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コラム No.53-41

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戦略的な地域活性化の取り組み(41)公民連携による国土強靭化の取り組み【3】BCP(事業継続計画)

公開日:2021/09/30

近年、気候変動の影響もあり、自然災害による被害が甚大化しつつあります。災害による被害を最小化するためには、平常時から被害を予測して施設・設備の強靭化を図る防災に加え、災害時における企業や自治体の事業活動の継続を図り、社会や経済の安定性を確保し、市民の生活基盤を守ることも大切な取り組みです。

甚大化する自然災害の状況

ここ10年間の自然災害をみると、平成23(2011)年の東日本大震災の津波被害は例外としても、年々甚大化、広域化する傾向にあります。平成30(2018)年7月豪雨(西日本豪雨)では、6月下旬に台風7号が通過した後、7月上旬にかけて梅雨前線が停滞したことで、西日本から中部地方、北海道にかけた広い範囲で水害が発生し、その被害総額は約1兆2,150億円に上りました。また、令和元(2019)年東日本台風では、最低気圧915hPaというかつてないレベルの台風19号が10月中旬に伊豆半島に上陸、死者84名、行方不明者3名、負傷者376名、被害総額は統計開始以来最大の約1兆8,600億円を記録しました(国土交通省、令和2(2020)年8月21日発表)。さらに、気象による自然災害とは言えませんが、令和元(2019)年より拡大している新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)は、収束の見通しさえつかない事態となっており、その被害総額は計り知れないところです。これらの災害は、いずれも過去の経験値では予測が難しく、事前の予防が困難であるものと言えます。
一方で、市民や企業の社会・経済活動の停滞を最小限にとどめ生活基盤を守るためには、非常時であっても事業を継続することが求められます。そのため、平常時より、非常時に備えた企業や自治体の行動指針である「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を策定することが極めて重要であると言えます。

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の意義

事業継続計画(BCP)とは、災害時に企業等の重要業務が中断しないこと、万一事業活動が中断した場合には、短期間で重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する計画のことです。つまり、災害時には「最速の復旧を図る」考えに加えて、「事業の継続を優先して復旧する」ことに重きを置いたものと言えます。
2020年3月に内閣府が公表した「令和元年度企業の事業継続及び防災の取り組みに関する実態調査」によれば、事業継続計画(BCP)の策定状況は、大企業では8割以上、中堅企業では5割以上が、「策定済み」あるいは「策定中」となっており、大企業、中堅企業ともに、その比率は年々高まっています。大企業を中心に、BCPの策定は進んできている状況と言えるのではないでしょうか。ただし、「リスクへの対応を実施していく上での課題」としては、全ての規模の企業において「自社従業員への取り組みの浸透」が80%を超えており、従業員一人ひとりの意識付けには課題が残っているようです。

国は、2005年より「事業継続ガイドライン」を策定、2019年7月には「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」(中小企業強靱化法)」が施行され、BCP認定制度など企業等の事業継続計画(BCP)支援施策が盛り込まれました。現在のところ、事業継続計画(BCP)策定を義務化する法律はありませんが、企業等の事業活動が停滞することにより、地域住民に必要な物資の供給や移動手段が断たれ、市民生活に大きな影響を与えてしまいます。そのことから、企業等が事業を継続することで生活インフラを維持するという社会的な意義は大きく、事業継続計画(BCP)の更なる普及が期待されます。

災害の広域化、多様化への対応

近年の災害は甚大化に加え広域化する傾向にあり、また自然災害のみならず感染症やテロへの対応、環境問題に端を発した省エネルギー、脱炭素への対応など、事業継続に関して考慮すべき課題は多様化しています。一方、企業等の国際化や交通機関の発達により、物流、人流は年々活発になっており、多様化する災害に対する企業や自治体単独での非常時対応は難しくなっています。これまでの社会・経済活動は、物流や人流を増やすことによって循環し発展してきましたが、それを抑制する近年の動きは各業界、自治体に大きな混乱を生み、実際に企業や自治体の間で、リスクへの対応格差が生じているようです。
このような状況をみると、企業や自治体、あるいは地域単位で、将来想定されるリスクを平常時より共有し、連携して社会活動を長期的に継続させる仕組みを考える時期に来ているように思えます。
難しいことではありますが、多様化、広域化する社会的リスクを回避し持続可能でレジリエントな社会を実現するために、自治体を超えた広域での公民連携による事業継続計画を策定し、地域の再編成、再開発を中長期的に進める必要があるのかもしれません。

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