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コラム No.53-44

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戦略的な地域活性化の取り組み(44)公民連携による国土強靭化の取り組み【6】燃料問題を考える

公開日:2022/01/21

エネルギー資源の高騰が続く

レギュラーガソリンの国内全国平均小売価格は、7年ぶりの高騰が続いています。コロナ禍による世界的な経済活動の停滞が石油需要の低迷を生み、産油国が減産により原油供給の調整を行ったことが直接の原因ですが、脱炭素化社会を目指す世界的情勢を勘案すると、短期的な問題と片付けられない課題でもあります。
2021年春以降は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、世界経済は回復基調になりましたが、特に欧米において新型コロナウイルス感染者数に増加傾向がみられ、コロナ禍再拡大の懸念も払拭できないことから、主要産油国が増産に踏み切れず、原油の世界的需給バランスが崩れている状況が続いていると思われます。
また、円安ドル高が進んでいることも、日本国内の石油のみならず、LNG(液化天然ガス)や石炭といった経済活動に欠かせない燃料の高騰に拍車をかけています。

脱炭素化社会実現はエネルギーコストの高止まりを招く

経済産業省資源エネルギー庁「2019-日本が抱えているエネルギー問題」によれば、2017年の日本のエネルギー自給率は9.6%、OECD35カ国中34位とかなり低い水準で、原油の99.7%、LNGの97.5%、石炭の99.3%を海外に依存しています。
2021年11月13日に閉幕した国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、異常気象など気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、産業革命以前(1850年~1900年を基準とする)に比べて気温上昇幅を1.5℃以内に抑えることを目標とし、今世紀中頃に温室効果ガス排出量を実質ゼロ、2030年には2010年比で45%削減することが明記されました。2021年現在における気温上昇は約1.1℃といわれており、先進国と途上国で差はあるものの、脱炭素化、メタンなど温室効果ガスの排出抑制、森林保護に向けた取り組みを加速させる必要があります。日本においても、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとすることを2020年10月に明言し、2021年10月に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」では、「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現する」など、徹底した省エネ、脱炭素化を戦略的目標としています。現在、脱炭素化社会実現に向けて、太陽光や風力発電など再生可能エネルギー産業を振興する政策を進めていますが、化石燃料による発電を代替する発電所や送電設備の整備には時間が掛かりそうですし、石油由来の化学製品や産業用資材の代替原料調達の課題は残ります。

脱炭素化社会に向けた代替燃料の動き

化石燃料の代替策のひとつとして、バイオ燃料があります。バイオ燃料とは、生物由来の有機物(バイオマス)を原料として、発酵や熱分解、搾油などによって製造された燃料のことで、燃焼させることによってCO2を排出するものの、植物等が成長過程でCO2を吸収していることから、その排出量は相殺(カーボンニュートラル)されます。現在、日本各地で、給食センターや食品加工工場から食用廃油を回収・加工したバイオ燃料が公用車等に利用されていますが、藻類を使った藻類バイオ燃料生産にも注目が集まっています。
「つくば国際戦略総合特区」では、2012年から筑波大学、東北大学、仙台市が共同で、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムという2種類の藻類を複合的に活用するハイブリッド型の「藻類バイオマス実証実験」が始まっています。このシステムは、生活排水や食品工場の廃液に含まれる有機物を餌としてオーランチオキトリウムがバイオ燃料の一種である炭化水素を生産し、その二次排水をボトリオコッカスが光合成によって炭化水素を生産するというものです。さらに、残渣(ざんさ)は家畜の餌やメタン発酵の材料となり、残渣燃料で得た熱はオーランチオキトリウム培養の暖房に、CO2はボトリオコッカスの光合成に活用させるという、クリーンなバイオ燃料生産エコシステムとなっています。このシステムが実用化されれば、日本の休耕田の5%程度、琵琶湖の3分の1程度の広さがあれば、日本の年間エネルギー輸入量を賄うことができる可能性があるとのことで、地域活性化にも有効な取り組みであると思います。
バイオ燃料は、現在稼働している発電機や自動車エンジンなどの内燃機関の燃料として、基本的には既存設備にそのまま利用できる利点があることに加え、化学製品や産業資材製造の原材料としても活用できます。一方で、農作物を原料としたバイオ燃料の大量生産には、食用・飼料用作物とのトレードオフ、農地拡大による森林伐採などの問題が指摘されているところですが、藻類バイオ燃料であれば、それらの課題を払拭できるでしょう。

日本は、国土の67%を森林が占めるなど、バイオマス(生物資源)に適した豊かな自然環境を有しているといえます。化石燃料以外にも産業用資材価格も高騰している現在、国土を有効に活用するという視点においても、あらゆる産業分野で多様なバイオマスの活用やリサイクル技術に、もっと目を向ける時期かもしれません。

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