大和ハウス工業株式会社
~大和ハウスグループの挑戦と未来を創る技術者たち~
大阪・関西万博で得た知見を未来へ
2025年4月13日から半年間にわたり開催された「2025年日本国際博覧会(以下大阪・関西万博)」は、国内外から多くの来場者を迎え、10月13日に閉幕しました。
閉幕から4カ月がたった今、改めて大和ハウスグループが携わった大阪・関西万博の事業の一部について紹介するとともに、技術面での工夫や苦労、そして大阪・関西万博で得た経験を次にどう活かしていくかについて、現場の技術者たちの声を中心に紹介します。
1.大阪・関西万博を振り返って

大和ハウスグループはパビリオンの設計・施工をはじめ、バックヤードの施工や環境の整備、会場のアクセス支援や資材の再利用支援など、多岐にわたる事業に参画しました。
これらの取り組みは、グループ会社や協力会社、関係各所との緊密な連携によって実現したものです。複雑で困難な課題もありましたが、関係者全員の創意工夫やチームワークによって滞りなく進めることができました。
当社は関西発の企業で、創業者の石橋信夫も奈良県出身。「関西に恩返ししたい」と常に意識していた創業者の想いを受け継いでいるからこそ、積極的に大阪・関西万博に携わり、貢献することができたのだと自負しています。
2.大和ハウスグループによる大阪・関西万博の取り組み
大和ハウスグループが携わった事業のうち、4つのパビリオンの設計・施工事業について、技術面での工夫や苦労、さらに今回得た経験を今後どのように活かしていくかなど、担当した現場の技術者の声を紹介します。
(1)電力館 可能性のタマゴたち



①技術面での工夫や苦労
当初、外装は膜ではなく金属パネルでしたが、コストダウンを検討した結果、膜素材への代替を提案しました。ボロノイ形状(※1)に膜素材をシワなく張ることは容易ではありませんでしたが、何度もモックアップ(※2)を製作して検証を重ね、美しい外装を追求しました。
また複雑なタマゴ型の造形を表現するため、建造物の骨組みに2,000本以上の鉄骨を用いましたが、建造物の軸を垂直ではなく15度斜めに配置した設計のため、骨組みをすべて組み立てるまで建造物が自立できませんでした。そこで、BIM(※3)を活用して傾いた柱やそれを支えるワイヤーの位置を細かく調整し、安全を確保しながら施工を進めました。
※1. 平面上にランダムに配置された複数の点同士の距離によって、領域を分割した形。
※2. 製品の外観やデザインの模型や完成イメージを視覚的に表現したもの。
※3. Building Information Modelingの略。デジタルモデリングを使用して初期設計から建設、保守、最終的に廃棄に至るまで、建築資産のライフサイクル全体にわたる情報管理の仕組み。

②反響
工事期間中は多数の建設会社が会場に集まっており、それぞれのパビリオンの工事の様子を互いに見ることができる状況にありました。他のパビリオンに携わっている建設会社の方々から、「電力館」の複雑な鉄骨構造を褒めていただくことも多く、当社の技術力を知っていただく良い機会になりました。
③今回得た経験を今後どのように活かしていくか
複雑な形状の「電力館」は、大阪・関西万博という特別なイベントだからこそ実現した建造物です。DX技術を活用することで、精度の高い図面の作成が可能になり、生産性を向上させることができました。今回の挑戦で蓄積された知識・経験を糧に、これまでにない特殊な建築に積極的に携わりたいと思います。
(2)BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)



①技術面での工夫や苦労
ドーム状の複雑な構造を実現するために、3次元の測量ができる測量機器「レイアウトナビゲーター LN150」(※5)を活用して、構造を正確に管理しながら施工しました。敷地内から計測するだけでなく、大屋根リングも活用して、3,000カ所を超える観測点を計測しました。
またドームそのものが展示として楽しめるほど美しいため、照明やカメラなどの設備機器とドーム内の展示を、違和感なく共存させる必要がありました。 視界に入らない位置に設備機器を配置したほか、構造体の裏側に配線を施工するなど、来場者の目に留まらないようにする工夫を追求しました。
※5. 株式会社トプコンが開発した、高低差のある現場にも対応した測量機器。スマートフォンやタブレット端末のアプリケーションと連動させることで、BIMに基づいたデータ測量や杭打ちを行うことができる。

②反響
「BLUE OCEAN DOME」は、会期中に100万人以上の来場者を迎え、展示と建築が融合した設計が評価されました。特にドームBに関しては、家族や友人、同僚から「映像とドームの内装が合わさって、非常に美しかった」などの好意的な感想を多数いただきました。パビリオンの建設に携わった一員として、自分たちの仕事を紹介できたことは非常に誇らしく、良い思い出となりました。
③今回得た経験を今後どのように活かしていくか
今回のプロジェクトでは、3次元の座標測量に加え、構造体の異なる3種類の建造物のBIMモデル化を実施するなど、新たな技術的手法に挑戦し、複数の実証実験を行いました。
今後は、大型建造物や特殊建築における建設DX技術の研究・実用化を促進します。従業員の教育にも力を入れることで、DX技術をすべての現場で使用できる環境の構築を目指します。
(3)いのちの遊び場 クラゲ館



①技術面での工夫や苦労
「生き物」のような建築形態を具現化するために、アルゴリズムを用いた設計技術とBIMモデルを活用した施工技術を採用しました。「クラゲ館」の屋根を支えるすべての柱が斜めに設置され、屋根トラスも高密度に組まれていたことにより、それらの接合位置を正確に決定するのが困難でした。そこで、粘菌がアメーバ状に成長するアルゴリズムを基に、イメージをデジタル化して部材の配置を設計しました。また、部材1本1本の寸法・角度をBIMモデルで管理するとともに、これまでの経験から、適切な位置にクリアランスを設け、デジタルとアナログの融合により、柱と屋根トラスの接合部の精密な施工を行いました
当初は不可能に近いと思えた施工も、関係者が一致団結し、あらゆる問題点を1つずつ解決していくことで、揺らぎや浮遊感といった感性的な要素を緻密に建築技術と融合させ、「クラゲ館」を完成させることができました。

②反響
クラゲの傘のような膜屋根は、地上エリア中央の 「創造の木」の幹ではなく、斜めの柱で支えており、その特徴的な構造が、多くの関心を集めました。
また、過半が屋外空間である 「クラゲ館」には酷暑の懸念がありましたが、風や水などの自然エネルギーを利用した冷却技術によって、快適な空間を実現しました。地上エリアは予約無しで入場できたこともあり、気温が高い開催日でも多くの人々で賑わい、特に子どもたちにとっては「遊び場」として様々な展示を楽しんでいただきました。
③今回得た経験を今後どのように活かしていくか
難解でユニークな建築は、完成が目的になりがちです。しかし開催期間中に「クラゲ館」を訪れた多くの方々が笑顔で過ごす様子を見て、建築はそこで生まれる豊かな体験を実現して初めて完成するということを実感しました。この学びと経験をいかに活用出来るか、関係者の創意工夫を引き出しながら、当社が未来の社会にどのような体験や価値を提供できるのかを常に考えて建築に携わっていきます。
(4)null²(ヌルヌル)



①技術面での工夫や苦労
8つのシグネチャーパビリオンの中でも、「null²」は優れたコストパフォーマンスで高い評価をいただいています。費用を抑えるために大和リースのプレハブ技術を活用しており、バックヤード3棟にプレハブを用いることにより、建物本体に工期や予算を集中することが可能になりました。
また「null²」は、薄く傷やしわができやすい「ミラー膜」と、それを振動で動かすロボットアームやスピーカーを組み込んだ、非常に特殊な設計でした。この複雑な構造に対応するために、フジタのDX技術を活用して、3Dで可視化した設計図を関係者間で情報共有することで、施工精度を高めるとともに工期の短縮を実現しました。

②反響
外観に使用されている「ミラー膜」は新開発の素材であり、外部の特異な形状と合わせて来場者の方々に大きなインパクトを与えました。内部のロボットアームやスピーカーによって表面が歪むことで、生き物のような印象を持たれる方もいらっしゃいました。また、同業者の方々から「どのような仕組みで建造物が揺れているのか」「下地はどうなっているのか」などの多くの質問を受けるほど、技術的な関心を集めた建造物でした。
会期中に予約が取れず、内部での体験ができなかった方々も多い人気パビリオンであり、今後の動向も注目されています。
③今回得た経験を今後どのように活かしていくか
「null²」の実施設計・施工においては、フジタと大和リースが連携し、関係者一丸となって取り組みました。予算は限られ、参考にできる建造物は無い中、理想形に近づけるため、着工後も工夫と提案を重ねました。その結果、プロデューサーの要望にこたえるパビリオンを建設できたことは、大きな達成感に繋がりました。
今後はグループ各社の長所を最大限に活かし、「大和ハウスグループ」としての技術力・提案力を向上させます。大和ハウスグループだからこそ実現できる、施工難易度の高い建造物にも挑戦したいです。
(5)その他の取り組み
その他にも、ブルガリア共和国パビリオンやコモンズ館を初めとした海外パビリオン13棟、EVバス「e Mover」停留所3カ所の建設に取り組みました。
建設だけでなく、大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」の緑化、「大阪マルビル」跡地でのシャトルバスターミナルの提供、サーキュラーエコノミー実現のための「リユースマッチング事業」への役務協賛など、様々な形で各事業に携わり、大阪・関西万博をサポートしました。

3.大和ハウスグループが大阪・関西万博で得たものを今後どう活かしていくか

大阪・関西万博は、世界中から最先端の知識・技術・人財が集まる場であり、大和ハウスグループにとって、この貴重な機会は新たな技術への挑戦の場でもありました。
パビリオン建築などの複雑な施工には、高度な技術力と柔軟な対応力が求められます。
今回の大阪・関西万博への参画は、現場の従業員はもちろん、直接事業に携わらない、幅広い職種の社員にも影響を与えました。特に若い社員にとって大きな刺激となり、モチベーションの向上につながったと感じています。当社の社是である「事業を通じて人を育てる」という理念が、まさに実践された事例となりました。
重要なのは、今回得た知見と経験を、次の挑戦に活かすことです。「技術の大和ハウス」への変革、そして「生きる歓びを分かち合える世界」の実現に向けて、私たちは挑戦を続けていきます。
紹介したパビリオンの詳しい技術的取り組みについてはこちら
https://www.daiwahouse.co.jp/ir/dxar/2025/sp/index.html
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