CRE戦略
2026.9.30


国土交通省の資料によると、現在、特に東京23区内において、バブル期等に建築された多くの中⼩ビルが、⽼朽化・陳腐化し、改修の時期を迎えています。しかし、約6割のビルオーナーの年齢が60歳以上と高齢で、運⽤コスト増や改修・建替の資⾦確保等に不安を抱えているという調査結果もあり、改修は進んでいないようです。
中小ビルオーナーの年齢層

今後のビル事業における不安(上位5位)

出典:国土交通省「中⼩ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業 事例集内 ザイマックス不動産総合研究所『ビルオーナーの実態調査2025』」
これらの中⼩オフィスビルは適切な改修や保守がされないと、空室が拡⼤・⻑期化することで、市場において流動性の低下が起こり、結果的に空きビルが増えるということが起こりかねません。
これを防ぐためには、これらのビルが放置されることなく適切に管理・運営され、市場での流動性を⾼めることが重要となります。
このような状況を受けて、国土交通省は、2023年3⽉に不動産分野における社会課題の解決に貢献する取り組みを後押しするため、不動産に係る社会課題・取り組みの考え⽅や評価の進め⽅に関する参考資料として「『社会的インパクト不動産』の実践ガイダンス」を公表しました。
ガイダンス公表以降、⺠間の不動産事業者等による社会的なインパクト創出を企図した不動産の改修や取り組みは普及しているものの、さらに、ビルオーナーにとって不動産を通して社会課題の解決を検討する際に参考となるものを目指して、2025年より「中⼩ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」を公募し、バリューアップを図った改修事例や改修提案を収集。2026年3月、改修のあり⽅や改修による効果の把握・発信を⾏うため事例集を作成しました。

募集した事例は、外部委員会により評価を⾏い採択。採択された提案等は、事例集としてその取り組みを広く周知するとともに、改修提案については、改修検討等に係る調査・検討費⽤(上限:400万円/件)を支援しました。現在18件(19物件)が採択されており、以下の評価のポイントが挙げられています。
採択された事例の中から、参考として特徴的な物件をご紹介します。
隣接する①寄宿舎棟と②倉庫棟を一体として活用することを前提とした再生事例。寄宿舎棟を減築し、オフィスの他、同エリアに馴染むようまちに開かれたサウナとランニングステーションを設置し、地域活性化を目指す取り組み。
長期間空室となっていた一棟貸しの店舗。法適合調査を実施し、必要な改修項目を明確化するとともに、テナント区画とSOHO型住宅に用途変更申請をして遵法性を確保。フロア貸しに変更し使い勝手を向上。
下階は既存バルコニーや外壁を撤去して増築しガラスファサードに変更することで採光に有効な開口面積を拡大するとともに、上階は減築し、吹き抜けやルーフテラスを設置、オフィス環境の向上を図った。
新築当時はカプセルホテル及び店舗であったが、建物全体の減築工事等を実施し、上層階の採光と眺望を確保。上層階をセットアップオフィスに用途変更してスタートアップ企業が入居し、成長する場所を目指す取り組み。
共用ラウンジ、WEB会議ブース、通話スペース確保等の整備によって、リモートやハイブリッドワークなど多様な働き方に対応するシェアオフィスへ改修。多様な個室バリエーションで館内移転対応を可能とし、スタートアップ企業の成長フェーズに応じたオフィス拡張に対応。
採光・通風確保のための減築と耐震補強等を実施。地上階の壁の減築により、有効活用されていなかった両隣の公開空地に人の流れを生み、周辺エリアにも寄与する改修。
市街地活性化プロジェクトにおけるビジネスホテルの再生事例。周辺では空き家の増加や商店街の衰退が進行し、地域ニーズに対応した機能再編も課題。新築するホテルの別館として客室の改修と併せ、まちに開かれたエントランスとし、コワーキングスペースやライブラリーの設置を通じて、地域住民や宿泊客が交わる場を形成。
近年のオフィスニーズを踏まえ、共用のラウンジやルーフテラスの整備によるウェルビーイングを実現。セットアップオフィスやABW(Activity Based Working)の採用、打合せスペース・フォンブース設置による人材活躍・生産性向上を図る改修を提案。
学生やベンチャー企業の多いエリア特性を踏まえ、コワーキングスペース、少人数用個室オフィス、内装付き賃貸オフィスと幅広いワークスペースを整備し、ドロップイン利用や交流会の開催等により、地域に根付くフレキシブルオフィスとして改修。
大和ハウス工業においても、ストック物件の再生事業は着実に増加しています。ある大手企業の事例では、時代とともに何度か用途変更してきた自社ビルを売却し、マルチテナント型のオフィスビルとして再生。取得から完成まで、約9カ月で完了し、テナント側においてもスピーディーにビジネスが展開しました。また、本社機能を移転することで、社員の通勤負担の軽減や快適な労働環境が実現しました。
CASE STUDY:BIZリブネス川崎塚越
https://www.daiwahouse.co.jp/business/bizlivness/case/tsukagoshi.html
立地や物件によって老朽化中小物件で解決すべき課題や課題解決手法は多種多様です。まずは地域のニーズや需要の可能性を的確に把握することが何より大切なことです。また、思い切った改修工事には、メリットだけではなくリスクも伴いますので、信頼できるパートナーに相談しながら進めていくことが重要です。
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