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コラム No.53-40

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戦略的な地域活性化の取り組み(40)公民連携による国土強靭化の取り組み【2】

公開日:2021/08/31

国土を強靭化し、国家及び社会の重要な社会機能を維持し、人命を最大限保護するためには、社会インフラの保全が最も需要な課題であると言えます。国内の公共インフラは、1960年代に整備されたものが多く、供用から50~60年が経過しており、そのインフラストックは約800兆円に及ぶといわれています。国は2013年に「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、計画的なインフラの点検や補修、再構築やリノベーションを加速化させています。

老朽化する公共インフラ

国土交通省の資料によると、建設後50年以上経過する国内の公共インフラの割合は、以下のように予測されています。

インフラ種別 2018年3月 2023年3月 2033年3月
道路橋[(橋長2m以上の橋)約73万橋 約25% 約39% 約63%
トンネル[約1万1千本] 約20% 約27% 約42%
河川管理施設[(水門等)約1万施設] 約32% 約42% 約62%
下水道管渠[総延長約47万km] 約4% 約8% 約21%
港湾岸壁[約5千施設] 約17% 約32% 約58%

国土交通省 社会資本の老朽化対策情報ポータルサイト「インフラメンテナンス情報」より

これをみると、重要な公共インフラの大半が、今後10年程度で50年の長寿施設となり、早急な対応を迫られていることが分かります。公共インフラが老朽化する要因はいくつか指摘されていますが、その主なものは、(1)高度経済成長期には公共施設整備に多額の予算が投入されたものの、その後は少子高齢化対策などでほかの社会インフラに予算が回されたこと、(2)少子高齢化により公共施設等の点検整備に携わる労働力が不足していること、(3)公共施設の利用者減少によって、公共施設の保全原資であった利用料収入が減少したこと、(4)経年により建設当時の設備情報が未整備あるいは紛失してしまったこと、などが挙げられます。このように、時代の変遷による要因はあるものの、将来にわたって持続可能な国土の強靭化には、正に今、対策を強化すべきであることから、国も法整備を行い、対応を加速化させています。

公共インフラ老朽化への対策

現在、国は2021年より「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」として、おおむね15兆円程度の事業規模をめどに、(1)激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、(2)予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策、(3)国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進を進めています。この方針に沿って、各自治体は実施計画を策定し、地域状況に応じた対策を講じることになっています。しかし、一概に公共インフラの老朽化対策といっても、すべての老朽化した施設設備をすべて点検し補修・更新を行うものではありません。例えば、少子高齢化が急激に進み過疎化が進んでいる地域では、公共設備の統廃合を優先的に行い、限られた予算を住民生活に欠かせない設備に集約するといった対応策が求められます。小中学校の統廃合を行いつつ、統合存続する学舎の耐震工事を実施するなどが、これにあたります。また、地域には公共施設のほかに、民間の施設設備も混在しているため、公民が連携して地域インフラを柔軟に保全するマネジメント手法を積極的に取り入れることが必要だと思われます。いずれにしろ、約800兆円といわれるインフラストックを将来的にすべて保全することは現実的ではなく、公民連携による地域インフラの再編と、補修の選択と集中が求められるでしょう。

公共インフラ点検へのIT活用

公共インフラの点検方法は法律によって定められています。国土交通省の「道路橋定期点検要領」によれば、点検は「5年に一度の頻度」で「近接目視により行うことを基本(または、自らの近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができる情報が得られると判断した方法)」とされ、必要があれば「打音や触診等の手段を併用する」ことが求められています。しかし、点検対象となる公共インフラは膨大であり、道路や橋梁、トンネルなどを点検する際は、点検時に車両や船舶の通行を制限し、点検箇所に足場を組み、多くの人員を要するなど、人的・時間的コストがボトルネックとなっています。そのため、公共インフラ点検にITを活用して、点検作業の効率化、加速化を図る取り組みが進められています。例えば、道路やトンネルの点検では、レーザーや赤外線による解析装置を車載し、通常速度で走行しながら道路等の健全性を測定・記録し、問題となる個所を重点的に診断するといった試みが行われています。また、高精細カメラを搭載したドローン等ロボットによる橋梁裏面あるいは暗渠等の点検、小型車両に搭載した超音波検査装置による道路に埋設されたガス管や水道管の点検、IT技術を活用した常時監視システムの構築等などの取り組みが各社で試行されています。これらIT技術を駆使して、老朽化したインフラの点検・補修の効率化を図り、人的・時間的コストを大幅に削減することが期待されます。

少子高齢化の中で、効率のよい公共インフラの保全の推進は、社会的な要請です。また、インフラの老朽化問題を抱える先進諸国も多く、全世界的に能率的な点検・補修に係る市場は拡大していることから、規制緩和等でIT活用による点検・補修技術を高度化することは、我が国の産業育成面でも、積極的に推進すべき分野ではないでしょうか。

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