メニュー
Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
連載:5分でわかる!サステナブルニュース
2026.8.30
建設業と自然環境保護は、一見すると相反する存在に思えるかもしれません。しかし熊本で開催された「第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)」に協賛・登壇した大和ハウス工業は、建設会社としてネイチャーポジティブに正面から向き合い、着実に実績を残しています。
イベントの概要や登壇内容をレポートした記事に続いて、本記事では、その取り組みの全体像と、大和ハウス工業 常務執行役員の能村盛隆さんが語る「正道を歩む」という経営の根拠を掘り下げます。
大和ハウスグループは、大和ハウス工業 創業100周年を迎える2055年を見据えた「環境長期ビジョン」を策定し、そこからバックキャスティングする形で約3〜5年ごとの環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム(Endless Green Program / EGP)」を推進しています。現在は「EGP2029」(2026~2029年度)が進行中です。
EGP2026は、第7次中期経営計画と合わせ、当初の予定より1年前倒しとなる2025年度で終了しました。
EGP2029 では4つの環境重点テーマ「カーボンニュートラル」「ネイチャーポジティブ」「サーキュラーエコノミー」「水循環」を再特定。3つの段階「調達、事業活動、商品・サービス」に応じて主要施策および管理指標(KPI)を定め、バリューチェーン全体で活動を推進しています。
「ネイチャーポジティブ」では、住宅・建築関連事業において、生物多様性に配慮した緑の量と質の向上を目指し、2029年度までに生態系に配慮した緑被面積(累計2022年度~)200万m2の達成を目標に掲げています。2022年度からの4年間で、生態系に配慮した緑化面積は既に100万m2となるなど、着実に成果を上げています。
この環境行動計画の根底には、どのような経営哲学があるのでしょうか。大和ハウス工業 常務執行役員(人事・サステナビリティ担当)の能村盛隆さんに話を聞きました。
「企業活動と自然は不可分だということです。建物にしても、ほとんどが自然由来のもの。それをまったく無関係のものとして事業を進めるのではなく、その事実をどう捉えるかが大事だと感じています」。
能村さんは、事業と自然を対立軸で捉えることの危うさを指摘します。
「企業活動をやるためには自然を壊しても仕方ない、という発想でいくと、結局、搾取の対象が自然になってしまう。それではサステナブル(持続可能)な企業にはなりません」。
大和ハウス工業 常務執行役員人事・サステナビリティ担当 能村盛隆さん。
この考え方は、大和ハウス工業の創業者精神とも深く結びついています。1955年の創業当時、木を切って建物を建てるという自然への負荷に対し、鉄パイプで代替しようという発想がありました。
「当時そういう意識があったかどうかはわかりませんが、自然に極力手をつけないという発想が根底にあったのかもしれません」と能村さんは振り返ります。
1955年の創業時に発売された「パイプハウス」は、木材の代わりに鉄パイプ(鋼管)を骨組みに使い、現場で簡単に組み立てられる革新的なプレハブ建築の先駆けとなりました。
サステナビリティへの取り組みが明確な「経営課題」へと変わりつつある現在、能村さんは自社の現状についても率直に語ります。
「かつては、深い理解のないまま『うちはこれだけ取り組んでいます』と建前的に示すことで、環境問題に意欲的ですよ、と示すことがあったかもしれない。ですが今は、サステナビリティの取り組みが企業業績にどうつながるのか、裏付けを持って言えるようにならないといけません」。
そのために必要なのは、全社員の「リテラシー」の底上げです。大和ハウスグループでは社員の「eco検定」取得を推進し(2026年度目標:38,000名)、全社向けのeラーニングを整備しています。
「GHG(温室効果ガス)って何?という状態では話ができないし事業も進まない。まずベースの知識がないと、会話が成り立ちませんよね」。
生物多様性への取り組みの具体例である「在来種緑化」は、環境だけでなく、お客さまにも思わぬ効用をもたらしています。
「住んでいる側からすると、庭に木がある、在来種のものがあるというのは、メンタル的にもすごくいいんですよね」と能村さん。自身も自宅で10年ほど植物の世話をしていると言い、「手間がかかればかかるほど、愛着が出てくる。昔だったら『そんなところに木なんか置いてもしょうがない、駐車場にした方がいい』という意識があったかもしれませんが、今はだいぶ変わってきています」と語ります。
TORISIAS ゆいの杜6丁目(栃木県宇都宮市)
在来種の緑化は単に見栄えを良くするためだけではありません。住む人の「ウェルビーイング」に関わる重要な要素となっているのです。
社内での取り組みが進む一方で、課題として見えてきているのがサプライチェーン全体への波及です。大和ハウスグループは2021年に森林破壊ゼロ方針を策定し、その方針に沿った生物多様性ガイドラインを運用しています。森林破壊リスクのあるCランク木材比率を0%にする目標を掲げ、森林破壊ゼロを目指しています。
この点について、能村さんは次のように指摘します。
「サプライヤーにとっては、少しコストが上がるだけで生活に影響が出ることもあります。業界としてレベルを引き上げていくことは大前提ですが、関わる方々すべてを『取り残さない』ようにやっていくことは、非常に難しい課題です」。
大和ハウスグループだけが理解して進めるのではなく、サプライチェーン全体をカバーできて初めてうまくいく。それが現場の実感です。
森林破壊ゼロを目指すメンバーシップ制度“Challenge ZERO Deforestation”を立ち上げ、2030年に向けてこの7つの項目を推進することでサプライチェーン全体で取り組みを推進しています。
要するにSDGsってなんのためにやるんですか——。
そんな直球の質問を能村さんに投げかけてみました。
「会社として真っ当に生き残るためにやるものですよ。利潤追求で利益を上げて配当して税金を払う、それだけじゃなくて、“正道”を歩むためにやっているんです」。
「正道」とは何か。能村さんはこう説明します。
「自然を破壊しようが何しようが、短期的に利益を上げればいいということではなく、課題があれば正しく設定して、正しく管理する。そういう正しい道を歩むということです」。
その先には、大和ハウスグループに関わる人たちが「ちゃんと生活できて、人間らしい生活ができる」社会を実現したいという思いがあります。
能村さんが最終的に目指すのは、ネイチャーポジティブという言葉の「特別感」がなくなる未来です。
「ネイチャーポジティブという言葉を、横文字で切り出して特別感を出してしまうから、みんな敬遠する。当たり前のことを当たり前にやっている、という状態にしていかないといけません。サステナビリティの活動が業務の中にちゃんと入り込んでいて、意識しなくてもそうなっている。そういうふうにしていかないと」。
能村さんは、サステナビリティを単なる「営業の武器」にすることは考えていないと強調します。
「サステナビリティの取り組みを事業に結びつけると言われますが、それを武器にして『営業手法の1つ』にしようとは考えていません。取り組みは当然やるべきことであり、『うちはサステナビリティがこんなにすごいから家を買ってください』というものではない。お客さまも『あそこすごいね』とは感心しても、それが直接の購買動機になるわけではないでしょう」。
目指すのは、他社を出し抜くことではなく、業界全体の水準を引き上げることです。
「業界をリードして、うちが最前線を走るんです、なんておこがましいことは言っていません。当たり前のことを当たり前にやる。同業他社と競うのではなく、環境に良いこと、当然やるべきことのレベルを業界として引き上げていく。そこに大きなポジションにいる当社が担うべき役割があると考えています」。
2055年の創業100周年に向け、大和ハウス工業の「正道を歩む」挑戦は続きます。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。