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コラム No.53-71

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戦略的な地域活性化の取り組み(71)公民連携による国土強靭化の取り組み【33】物価上昇、人口減少によって、2024年の地域における社会システムはどう変わる?

公開日:2024/03/29

新型コロナウイルス感染拡大が収束した2023年以降、国民生活に平常が戻り、経済活動も活発になってきました。一方で、コロナ禍を経て、生活スタイルの変化も見られるところです。今回は、最近公表された2023年の動向を見ながら、新しい日常について考えてみます。

国内景気の動向を概観する

コロナ禍で人流や経済活動が大きく制限され、また国際紛争が激化したことなどから、国内景気の回復が危惧されていましたが、2023年にはインバウンド人口が急回復し、東京株式市場では株価の上昇が続き2024年に入って過去最高値を更新するなど、復調傾向が窺えます。一方で、急激な円安等の影響で、消費者物価の上昇も顕著となっており、市民生活面で景気回復が実感できないとの意見も多々聞かれます。
総務省が2024年1月19日に公表した「消費者物価指数」によれば、2023年夏季の猛暑や肥料・飼料の価格高騰による生鮮野菜果物や畜産物の価格上昇、円安による輸入原材料の高騰に起因する加工食品や日用消耗品の値上げが影響したことで、2023年12月の消費者物価(総合)は、前年同月比で2.8%の上昇となりました。
また、総務省が2024年2月6日に公表した「家計調査報告」によれば、2023年12月の勤労者世帯(二人以上の世帯)の実収入は前年同月比で実質7.2%の減少、消費支出は前年同月比で実質2.5%の減少となっており、生活者の実感を裏付けています。片や、2月27日公表の「消費者物価指数」では、2024年1月の前年同月比消費者物価(総合)上昇率は2.2%と改善しており、内容も財が2.1%、サービスが2.2%の上昇と、労働報酬を反映しやすいサービスが上回り、人件費と物価上昇とのバランスがとれた経済循環の兆しであることから、デフレ脱却を期待させる結果となっています。

約400万人が従事し、コロナ禍の行動制限で大きな打撃を受けた飲食サービス業に目を向けてみると、経済産業省が2023年11月に公表した「2023年上期飲食関連産業(フード・ビジネス・インデックス)」によれば、飲食店,飲食サービス業全体では2023年第2四半期に83.8ポイントまで回復(2015年を100とした指数)している一方、パブレストラン(居酒屋)は2023年第1四半期に75.0ポイントまで回復したものの、第2四半期には49.1ポイントに下落しています。この傾向が、リモートワーク等の新しい生活スタイルに起因するものなのか、値上げ等の別の要因からきているのかは、今後の動向をみる必要がありますが、コロナ禍後の新しい日常が産業に及ぼす影響の一つとして、注視すべき現象だと思います。

人口減少時代に必要な公民連携による社会インフラ整備

国内の経済活動に大きなインパクトを及ぼす要因は、人口減少問題ではないでしょうか。厚生労働省が2024年2月27日に発表した速報値によれば、2023年度の出生数は75万8631人と過去最少、死者数は159万503人と過去最多を更新しており、人口減少が予測を上回るペースで進んでいます。人口の減少は、特に地方部にとって、消費の低迷から商品・サービスの流通低下を招き地域経済の縮小につながり、主に中小企業においては、人手不足や担い手不足による生産性の低下を招きます。地方において中核小売店舗の撤退や、バスや鉄道等の公共交通機関の減便や路線廃止、あるいは空き家問題等が多々報道されていますが、これらも人口減少がもたらす社会現象の兆候であると考えられます。国も、少子化対策に本腰を入れ、人口減少時代に対応する省力化、DX化を推進するなど、国策を強化していますが、国民生活に欠かせない社会インフラを維持・再整備するためには、公設民営化など公民の連携を強化して行く必要性が、人口減少時代にはさらに求められるのではないでしょうか。

重要性を増す経済安全保障という視点

かつて、国家安全保障は国防力、軍事力が中心であり、経済活動は国際協調の中で、世界各国の需給関係により循環するという考え方が主流でした。しかし、コロナ禍や国際紛争の激化により工業資源・資材やエネルギー、医薬品、半導体、マスク等の日用品等の供給停滞を招いた経験から、国民生活の安心・安全、国内産業の安定的成長を維持するには、官民が協働した経済活動の最小限の統制が必要であることが認識されてきています。国は、2022年5月に「経済安全保障推進法」を策定し、急速に国際情勢が複雑化し、社会経済構造が変化する中で、国家・国民の安全を経済面から確保するための取り組みを強化・推進しています。2024年2月に熊本に完成したTSMC半導体工場の誘致、特例的な助成は、その顕著な例ではないかと思います。

その他にも、食糧問題、環境問題など、将来的に対応を迫られている社会課題が多々あります。企業や研究機関などでは、未利用地を活用した野菜工場のユニット化事業や、マグロ・ウナギの完全養殖事業など、社会課題解決型ビジネスを公民連携、あるいは異業種間連携により新産業として育成する取り組みが活発化しているところです。経済活動が回復しつつある中、これからの新しい日常を見定めることは簡単ではないと思いますが、将来に向かって社会システムが大きく変化していることは確かなようです。

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