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土地活用ラボ for Biz

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コラム No.27-25

サプライチェーン

秋葉淳一のロジスティックコラム(3) ロジスティクスにおいて、人にしかできないこととは何か

公開日:2018/05/31

人手不足をどう解決するか

今もっとも大きな問題は、人手不足であるということです。人手不足をどう解決していくのか、どの企業のトップと話しても、共通の課題として話題に上ります。 人手不足という問題を解決しようとするとき、これまではすぐに、「ロボットを導入しよう」「マテハン機器を入れよう」という話になりがちでした。 しかし、機械だけでは解決できない問題も多々あります。人がやることでよかったこともたくさんあるからです。 たとえば、人は考えてくれますし、改善してくれます。トータルの人工もある程度はコントロールしてくれます。コストコントロールをすることができて、中途半端な適当な指示でも、スタッフの人たちは仕事をしてくれていました。それが人海戦術の良かったところです。「今日、ちょっと頑張って残業してくれませんか」とか、「今日は物流多いから、みんな頑張ってね」と言ったら、単位時間あたりの生産性が上がる。そんなことは人間だからこそ起こることです。

人と機械の違い

ロボットやマテハンを使うということは、資産を買う、もしくはリースするということなので、その瞬間にコストをコントロールすることができなくなります。人間には「ちょっと頑張って」といえば頑張ってくれますが、機械は最大能力しか絶対に出ないわけです。ということは、物流波動を考慮し、ほぼ最大の生産能力をロボットや機械に求めて購入するか、リースするということになりますので、閑散期には損益分岐点を下回るわけです。人間であればそのときに働く時間をコントロールできましたが、機械ではそれができなくなるというわけです。
また、人であれば、それほど厳密な指示は必要ありませんでした。経験もあり、前後関係も考慮し、自ら工夫して行うことができました。伝票処理においても、手書きの汚い字でも人間だと読めてしまいますし、枠からはみ出ていても大丈夫です。
しかし、ロボットやマテハン機器にきちんと処理させようと思ったら、きちんとした指示をコンピューター間で出さなければなりませんし、そもそもそういうシステムが必要です。指示の精度を上げようと思えば、すべての情報がきちんとデータ化されていることが必要になります。
人間にしかできないことは何かということを、経営者は改めて考えなければなりません。人間にしかできないから人間にしてもらっているのであって、その人たちには相応しい対価を払う必要があるのです。

Eコマースの返品問題

Eコマースというビジネスのなかで、「人か機械か」を考えた場合、「返品」というプロセス、機能を例にとってみます。インターネットで商品が売れ始めると、返品も増えてきます。
この返品という作業、非常に手間がかかる作業であり、ボトルネックにもなりかねないプロセスです。現場の人たちや物流のマネジメントをしている人たちはそこに気づいているのですが、気がついていない経営者は少なくありません。
これまでは店舗での販売が主流でした。店舗からの返品は、シーズンが終わったものが返ってくるので、ゆっくり処理することができました。シーズンジャンプするセンターに送ればいいので、とりあえずセンターには入れておけば格納は後でもよかったわけです。
しかも、お店から返ってくる物は、基本的にお店の人が見た物であり、偽物を箱に入れて返してくるようなことは基本的にはありませんし、一週間着たものを返してくることもありません。
インターネットでのビジネス(通信販売)ではまったく違います。返品という同じ言葉ですが、これまでとは違います。大きなコストがかかります。画像処理でできないかと考えたこともありましたが、非常に困難でした。当面の間は、人間が返品されてきた物をチェックするのが一番間違いありません。

返品をシェアリングで解決する

アパレルの通販を行っている荷主であれば、返品対応は非常に重要だと認識していますから、必ず機能として持とうとします。ただし、その作業を1社1社個別に行っていたのでは、非常にコストがかかってしまいます。
私たちは、この「返品対応」の機能を1か所に集めようと思っています。返品チェックのプロを置き、箱につめたり、運搬の指示をしたり、庫内を搬送したり、そうしたことは機械やロボットに行わせます。そうすれば、ある程度の会社がシェアすることは可能だと思います。
ヨーロッパの通販最大手ottoでは、ottoグループ全体の返品専用のセンターを持っています。古くから通販文化を持つヨーロッパでは、返品に対する業務を以前から取り組んでいました。ottoのセンターでは、返品された商品を再販可能にするまで60~90分で、90%近くを処理します。
日本でも、今後さらにEコマースが伸びていけば、ネット売上の上昇カーブより、返品率の上がり方のほうが、カーブの角度が高くなるでしょう。

物流センターの機能が変わる

こうした点を考えると、物流センターが持つ機能が明らかに変わってきており、人がやらなければならないこと、機械がやるべきことの定義、区分けも大きく変わろうとしています。
ダイワロジテックのアッカ・インターナショナルが担うフルフィルメント業務は、物流センターの中にスタジオがあり、カスタマーのコールセンターがあります。ロジスティクスからするとその中の機能ですが、物流から見ると付帯業務のようなもの、いわゆる物流業務ではないものが、物流センターの中にあるわけです。
もう少しロジスティクスの範囲を広げると、ユニクロの有明のセンターがそうです。マーチャンダイザーが入ったり、仮想店舗が入ったりしています。ZARAの本社に行けば、大きな敷地内に物流機能の建物があり、マーチャンダイザーが入っている建物があり、仮想店舗が入っている建物があるわけです。ロジスティクスに関わる機能や人々がそこに集まっている、という絵があります。

物流ビジネスの構造を変える

先日、ある大学が主催した、「高度ロジスティクス人材」についてのシンポジウムがあり、私もパネリストとして、高度なロジスティクス人材とはどういう人物像かという話をしました。 しかし、残念ながら、現在の多くの物流関連企業に、高度な人材が入る環境はほとんどありません。必要なことは、事業構造を変えることです。構造として、単に労働力のコストに利益の乗せるというやり方ではなく、これからの物流事業の価値をどうやって考えるか。設備等を入れてもきちんと利益が出せる構造をどうやって考えるかです。システム化を行う、データを活用して無駄な動きをしない。手段ではなく戦略としてどうやってものを考えるか、ということに取り組まない限り、利益率はぜったいに上がりませんし、そこで働いてくれる人にきちんとした対価が払えません。そもそも事業構造を考えないといけないのです。 これは荷主側にもいえる話です。単に物流会社に対して「コストを下げろ」と言っているとすると、対応できる会社がなくなってしまうかもしれません。だからこそ、在庫の計画精度を上げるなど、荷主側も様々なことに取り組む必要があるのです。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)

株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。

単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。

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