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Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2026.8.30
梶原さんのロングインタビューはこちら
まち全体をひとつの総合病院に。船橋で始まった、病院起点の地域デザイン
詳細を見る地域全体を「屋根のない総合病院」に見立てた医療ネットワークの構築、医療や健康を起点とした地域デザインの試みなど、地域医療をさまざまな角度から追求する千葉県船橋市の地域密着型病院「医療法人弘仁会板倉病院」。
理事長兼院長の梶原崇弘さんに、医療連携・地域連携と並んで重要だという「職員」への向き合い方、そして梶原さんが描く地域医療の未来について伺いました。
板倉病院は、職員が院内での連絡や情報共有などに使用する病院専用スマートフォン(院内スマホ)やAI問診の活用、患者の睡眠や覚醒状態をスマートフォンで確認できるスマートベッドの導入など、いち早く医療DXを進めていますね。
はい。当院はDXがかなり進んでいるほうだと思います。おかげで、業務効率はすごく上がりました。一度、夫の転勤で辞めた職員が、戻ってきてから復職してくれたんですね。引っ越し先で勤めた病院はDXが進んでおらず、すごく大変だったみたいで「違う病院に勤めたら、板倉病院でいかに楽させてもらっていたかがよくわかった」と言っていました。
DXの推進が働きやすさのベースになっているんですね。
そうですね。最近は学会でも医療DXの話が出ますが、「何時間分の業務が削減できた」という話で終わるんです。大事なのは「その浮いた時間で何をするか?」ですよね。僕はDXは常に、人が人の仕事をするためにあるものだと思います。
「人が人の仕事をする」とは?
僕は「自主性をもって想像する」とよく言ってるんですが、自分が患者さんの家族だと思って治療や看護、介護をやるようになれば、患者さんの様子を見て「このまま退院したら大変だろうな」と気付くことができるようになります。そうしたら、周りの職員に相談したり、「じゃあどうしたらいいか?」を考えられるようになる。それが人の仕事です。
つまり、DXは単純な効率化の手段ではなく、患者さんのことを自発的に考える時間を生み出すことができる方法なんです。
それが結果的に医療の質の向上につながり、患者さんの利益にもなる。
医療はチームで行うものです。実際、医師は自分一人では何もできません。薬剤師さんが薬をそろえ、看護師さんがサポートして、介護士さんが生活介助をしてくれるから治療が進む。つまり、多職種協働で、みんなで治していくんですね。
ましてや高齢者医療になると、全人的なファクターが多いので「治す」の先にある「支える」の部分が重要になる。「治し、支える」だと、治療のあとには家や家族のこと、どんな介護サービスを入れるのか、といったことまで考える必要が出てきます。
だからこそ、働きやすい環境をつくることが大切なんですね。
先ほど医療連携と地域連携の話をしましたが、もうひとつ重要なのが「職員」なんです。まずは職員がいきいきと、ワクワク働いてもらうこと。それが結果的に地域のためにもなります。
今後、梶原さんが取り組んでいきたいと考えていることはありますか?
個人としては、「医療機関の適正配置」について考えたいです。今の日本は、拠点病院(国や自治体が、がんや災害医療など特定の分野において中心的な役割を担うよう指定した医療機関)が多すぎると思うんですね。
ひとつの地域に拠点病院がいくつもあって、多すぎるがゆえにきちんと機能していない。例えば、ある地域では6つの病院が行った乳がんの手術件数の合計が、都内のひとつの病院の手術件数より少なかったんです。だったら一箇所に集約すればいい。医師も手術件数が増えれば手術の腕が上達します。今後、人手不足も加速していくはずなので、機能を集約化することは、地域医療の未来を考える上でも大切なんです。
エリアで医療を捉えることで、見えてくる課題がありますね。
その地域の拠点病院を決めたら、残りの病院は、当院のような地域密着型病院に変わっていけばいいんです。大きい病院は規模を小さくすることを嫌がりますが、機能しないでいるよりも、小さくても地域のニーズに応えて必要とされる病院になったほうがいいじゃないですか。というか、そうしていかないと病院もこの先、生き残れないんじゃないかな、と。
確かに、高齢化は進展する一方、人口は減っていきますから、膨らみ続ける医療費をどう抑えていくかも考えなければなりません。無駄をなくしていくことは大切ですね。
病院は、電気や水道と同じ“社会のインフラ”です。限られたエリアの中に水道会社が3つも4つもあっても意味がないし、おかしいですよね。それと同じで、快適なインフラを守っていくためには、適正配置を考えることがとても重要なんです。
船橋市で機能している「屋根のない総合病院」は他の地域でも実現可能なんでしょうか。
「屋根のない総合病院」という仕組みは、船橋という土地だからこそ機能している部分が大きいんです。地域の先生方と何年もかけて信頼関係を築いてきましたし、僕自身がこの土地で育って、小さい頃から顔を知ってもらっているからこそ聞いてもらえることもある。
でも、「屋根のない総合病院」というコンセプトそのものは、どの地域でも応用できる考え方だと思っています。ただ、それを実現する方法や仕組みは、その土地の医療資源、人口構成、コミュニティのあり方によって全部変わってきます。船橋のやり方をそのまま輸出するのではなく、その地域に根を張っている人が、その地域なりの答えを見つけていくしかないんじゃないでしょうか。

医療法人弘仁会板倉病院 理事長兼院長。2000年日本大学医学部医学科卒。同年同大学医学部消化器外科入局。国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科、日本大学医学部消化器外科などを経て、2012年に院長に就任。以後、地域密着型の中小病院のあり方や実現可能な地域包括ケアシステムの構築に軸を移し、より良い地域医療を追求している。2019年から理事長を兼任。日本大学医学部消化器外科臨床准教授。医学博士、日本外科学会外科専門医、日本在宅療養支援病院連絡協議会副会長、日本病院会病院経営管理士。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

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