。そういう意味での価値をぜったいに出せると思います。
当然、一つひとつオペレーションを分解して、こういう風にしたほうがいいということの組み合わせもありますが、その結果のデータをどうやってフィードバックするかによって、ものすごく変わると思うんです。

加藤:今のお話と似ているのが、ダイナミックプライシングです。分かりやすく言うと、白・黒・赤という3つの商品があって、白と黒はベーシックだからよく売れる、赤は差し色だからあまり売れないとします。でも、白と黒を売るために赤が必要です。結果、最終的に白と黒はほとんど在庫がなくなり、赤は大量に残っています。そして赤を売ろうとして「30%オフ」にした場合、すべて30%オフになるんです。メーカーからすると、赤を40%オフにして、むしろ白と黒は高くしてもいいんじゃないか、在庫があと1つずつしかないから、誰か買うかもしれないと思うわけです。そういう話です。

秋葉:それはハコブの佐々木社長が言っていますよね。ダイナミックプライシングにしたいと。

加藤:配送もそうです。明日届くのと、1ヵ月の間でどこかいい時に届けてくれればいいよというのでは、まったく価格は異なっていいわけです。倉庫もそうです。最初に入ってくれる人には、安くあるべきだと思います。最後に残っているときは、当然坪単価が高くなっているわけです。先に入った人と後に入る人の条件がほとんど一緒なのは、おかしな話です。相手のニーズによってこちらのプライシングも変えていくべきだし、需給のバランスによっても当然変えていくべきです。
ダイナミックプライシングというものを、もっとビジネスに取り入れるべきだと思います。我々フロアを提供する側もそうだし、買う側もそうです。そういったものがないと、やはり10年後どうしましょうという話になってきます。10年先なんて誰もわかりません。たとえば信用調査で、入るときにこの企業は大丈夫だろうかというのは、今のことを見ているわけで10年先のことは見ていないわけです。ダイナミックにいろいろな状況が変わる、ビジネスが変わる、お客様も変わっていく中で、10年先を本当の意味で見ていかない限り、それはちゃんとした契約ではないわけです。5年後にデフォルトしていたら、それでお客様がいなくなってしまいます。

秋葉:物流業界にはなかった発想ですそれは、先日、佐々木社長も言っていました。「ダイナミックに変えたらいいじゃないか。しかし、普通に季節に関係なくタリフ(※)が出てくる。そうじゃないですよね」と。

※…運賃表、料金表などを意味する tariff

今までにロジスティクスにはなかった発想でビジネスをされていくことに、ものすごく期待があります。他に、この辺はぜったいに変わっていくということはありますか。

秋葉:やはり、労働集約というものが事業のかたちではなくなることだけは、はっきりしていると思います。はっきりはしているけど、それが5年後なのか、10年後なのか、20年後なのか、みんな分からないから実際どうしていいのか迷っているのではないでしょうか。たとえば、30年後には自動運転になっていますよねと言うと、みんな、30年後だったらなっていますねと言うんです。みんな30年後をすごく遠いものと感じていますが、30年後というのは、僕らの子ども世代が僕らくらいの年になる頃です。ということは、子どもたちが最前線で仕事をしている頃が30年後なんです。そのときには労働集約の事業はなくなっていると、僕は言っているのです。みんなもそれに同意しています。借金のつけ回しではありませんが、自分たちが現役の時だけダラダラ過ごしてやっていればいいのかというと、それは明らかに違うと思います。そのための準備を僕らがしないのは、それはずるいですよね。物流だけではなくすべてが変わります。

既成概念を壊していかなければいけないのかもしれないですね。そうすると、今までのビジネスもかなり変えないといけないところも出てくるでしょうね。

加藤:たとえば私たちが「こうやります」と言ったとすると、おそらくみんな、「そうだ!」と言うと思います。しかし、周囲が「そうだ」と言うことをやっても、たぶんだめなんです。みんなが「えー!」とか、「それはぜったいに失敗するよ」と言うことしか、大きく成功しないと思っています。みんなが「そうだ」と言うことは無難でしかありません。
アッカが、物流センターで「ささげ」として撮影を始めたときは、「いいかもしれないけどもう大手がいるし、そこまで通信販売は伸びないと思うし、誰が洋服をインターネットで買うの?」「撮影をスピーディーにやるとか、物流と一緒にくっつけるとか、言っていることはわかるけどいらないと思う」などと言われていました。そういうタイミングでスタートしているからこそ、今、この業界に参入してくる人はほとんどいないわけです。入れないのです。1つのスタジオから始め、200スタジオまで大きくしてきましたから、いきなり200スタジオを回すことはできません。
おそらく、今のダイワロジテックもそういうポジションにいて、みんなが「えー!」と思うようなことを今やるから、たぶん5年後は誰もやっていないし、追いつけないところまで行くことができるのではないかと思います。

秋葉:すでに「えー!」と言われています。だから面白いですよ。今、「えー!」と言われるくらいなので、これをもうちょっと頑張ると、もっと大きな「えー!!!」と言われます。でもそのうちに、「えー」はなくなります。あいつらがやっていることは正解だった、と。

ダイワロジテックという会社は、非常に刺激的で未来を感じる、イノベーションが生まれそうな組織だと思えます。

秋葉:大和ハウス工業の経営理念が何よりも物語っています。

「大いなる和をもって、社会に貢献する事業を追求する」

世の中の為になれ、お客様の為になれ、それをスピーディーにやれということは、創業時代からがずっと言われてきたことです。やっぱり、結局そこだなと。そこの理念を樋口会長もずっと言われていて、無意識に、私の身体のこの辺まで浸っているのだと思います。だから、新しいことにチャレンジするときに、僕らがちゃんと本気で考えているのであれば、やれと言ってくれる土壌がある。それがすごく大きいと思いますよね。

ダイワロジテックのビジネスは何から始まりそうですか?

加藤:非常に大きな動きがあります。千葉ニュータウンの物流センターに、スポーツ用品の大手小売り企業が入り、そこには一括でダイワロジテックが入る計画があります。

秋葉:この小売企業が、業務拡大のために現在の物流センターを、eコマース専用センターに変えるのですが、ここにアッカが入る予定です。
そして、新規に借りる物流センターを店舗用のDC(※)のセンターにします。ここは店舗用の物流センターにします。ここのオペレーションはDaiwa GF Logi(※)です。それは、今TC(※)部分とDC部分をDaiwa GF Logiがやっているからなんですが、この全体設計をダイワロジテックでやってくれとお客様から依頼されています。契約窓口を1本化してくれと、明確に言われています。ダイワロジテック、大和ハウスグループと戦略的パートナーになってほしいと。

※DC:ディストリビューションセンター、保管型の倉庫または物流センター

※TC:トランスファーセンター、通過型の倉庫または物流センター

※Daiwa GF Logi:アパレル雑貨・EC事業者向けの各種物流サービスの提供を行う大和ハウス工業のグループ会社

加藤:ダイワロジテックで一本化されます。たまたまTCとBtoBをDaiwa GF Logiでやっていて、うちがECをやっていたから実現したのですが、第1号案件としては本当にもったいないぐらいのお話です。それを大和ハウス工業の物流センターでやるのは当たり前ですが、他社の物流センターでやるというのが画期的なことだと思います。

秋葉:お互いにそう思っていますよね。相手の物流センターからしてみたら、大和ハウス工業とやるのかと。

加藤:自分たちのフロアでやるのはさほど難しいことではないと思いますが、他社のセンターでやって成立させるのが、本当のサービスだと思います。だから社運をかけています。

秋葉:加藤さんが言うとおりです。我々は10兆円を目指しているのです。新しい事業構造に取り組むわけですから、そこにこだわっていてもしょうがないのです。新しいビジネスに取り組むわけですから。

加藤:だから、これはぜったいに成功させなければいけません。彼らの期待するところは本当に高いレベルにあります。我々も、ロジテックというより大和ハウスグループが一丸となって、これを成功させることによって最高のスタートが切れると思うんです。

秋葉:そういう意味では、アッカ・インターナショナルにとっても、今までまったく届かなかったような仕事に取り組めます。

加藤:そうなんです。たとえばある海外アパレルメーカーは全部うちのシステムを使っていて、それで在庫を一元化しています。我々は、フィジカルな在庫は一箇所に集め、ワンオペレーションをすべきだと言っていますので、本国からのチームが来て、このシステムは素晴らしい、どんどんやっていこうとプロジェクトを進めます。 そして、全国4カ所に分かれている物流センターを1カ所に集めるためにコンペをやろうとするわけです。
そのとき、我々が建てますということを、アッカから提案できるようになります。今まではどんなに頑張ってもできない話だったから、そこはやっぱりグループの強さです。どのような課題をいただいても対応できます。

秋葉:この第一号案件は、本当に楽しみであり、やりがいのあるビジネスです。

加藤:ぜったいに成功させないといけない案件ですね。看板が大きいだけに、プロジェクトがプロジェクトなだけに、システムの人員であったり、物流業務のリカバリーだったり、やることも多く、本当に慎重に進める必要があります。この仕事がうまくできれば、この先ある程度できると思います。

ダイワロジテックのこれからのビジネスに、本当に期待しております。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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