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コラム No.53-35

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(35)エネルギーの地産地消が地域を活性化する

公開日:2021/03/19

地球温暖化対策として、CO2を排出しない再生可能エネルギー発電の普及が急務であるとされています。
これを受けて、エネルギーの地産地消で地域循環共生圏を形成し、地域活性化につなげる取り組みが各地で始まっています。

再生可能エネルギー発電の課題

電力の発電・売買の自由化、余剰電力の固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギー発電事業は急速に伸びており、特に地域における中小規模な事業者が増加していますが、いくつか課題も指摘されています。そのひとつが、固定価格買取制度(FIT)適用期間終了後の再生可能エネルギー電力(卒FIT)の問題です。2012年(太陽光電力は2009年)に始まったFIT制度は、再生可能エネルギー発電を普及させるために、一般電力より高い価格で買い取 ることが保証されていますが、適用期間は10年程度となっており、適用期間を過ぎると「卒FIT 電力」は市場価格で取引されることになり、事業者の収益を圧迫することは避けられません。また、もうひとつの課題は、太陽光発電や風力発電は、気象の影響を大きく受けやすく、特に太陽光発電では昼夜の発電量の変動が大きいため、安定的な電力供給が難しいことが挙げられます。 しかし一方で、今後導入が予定されるカーボン・プライシング(炭素税)を見据えて、再生可 能エネルギー電力の需要は、ますます高くなっています。
そもそも再生可能エネルギー電力には、電力そのものの価値と環境価値の2つの価値があるといわれています。今後は、その環境価値としての経済価値をどのように高めていくかが、持続可能な再生可能エネルギー発電事業を維持するポイントだと思います。
また、電力供給の安定化やトレーサビリティを管理するには、発電量や発電者を第三者が認証することが必要となるため、発電事業者にとってはコスト増加要素です。これに対しては、ブロックチェーン技術を活用して、発電記録を相互認証する手法が、実用化に向けて検討されています。
そのほか、過剰電力を用いて電気分解により水素を発生させ、都市ガスに混入するPower to Gasといった解決法が、限定的ではありますが検討されています。

地域内におけるエネルギーの地産地消

環境省によれば、現在、日本の化石燃料輸入額は年間約20兆円ともいわれ、市町村あたりでは年間平均約100億円がエネルギーコストとして地域外へ流出していることになります。このことから、再生可能エネルギー電力を地域で地産地消し、このエネルギーコストを地域内に循環させることにより、地域産業を振興させ、地域活性化につなげようとする産官学の取り組みが、各地で始まっています。また、脱炭素社会に向けた対策は、地域自治体や地域内企業にとっても急務となっており、地域循環共生圏形成に向けた動きを後押ししています。 その取り組みとしては、以下のようなものがあります。

  • (1)地域内で産官学によるコンソーシアムを立ち上げ、運営母体を組織する。
  • (2)住民に対して、自宅の屋根や公共施設、未利用地を活用した太陽光や風力による 再生可能エネルギー発電を奨励する。
  • (3)家庭や事業で消費されない余剰電力を運営母体が買い取り、地域内の住民や公的 施設、事業所に対して供給する。
  • (4)力の環境価値(証書)についても、地域内の事業所や公的施設に対して販売する。
  • (5)場合によって、住民の合意を得て、電力売買を通じて地域内活動資金を調達する。

たんたんエナジー株式会社(京都府福知山市)の取り組み事例

京都府福知山市では、2017年より産官学が連携して、地域新電力のあり方に関する検討を開始しました。その後、環境省の支援を得てフィージビリティスタディーを実施した後、検討に関わってきた個人10名が出資する形で、地域貢献型再生可能エネルギー事業を推進する運営母体として、2018年に「たんたんエナジー(株)」が設立されました。その背景として、RE100をはじめとする企業の脱炭素化の流れに乗り遅れると地域企業が先進的な企業との取引に不利になる恐れがあること、卒FIT電力が他地域に購入されるとその環境価値が地域外に流出すること、FIT価格の低下等から地域電源開発事業を下支えする必要がありFITに頼らない地域電源開発手法が求められたことなどの課題があったとされています。また、地域課題として、子育てや環境問題に取り組むNPOの資金が充分ではなく、支援が必要であったことも挙げられます。

福知山市では、エネルギーコストとして年間約200億円が地域外に流出しており、同社は、こ れを地域の中で循環させることを目指しています。
それにより、「ゼロ・カーボンシティ」、「RE100」「RE Action」といった取り組みに対応する自治体や企業の価値向上を図るとともに、地域住民が地球温暖化に対応する手段を提供するなど、地域循環共生圏形成に向けた「エネルギーと人のハブ機能」となって活動しています。具体的には、地域内の再生可能エネルギー発電を支援し、新電力事業者として電力や付随する環境価値の 地域内売買を行い、さらに、電力売買を通じて行政に頼らない地域活動をサポートする資金の 調達を推進しています。このような活動は、地域事情に合わせたさまざまな手法で、全国各地で 始められています。

2050年までに、必要なエネルギーを再生可能エネルギー100%とすることを掲げるRE100に参加する企業は、世界で約300社、日本では約50社に及んでおり、脱炭素社会へのシフトが急速に進んでいます。現状では、体力のある大企業が先行していますが、今後は、地域自治体や地域の中小企業にも波及することは必定です。地域の産官学連携によりゼロ・カーボンシティの実現に向けた活動が、地域活性化につながっていくことが期待されます。

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