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コラム No.53-39

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(39)公民連携による国土強靭化の取り組み【1】

公開日:2021/07/30

昨今、世界的にさまざまな分野で国土強靭化の取り組みが進んでいますが、国内においても、2013年12月に、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法(以下、国土強靭化基本法)」が公布・施行され、翌2014年6月に同法に基づく「国土強靭化基本計画」が閣議決定されました。そして5年ごとに見直されています。

国土強靭化の取り組み

「強靭」とは「強固」とは異なり、弾力性があり復元力(レジリエンス)を持つ強さということですが、国土強靭化は、あらゆる分野・部門に及んでおり、旧来の「社会」「環境」「経済」といった社会構造を変革する動きでもあります。国土強靭化基本法が制定された直接の背景は、2011年3月に発生した東日本大震災と福島原発事故がもたらした、甚大な被害をきっかけとした危機意識の高まりにあります。また、今後予測される南海トラフ地震、首都直下地震、火山の噴火等の大規模自然災害等に備えて、国や自治体、企業が連携した防災、減災、事業継続の確保が喫緊の社会課題となっており、国の対応が迫られています。
国土強靭化基本計画の基本的な考え方は、「強さとしなやかさ」を備えた国土、経済社会システムを平時から構築することにあり、(1)人命の保護が最大限図られること、(2)国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること、(3)国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化、(4)(災害からの)迅速な復旧復興を目指しています。しかし、近年の大規模災害を見ると、防災の観点のみならず、災害発生・被害の予測能力、対応能力の脆弱性が指摘される場面が、まだまだ多いかもしれません。

環境変化に対する強靭化

世界的にみると、気候変動による地球規模の災害の多発や水資源の枯渇など地表環境の急速な変化、また、爆発的な人口の増加による食糧問題等に対して、各国が協調して課題解決に取り組む動きが加速しています。
近年の台風や豪雨による災害、そして新型コロナウイルス感染拡大による大都市におけるパンデミックは、都市構造の在り方そのものを考え直す契機となっています。これまでは、災害を防ぐ強固な都市づくりが基本であったところですが、加えて、災害発生から早期に復旧可能な強靭さが求められているのではないでしょうか。
その一つの方向性が、大都市一極集中から地域分散型の環境づくりで、人や設備、情報、エネルギーを、地方に分散する動きが加速しています。これによって奇しくも、長年の課題であった地方創生、地域活性化が進む可能性が大きくなってきました。現実に、再生可能エネルギー発電事業の推進により、九州や東北、北海道などでは、発電設備用地としての需要が高まり、未利用地や耕作放棄地の再活用が進んでおり、エネルギー生産拠点として、自治体連携による新産業開発の動きも活発化してきています。

公共施設の老朽化問題

国土を強靭化する上で避けて通れないのが、公共施設の老朽化問題です。戦後の高度成長期に建設された道路や橋梁、トンネル等の公共施設は耐用年数を超えて老朽化しており、点検・補修についても、自治体の財源不足により十分に行われていない現実があるといわれています。2012年12月の中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故は、記憶に新しいところです。また、毎年発生する台風や豪雨によってもたらされる道路や側面の崩落、橋梁の流失、堤防の決壊などをみても、点検・補修の重要性が問われていると言えるでしょう。

国土交通省の「平成25年度 国土交通白書」によれば、1920年代から都市インフラの整備が始まった米国では、橋梁や道路の崩落が、1980年代には大きな問題となりました。その後、大規模な予算投入を経て、欠陥のある橋梁数は着実に減少を続けているようですが、日本では、約30年遅れで老朽化が進むとされており、アメリカの事例は先例とすべきでしょう。

図1:日米の橋粱の建設年の比較

国土交通省「平成25年度 国土交通白書」より

「平成25年度 国土交通白書」の中で、「今後、我が国においてもインフラの老朽化が本格化するが、その対応を進めるに当たっては、1980年代に『荒廃するアメリカ』と呼ばれる深刻なインフラ老朽化への対応に取り組んだ米国の経験を参考に、『荒廃する日本』となることを避けるべく、インフラの機能の維持について長期的かつ戦略的な取り組みみを行っていくことが重要である」と明記しています。
しかし一方で、日本では人口減少や少子高齢化が進んでおり、利用価値が低くなった公共施設も少なくありません。
そのことは、現存する公共施設を一律に点検・補修・更新する以前に、公的不動産(PRE)を公民が連携してリノベーションする時期にあることを意味しているとも言えます。都市一極集中の解消と地方分散化、地方都市におけるコンパクトシティ化などを、国土強靭化の一環として推進されることに期待したいと思います。

「国土強靭化」は公共事業分野の施策であると考えがちですが、国土を強靭化する活動は、公民が連携した社会全体の取り組みであるとも言えます。現在トレンドとなっているDX(デジタル・トランスフォメーション:社会課題を解決するIT活用)やスマートシティ/スーパーシティ構想も、国土強靭化のための情報基盤整備であり、SDGsも地球規模の強靭化を目指した目標を提示したものであるといえます。今後も、公共あるいは民間の資産価値・能力を柔軟に再編して、持続可能な社会を目指す取り組みに注目したいと思います。

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