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CRE戦略

2026.9.30

金利上昇時代に増加する「アセットライト」という選択

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昨今、自社不動産を売却するケースが増加しているようです。都市未来総合研究所の調査資料によれば、2025年の国内不動産の売却額は前年比9%増の1兆2318億円と18年ぶりの高水準となり、また、ジョーンズラングラサール(JLL)の調査によると、2025年の日本の不動産への投資額は6兆円超と2007年の調査開始以来過去最高になりました。
金利が上昇する状況においては、自社不動産を売却し、固定資産を保有しない財務戦略を採用するという選択肢もあります。

アセットライトを選択する背景

企業が工場や設備、不動産等の重い固定資産を自社で保有せず、外部委託やリース等を活用して事業を行うことを「アセットライト(資産を軽くする)」と呼びますが、アセットライトを選択する昨今の背景としていくつかの要因があります。

東京証券取引所からの要請

2023年の東京証券取引所からのプライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象とした「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を受け、企業は総資産を減らして利益率を高める必要が出てきました。本業の利益拡大に直結しない本社ビルや遊休地を売却することは、財務指標(ROAやROE)の改善につながります。

建築費・資材費・人件費の高騰

アセットライトは、経営資源の効率的活用や財務体質の強化のために行うことが一般的ですが、昨今、新たな施設建設や事業への投資のために取得していた土地を売却するケースもあるようです。 土地を取得していたものの、建築費・資材費・人件費の高騰により、当初想定していた収支計画と合わなくなってしまい、取得地を売却するというケースです。

マインドの変化

土地に対するマインドの変化もありそうです。かつて日本では、企業が土地を保有することはステータスだと言われた時代もありましたが、現在は収益の上がらない資産は、財務上問題があるとされることが多くなっています。 また、最近の金利上昇局面を背景に、将来、金利がさらに上がれば、買い手の資金調達が難しくなったり、不動産が生み出す収益が下落したりするリスクを感じる企業は少なくないようです。

プラスの影響とリスク

アセットライトには、具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

資本の効率的活用

不動産等の固定資産を売却すると、総資産が減少します。そして生まれた売却益を事業への投資にあて、利益を増やすことで、投資家が重視するROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)が改善します。さらに積極的に、国内外の市場シェア拡大や新規事業の立ち上げのために、新たな技術を持つスタートアップ企業等を買収するケースをはじめ、M&A、DX投資、研究開発等へ再配分することができれば、経営戦略としても効果的な施策になります。
また、自社の持つ遊休地や、建設を断念した土地の売却先として、最近出てきているのが、データセンター(DC)や半導体をはじめとする先端テクノロジー企業などです。象徴的な例として挙げられるのが、シャープが液晶生産を終了した旧堺工場の土地・建物をKDDI等へ売却し、AIデータセンターへ転用した事例です。製造業界もビジネスモデルの変化が激しく、ビジネスのライフサイクルが年々早くなっている中、こうした動きはさらに増加するのではないでしょうか。 ただし、自社ビルを売却して「セール&リースバック」する場合、これまでかかっていなかった賃料(リース料)が毎月の固定費として発生することになりますので、営業利益は下がることになります。2027年4月から適用される「新リース会計基準」にも注意が必要です。

貸借対照表(B/S)への影響

固定資産が流動資産(キャッシュ)に換わるため、B/Sの流動性が高まるのもメリットのひとつです。売却益を借入金の返済に回すことができれば、自己資本比率の向上や有利子負債の削減につながります。
ただし、不動産は実物資産であり、インフレであっても価値が低くなりづらいため現金に比べてインフレに強い資産だと言われています。逆に言えば、不動産を売却することで、インフレに対するリスクヘッジができなくなるという側面もあります。
また、市場価値の高い不動産は、保有企業の信頼性を上げることもあります。実際に、融資を受ける際の担保になりますので、不動産を売却しすぎると、将来、融資を考えている場合は、資金の調達力が低下する可能性が出てきます。

維持コストや様々なリスクの低減

不動産を売却することで、建物の老朽化に伴う修繕費や固定資産税といった維持コストの低減にもつながります。老朽化した施設は、費用の問題だけではなく、BCP(事業継続計画)のリスクや、企業のブランディングや採用の問題、従業員満足度の低下等、多くのリスクを抱えることになります。

リスクある固定資産から価値を生む事業への投資へ

かつては、不動産を保有して含み益を持つことで、銀行からの信用を得るという財務戦略を採る企業が多かったと言えますが、現在は、不動産を持っているだけでは、隠れたコストと言われる、固定資産税、老朽化への修繕引当金等が発生し続けることもあり、市場から維持コストと金利リスクがあると判断されかねません。
この観点で見れば、収益を生まない不動産を売却し、価値を生む投資に使うという考え方は一理あると思えます。企業における資産の本来の目的を考えれば、不動産は所有することが目的ではなく、事業価値を生み出す資産であるべきです。不動産の管理運用は、不動産活用のプロに任せることで、本来の事業に専念するという資産活用戦略もあり得ます。 企業が単に資産を持つ経営から、資産の有効活用へシフトすることは、現在の経営戦略・財務戦略の面からも必然的な流れかもしれません。

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