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暮らしに関わる税制改正の動きとポイントを専門家に聞きました。

お金のこと

税制改正って「何が変わった?何が変わる?」Produced by YOMIURI BRAND STUDIO

今、知っておきたいポイントQ&A

2018年1月から、専業主婦(主夫)やパートで働く専業主婦(主夫)がいる世帯の所得税を低減する配偶者控除の制度が変わりました。2020年には年収850万円を超える会社員や公務員らの所得税が増税となります。暮らしにかかわる税制改正の動きとポイントを専門家に聞きました。

質問にお答えいただいた専門家

ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
ファイナンシャルプランナー 八ツ井慶子さん

「103万円以下」から「150万円以下」へ

2018年1月から変更された配偶者控除について教えてください。

給与所得者や公務員が支払う所得税は、年収から控除と呼ばれるさまざまな要素を差し引いた課税所得をベースにして決まります。そうした控除の一つが配偶者控除です。これまで、配偶者の年収は103万円以下ならば、世帯主は配偶者控除として38万円を引くことが認められていました。
ところが、パートなどで働く配偶者の年収が103万円を超えると、世帯主が配偶者控除を受けられなくなってしまいます。配偶者が年収103万円を超えないように労働時間を抑えてしまう現象が幅広く見られました。これが「103万円の壁」といわれる問題です。
経済全体では、人手不足が深刻化しています。働く能力や意思のある女性に家庭の中だけでなく、企業の中で働いてもらうことが大事になってきています。このため、2016年12月に閣議決定した「2017年度税制改正大綱」で、配偶者控除の適用対象となる配偶者の年収上限を「103万円以下」から「150万円以下」に見直し、配偶者が労働時間を気にせず働きやすくするようになりました。

会社員には一定の「給与所得控除」

控除にはほかにどのようなものがありますか?

会社員など給与所得者は「給与所得控除」があります。自営業者らは収入から経費を差し引けるのに対し、給与所得者は仕事で使うスーツや革靴、資格の取得などに費用がかかるのに差し引くことができません。そこで、不公平感が生じないように、年収によって一定金額を給与所得控除として差し引いて、支払う税金が少なくなるよう計算されています。
所得控除には、納税者全員が受けられる「基礎控除」、子どもなど養っている家族によって受けられる「扶養控除」があります。実際に支払っている金額によって変わる「社会保険料控除」「生命保険料控除」「医療費控除」などもあります。

年収850万円超の会社員、2020年から増税に

「2018年度税制改正大綱」で2020年からの所得税の見直しが決まりました。

2017年12月に閣議決定した「2018年度税制改正大綱」は所得税改革が柱になりました。所得税の「基礎控除」「給与所得控除」のほか年金受給者にかかわる「公的年金等控除」(年金控除)の三つの控除を見直し、2020年1月から実施されます。年収850万円超の会社員は原則増税になります。

具体的にどう変わるのですか?

「基礎控除」を現行の38万円から10万円引き上げて48万円とします。と同時に、会社員らの負担を軽くする「給与所得控除」は、年収850万円までは一律10万円引き下げました。結果、年収850万円を超える会社員らは原則、増税になるわけです。

「働き方」「貧富の差」に着目した
税制見直し

改正の狙いはどこにあるのでしょう。

給与所得控除は自営業者との公平感を保つための措置でしたが、一方で、企業に縛られないフリーランスなど働き方は多様化しています。働き方によって控除に差が出るのはおかしいとの指摘も相次ぎました。
一方で、日本社会でも貧富の差が広がっているという問題があります。所得の高い人から低い人への「所得税の再分配機能」を回復するため、所得の高い人には増税となるようにしました。
年金をもらっている人が対象となる年金控除も、年金収入だけで1,000万円を超える人、年金以外の所得が1,000万円を超える人は控除額が縮小されました。
ただ、子育て世代に配慮するとして、22歳以下の子どもがいる世帯と介護が必要な家族がいる世帯は、増税の対象外としています。この結果、対象となるのは会社員や公務員の4%(約230万人)と年金受給者の0.5%(約20万人)と見込まれています。

所得税改革のイメージ

2017年12月15日付読売新聞朝刊掲載

そもそも「税制改正」とは?

日本は第2次世界大戦後に現在の税制度の基礎が形成され、社会の構造変化に応じて税制の見直しが行われてきました。例年12月に政府が「税制改正大綱」を閣議決定します。「税制改正」は景気の調整や政策手段の役割を担っています。

これまでの主な見直しは?

高度経済成長期の1950年代後半から70年代にかけては、道路など社会インフラ整備のための財源確保を目的にした改正や、不況対策としての所得税減税が行われました。その後、国内外の変化に対応する抜本的な税制改革の一環で高齢化社会に向けた安定的な税収の確保を目的に、1989年4月から消費税が導入されました。また、地方分権を進めるため国から地方への税源移譲を行う目的で、所得税と個人住民税の税率構造が2007年分から見直されました。

「住宅ローン減税」の仕組みを知ろう

住宅にかかわる税制の動きは?

「住宅ローン減税」は、住宅ローンを借り入れて住宅を取得した人の所得税を、ローン残高に応じて軽減する仕組みです。毎年末の住宅ローン残高の1%が原則10年間、所得税の額から控除されます。2014年4月からの消費税率の8%への引き上げに合わせて拡充され、2021年12月末までは、所得税が年間で最大50万円軽くなります。
消費税率の引き上げは2014年4月の8%に続いて、2019年10月に10%と2段階で行われることになっています。消費税率の10%への引き上げ時期が予定されていた2017年4月から2年半延期され、「19年10月」とされたことを受けて、現在の住宅ローン減税の終了時期も19年6月末から2年半延長され、21年12月末となったのです。住宅ローン減税は、2014年4月から21年12月まで消費税率に関係なく同じ拡充内容ですから、現在を「買い時」ととらえる人もいます。

消費税、年金…社会変化に対応

将来に向けて税制はどう変わるのでしょう。

日本は現在、人口減少と高齢化の同時進行、グローバル化の急速な進展、貧富の格差や気候変動をはじめとする環境問題などさまざまな課題に直面しています。消費税率の10%への引き上げは2度延期されましたが、昨年末に閣議決定した2018年度税制改正大綱には「消費税率の10%への引き上げを2019年10月1日に確実に実施する」と明記されました。消費税増税の景気への影響を和らげる目的で、今後、住宅にかかわる税制についても動きが出てくることが予想されます。
年金課税は年金控除の見直しや年金制度改革の方向性も踏まえて、総合的に検討するとされており、今後もこうした社会・経済の構造変化に対応できる税制の構築に向けた改正が行われます。

住まいの税金「2018年の動き」に注目

ファイナンシャルプランナー
生活設計塾クルー 取締役 深田晶恵さん

給料から所得税と住民税、厚生年金や健康保険料などの社会保険料を引いた額、実際にもらえる金額が「手取り収入」です。この手取り収入から、税制改正のポイントをみていきましょう。

※ここでは、会社員の夫、専業主婦の妻を例にとって解説します。

2018年1月から、妻が夫の税金面での扶養に入る場合に夫が配偶者控除を受けることができる妻の年収要件が150万円以下に引き上げられました。それまでの年収要件は103万円以下だったため、103万円を超えないように仕事を調整する女性が多く、「103万円の壁」といわれてきました。
では、これからは「150万円の壁」になるのかというと、手取り収入の面からみると税金のほかに、「社会保険の壁」に注意する必要があります。
妻が社会保険料を払わずに夫の社会保険の扶養に入ることができるのは、年収130万円未満までです。年収が130万円以上の場合は、妻が自身の収入から社会保険料を支払うことになります。さらに勤務先が501人以上の企業の場合は、年収106万円以上でその他の要件を満たすと社会保険料を支払うことになります。厚生年金や健康保険の保険料といった社会保険料の支払いで減った手取り分を取り返すためには、150万円を少し上回るくらいまで収入を上げる必要があります。「150万円の壁」の前に、この社会保険の「130万円の壁」が女性の就労を拡大するうえで、大きなハードルになるでしょう。
また2020年1月から、年収850万円を超える会社員や公務員らの所得税が原則、増税されます。実は2003年以降、大きな制度改正が続いて所得税や社会保険料が増え、手取り収入の減少が顕著になっています。
所得税は、収入から控除を差し引いた残りの所得額をもとに算出します。控除とは収入から引ける経費のようなもので、非課税枠と考えるといいでしょう。これまでの税制改正で控除額が縮小になったり控除そのものが廃止されたりして、それにより手取りが減ってきているのです。
今後実施される改正は、2020年1月からは、会社員らの給与所得控除が、年収850万円超で、控除額の上限(現在220万円)が195万円で頭打ちになります。つまり年収850万円超の会社員は、増税となるのです。「控除」は、ぜひ押さえておきたい税金のポイントです。
このほか、住宅にかかわる税制も見ておきましょう。現在は、2019年3月取得分まで決まっています。住宅取得にかかわる減税についても、景気情勢を見ながら、3年から4年の単位で決まってきています。ちょうど2018年は、年末に向けて来年以降の住宅にかかわる税制改正の動きが出てくる年です。消費税が増税されるのであれば、住宅ローン減税の枠は、増税分をカバーする、つまり、住宅購入の落ち込みを防ぐという意味で拡大する可能性があります。これから年末にかけて関連ニュースを気をつけてみていきましょう。

深田晶恵(ふかたあきえ)
生活設計塾クルー取締役 ファイナンシャルプランナー
外資系電機メーカーを経て1996年にファイナンシャルプランナーに転身。個人向けコンサルティングを中心にメディアや講演活動を通じてマネー情報を発信。マイホーム資金計画、定年退職前後の生活設計などをアドバイスしている。
『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』(ダイヤモンド社)、『定年までにやるべき「お金」のこと~年金200万円で20年を安心に生きる方法』(同)、『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂6版』(同)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』(講談社)など著書多数。

「いい消費」「悪い消費」を考えよう

ファイナンシャルプランナー
生活マネー相談室 代表 八ツ井慶子さん

給与所得控除が変わると、どれだけの影響を受けるのか。制度改正に無関心だったとしても無関係でいることはできません。制度改正の背景にある日本の少子高齢化は現在も根本的な解決には至っていないため注意が必要です。収入を上げるのが難しい時代、手元にあるお金を大切に使うことがより強く求められるようになります。

家計についての考え方では、入ってくる収入があり、それを「使うか」「使わないか」の二つのパターンしかありません。収入から支出を引いた残りが貯蓄です。支出と貯蓄はコインの裏表です。家計にはこの「流れ」しかなく、それを一生涯繰り返します。家計をよくするためにできるのは、「収入を上げる」「支出を減らす」「運用して殖やす」の3点です。
お金は、何に使ったかではなく、なぜ使ったか。このなぜの部分を記載して振り返る作業が家計の改善につながります。消費には2種類しかないと思っています。「いい消費」と「悪い消費」。つまり、「買ってよかった」か「買わなくてよかった」かの二つのパターンが自身の買い物のくせです。くせを把握し、いかに「悪い消費」をなくしていくかが大切です。住宅についても、自身にとって必ず「いい消費」であってほしいですね。
今後、ますます長寿社会になれば、日々のお金の使い方で、家計の明暗が分かれる時代になるでしょう。時間軸を延ばすという視点で、長く働くことが重要です。長く働けば働いただけ老後の期間が短くなります。また共働きは夫婦のどちらか片方が倒れた場合に備える「リスク分散」になります。夫婦で働けば収入は増え、生命保険の死亡保障は多くはいらなくなるので死亡保障の金額を下げることができるなど、コストを抑えることができます。

例えば、パート収入が月5万円だったとします。月5万円で家計は変わります。月5万円は20年で1,200万円、30年で1,800万円になります。これで家計が変わらないはずはありません。子どもの教育費も1人、2人分くらいは出せるでしょう。住宅ローンの繰り上げ返済に充てることで、利息軽減効果も期待できます。少しでも働くことで時間をかけて家計は必ず変わります。
+ 現在の普通預金の金利で計算すると、1年間で手取り1万円の利息を得るには、12億5,000万円を預けないといけません(復興特別所得税考慮せず)。100万円預けても利息は1年間で8円。この時代の1万円はとても大きく、家計管理が重要になっています。人生で何が必要か。税制改正という節目に立ち止まって考える機会にしてはいかがでしょうか。(談)

八ツ井慶子(やついけいこ)
生活マネー相談室 代表 ファイナンシャルプランナー
法政大学経済学部経済学科卒業。
2001年、家計の見直し相談センターの相談員としてFP活動を始める。
13年に生活マネー相談室を設立。個人向けの相談をはじめ、執筆、講演活動も行っている。現在、WAFP関東(女性FPの会)会長、城西大学経済学部非常勤講師を務める。
『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(プレジデント社)、『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)、『お金の不安に答える本(女子用)』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

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※掲載の情報は2018年3月現在のものです。

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