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コラム No.53-53

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戦略的な地域活性化の取り組み(53)公民連携による国土強靭化の取り組み【15】島国日本の海洋資源という資産を考える

公開日:2022/09/30

日本は鉱工業資源やエネルギー資源の大部分を輸入に頼っており、エネルギー資源に限っていえば自給率は12%程度に過ぎませんが、日本の海域には多くの未開発資源が眠っています。特に海洋鉱物資源は潜在的な国力であり、個人での保有は不可能ですが、国全体の視野を持てば、権利として公民が持つ資産でもあります。今回は、日本の海洋資源開発について考えてみます。

島国日本の海洋資源

日本の陸地面積は38万km2と大きくはありませんので、石灰石や一部の鉱物を除き、鉱工業資源やエネルギー資源の大部分を輸入に頼らざるを得ません。最近では、先の東京オリンピック・パラリンピック大会のメダル材料として注目を集めたように、電子製品や家電製品などの廃棄物(いわゆる都市鉱山)をリサイクルし、レアメタル等を抽出・回収して利用する取り組みも盛んにおこなわれていますが、石油や天然ガス等のエネルギー資源に関しては、需要を満たす産出量を確保することが難しい状況です。
ところで、地球は水の惑星と呼ばれるように、表面積の7割以上が海洋で構成されています。日本においても、国連海洋法条約による200海里内排他的経済水域(EEZ)の総面積は約447万km2とされ、実に領土の10倍以上の海洋を擁しています。海洋は水面下とはいえ、陸地と同様に地下資源を豊富に埋蔵していることが予測されています。国は、平成21(2009)年に「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を策定、平成31(2019)年に5年計画の3期目となる改定を行い、国主導で海洋資源の開発を推進しています。
例えば、石油や天然ガスについては、全世界埋蔵量の4分の1は海洋にあるといわれており、第二次世界大戦以降、各国で採掘、生産が始まっています。日本においても、沿岸部でいくつかの油田が発見されていますが、さらに、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が中心となり、深海域にある資源の探査が進められています。

次世代のエネルギー資源「メタンハイドレート」

メタンハイドレートとは、天然ガスの主成分である「メタンガス」が水分子と結びついてできた、氷状の物質です。火をつけると燃えるため、「燃える氷」とも呼ばれており、石炭や石油を燃やすよりも二酸化炭素の排出量が約30%程度少ないことから、石炭や石油に代わる次世代エネルギー資源として期待されています。このメタンハイドレートは、温度が低く圧力が高い環境、水深500メートルの深海底やその下の地層の中に存在し、日本の周辺海域に大量に存在していることが分かっています。一方で、メタンハイドレートは、氷状の固体として海底に眠っているため、採掘して「メタンガス」を取り出すには、高度な技術が必要となります。経済産業省は、平成13(2001)年から「メタンハイドレート開発計画」を開始し、計画を実施する組織として、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)、日本メタンハイドレート調査株式会社(JMH)で構成する「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」が設置され、2013(2001)年には、愛知県渥美半島から三重県志摩半島の沖、水深1000メートルの海底下にある地層から、世界で初めて約12万立方メートルのメタンガスを取り出すことに成功しています。
大きな期待が寄せられるメタンハイドレートの実用化には、採掘、生産コストや環境への負荷等の問題など、いくつかハードルがあるものの、国は「2023年から2027年の間に、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指す」とし、官民連携しての事業として推進しています。

貴重なハイテク材料「レアメタル」が海底に眠る

コバルトやニッケルなどのレアメタルは、日本が主力とするハイテク産業に必須の材料であり、今後とも需要が拡大する見込みです。一方で、レアメタルの生産は少数の国に偏っており、安全保障面でも供給ルートの確立が求められています。このレアメタルが、太平洋海底に広く分布していることが分かってきました。JOGMECの資料によれば、海底熱水鉱床(熱水中の銅、鉛、亜鉛、金、銀等の有用金属が沈殿している海床)やコバルトリッチクラスト(コバルトを多く含む地殻)、マンガン団塊、レアアース泥などの鉱物がEEZ内あるいは公海で発見され、試掘によりレアメタルを多く含むことが確認されています。海底鉱物資源開発は、現時点では世界的に見ても例が少ない先端的な技術であり、不確実性が高く極めて難度の高い事業であるため、商業化にはまだまだ時間がかかりそうですが、国際需要や社会情勢などの環境動向次第では重要性が増す分野でもあります。資源小国である日本にとって、海洋資源の開拓は、推進する価値のある事業でしょう。次世代技術を育成し新産業の創造を誘発する挑戦的な取り組みとして、継続していくことが望まれます。

日本には、まだまだ未開拓な資産化できる資源が少なからずありそうです。21世紀に入った日本は、少子高齢化や経済成長の鈍化、資源問題など、何かと明るい材料が乏しい状況ではありますが、将来的なポテンシャルを少し遠方に見据えて、新たな資源開発で社会的価値やトレンドを創造する、言い換えれば「ありたい姿(夢)を描くこと」も必要だと思われます。

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