CFOメッセージ

ビジネスモデルを変革し、第7次中期経営計画の目標を1年前倒しで達成
当社は1955年の創業以来、社会のお困りごとに対応することで事業領域を拡げながら、着実な成長を重ねてきました。創業40周年にあたる1995年に売上高1兆円を達成し、その後も2012年に2兆円、2015年に3兆円、2018年には4兆円と、2010年代以降はとりわけ力強い成長軌道を描いてまいりました。2022年より開始した第7次中期経営計画の期間においては、コロナ禍の影響に加え、資材価格の高騰や米国戸建住宅事業における住宅ローン金利の高止まりなど、事業環境は決して平坦ではありませんでしたが、掲げた売上高・営業利益目標を1年前倒しで達成することができました。当社グループが持つ「数字にコミットする力」や「右肩上がりの成長を愚直に追求する姿勢」が着実に発揮された結果であると考えています。
加えて、当社が力強い成長を実現できた大きな要因の一つが、ビジネスモデルの変革です。賃貸住宅事業や商業施設事業は、土地オーナーさまからのご依頼を受けて建物を建設する「請負事業」が中心ですが、近年は戦略の一環として、土地の取得から、開発、販売までを一貫して手がける「分譲事業」を拡大させています。賃貸住宅事業では、土地を保有していない資産家の方に対しても賃貸住宅の提案ができるようになり、商業施設事業においては、首都圏や主要地方都市におけるオフィスの開発や、インバウンド需要を捉えたアパートメントホテルの開発等にも取り組んでいます。これらの取り組みは、当社が有する土地情報力や将来需要を読む先見性、そして事業化を着実に進める実行力を背景に進展してきました。自社のバランスシートを戦略的に活用することで、新たな潜在顧客へのアプローチが可能となり、市場ニーズに即した提案活動へと広がっています。こうした変化を牽引する現場の姿に、当社グループの実行力と成長意欲の高さを改めて感じています。今後も請負事業との適切なバランスを図りながら、資金効率と成長の両立を目指していきます。
現在のバランスシートに関する認識
分譲事業の拡大等もあり、足元の総資産は8兆4千億円にまで拡大しており、その過半を占める不動産については、回転率の向上に向けた、滞留資産の圧縮や収益性のモニタリング強化等、不動産管理の一層の強化が必要であると考えています。米国戸建住宅事業の拡大や国内での分譲事業拡大にともない、販売用不動産が増加していること自体は、必ずしも問題ではありませんが、重要なのは、残高の拡大に見合う回収が行われているか、という点です。事業や地域ごとにパフォーマンスの差はありますが、すべての事業において、回転率や保有不動産の内容を継続的にモニタリングし、残高と回収が適切なバランスとなるようコントロールしていきます。
投資不動産については、不動産の質的な見極めの重要性が一段と高まっていると認識しており、現在保有している、または開発を検討している不動産が、社会から求められる不動産なのか、長期的に安定した収益が見込めるかといった点について、市況を注視しながら、現場と対話を重ねつつ管理を徹底していきます。
現在の不動産残高が総資産の過半を占める状態は、価格下落をはじめとしたさまざまなリスクを内包すると認識しており、2026年4月には、グループ全体のアセットマネジメント機能の強化等を目的として、アセットマネジメント戦略本部準備室を新設しました。今後は回転率の改善等を通じて、より安心感のあるバランスシートへと近づけていきたいと考えています。
「眠っている間も金利は働く」
創業者の教えを現在の従業員へ事業環境変動にともなうリスクとその対応
私たちの事業は金利動向の影響を受けやすく、金利が上昇した場合には、住宅ローンを活用されるお客さまの購買意欲の低下や、不動産開発におけるキャップレートの上昇、有利子負債にかかる支払利息の増加など、さまざまなリスクが生じる可能性があります。国内においては、現時点では住宅ローン金利上昇における顧客の購買意欲の低下は顕在化しておらず、資金調達についてもかねてより固定金利調達を進めており、足元での影響は限定的です。また、不動産開発の規模が拡大するなか、金利の上昇にともなうキャップレートの上昇を危惧しておりましたが、金利上昇を見据え、不動産開発のハードルレートの見直しなどを先行して進めてきたことが功を奏し、現時点で業績に対して顕著な下押し要因となる影響は出ていません。しかし、持続的な成長を実現するためには、引き続き、金利上昇によるリスクを的確に認識しつつ、継続的に対策を講じていくこと、そして従業員一人ひとりが金利を意識した行動をより一層徹底していくことが重要であると考えています。
従業員一人ひとりが金利を意識した行動をしていくために
創業者である石橋信夫は、「眠っている間も金利は働く」という言葉を用いて、金利を意識することの重要性を私たちに説き続けていました。現在の従業員には、長期にわたる低金利環境のなかで入社した世代もおり、創業者が重視した金利感度を十分に実感しにくい状況にあります。そうした従業員に対し、金利に対する意識を高めることの重要性を伝えていくことは、私の重要な役割の一つです。
2025年2月に、メッセージを通じて全従業員に「金利のある世界」への環境変化に合わせたマインドチェンジと行動変革を求めましたが、2026年4月には、金利上昇をより自分ごととして捉えられるよう、社内金利(管理会計制度の事業所ごとの投下資本に金利を課す仕組み)の水準を従来より引き上げました。加えて、他の事業ではすでに導入済みであった「滞留資産にペナルティ金利を課す仕組み」を、分譲事業の拡大をふまえ商業施設事業にも導入しました。これらの取り組みを通じて、金利を意識した事業運営を全社的に根づかせていきます。
全国の支店長やグループ会社社長が参加する会議においても、CEO、COO、CFO のそれぞれが金利をテーマに直接言及しており、こうした経営トップによる継続的な問題提起を通じて、現場にも意識の変化が表れ始めています。各事業部・事業所では、不動産の投資回収のバランスや滞留資産の削減を意識した取り組みを引き続き進めていきます。
海外事業を支える地域統括機能と人財育成の高度化
海外事業は、2017年にStanley Martin 社がグループ入りして以降、事業規模を着実に拡大し、2025年度には売上高1兆円を超える水準に到達しました。なかでも米国の戸建住宅事業が成長を牽引しており、重要な収益基盤としての存在感を高めています。海外事業は、国ごとに文化や商習慣が異なり、日本国内では想定しにくいリスクが顕在化する可能性があるため、海外事業を適切に管理できる人財の育成と体制の構築を進めていくことが重要です。
当社では、海外事業の拡大を見据え、2022年よりRC(リージョナル・コーポレート)機能を整備し、役割を明確化したうえで、各国・各地域の文化や商習慣に応じたルールの設定と、実務を通じた経験の蓄積を進めてきましたが、足元の中東情勢に象徴されるように、海外事業を取り巻く環境は不透明さが増しています。このような環境下では、事業拡大を前提とするだけでなく、変化のスピードや不測の事態をふまえ、必要に応じて撤退も含めた判断を機動的に行える体制が、これまで以上に重要になります。そのためには非常時に人財や資金を迅速に国内へ還流できる体制も整えておく必要性があると考えています。
築き上げてきた信用(格付け)の維持と資本効率向上に向けた道筋
経営におけるROEの位置づけとその向上に向けて

コーポレートガバナンスガイドラインに掲げている通り、当社はROEを重要な経営指標の一つと位置づけ、維持・向上を意識しながら経営を推進しています。7次中計では、ROE13.0%以上という目標を掲げ、取り組んできましたが、2025年度は、12.7%という結果となりました。
7次中計で当初発表したキャピタルアロケーションでは、大型不動産開発に2.2兆円を投資し、売却を進めることでネット7,000億円の増加を計画していましたが、4年間の進捗は計画を下回っています。一方で、戦略投資については、6,500億円の枠に対し、住友電設株式会社のM&A や、前述の分譲事業の拡大および米国戸建住宅事業における棚卸資産の増加などにより1兆9,400億円の実績となりました。成長投資全体として、想定以上に進捗したことで、自己資本のコントロールによるROEの改善については、取り組みに一定の制約が生じました。ROEを分解すると、利益率×回転率×レバレッジとなりますが、今まさに我々がROEの向上を図るために重要なのは、回転率の向上だと考えています。前述の従業員への「金利の意識づけ」とさらに「金利の上昇に対応した行動」を強く求めることを継続していきます。
ROEが投資家の皆さまに対する重要な約束である一方で、D/Eレシオは債権者や格付機関との信頼関係を支える指標です。どちらか一方に優先順位をつけるのではなく、双方を意識しながら経営していく姿勢は今後も変わりません。
7次中計期間中に蒔いた種、例えば、国内各事業で強化してきた分譲事業や不動産開発事業における投資、米国におけるアライアンス社との協業、さらには住友電設のグループ化によって生まれるシナジーなどが、中長期的に安定したキャッシュフローの創出に寄与すると考えています。
D/Eレシオの水準に関する考え方
当社の現在の格付はAA−(R&I)です。私はリーマンショック時に、AA 格に満たない企業が社債を発行できなくなる状況を目の当たりにしました。当社グループがそのような状況に陥ることは、絶対に避けなければいけないと強く感じています。
現在、D/Eレシオは約1.0倍まで上昇しており、毎年実施している格付会社とのミーティングでは、債務とキャッシュフローのバランス、資本負債構成が主な論点となっていますが、当社は、ビジネスモデルの変化や成長に向けた戦略的投資の考え方や将来CF の見方について丁寧に説明することで、将来の安定性について一定の理解を得ています。
格付が低下した場合、調達金利の上昇や取引先からの信頼性の毀損につながるリスクがあります。そのため、当社の「稼ぐ力」の強化や成長投資がどのように利益成長につながっていくかを具体的に示し、今後の投資や将来の安定性について外部ステークホルダーの皆さまに安心感を持っていただくことが重要であると考えています。
今後のD/Eレシオの目指すべき水準については、成長投資、財務健全性をふまえつつ、外部環境の変化も考慮しながら検討していく必要があると考えています。
資本コストと株価を意識した経営の実現に向けて
コーポレートガバナンスに関する直近の取り組みのなかで、特に手応えを感じていることの一つが、経営会議の新設により、一部の執行に関する議論を経営会議へ権限移譲したことで、取締役会において、より中長期的な企業価値向上に向けた議論が増えてきたことです。これまでは、各プロジェクトの執行に関する議論に多くの時間を割いていましたので、より中長期的な企業成長について議論をしなければいけないという問題意識がありました。多様な知見、経験を持つ社外取締役の方のパフォーマンスを最大限に活かすことを企図して実施したこの改革は、非常に意義があったと思います。
投資家の皆さまとの対話内容は継続して取締役会等で共有しており、経営や戦略の改善に活かしています。また「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」というテーマのもと、私自身が複数回にわたって、取締役会で投資家の皆さまからの意見や他社の取り組み事例の共有を行い、議論や意見交換も重ねてきました。今後の経営戦略についても、取締役会等における社外取締役からの意見やアドバイス、そして「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」において議論してきた内容を盛り込んでいきたいと思います。
売上高10兆円に向けては、現在のガバナンス体制をベースに、監督機能と執行機能の実効性をさらに高めていくことが重要です。加えて、成長投資を進めるなかでも、選択と集中、そして全体のリスクコントロールを徹底していく必要があると考えています。
投資家や株主の皆さまへ

現在、リスクフリーレート(10年国債)は上昇傾向にあり、理論的には株主資本コストも上昇することになります。そのため、今後は当社の成長戦略や資本効率改善に向けた具体的なストーリーを、これまで以上に明確に示していく必要があると考えています。
当社は多角的な事業展開によって多様な社会ニーズに応え、事業を拡大してきた結果、市場環境の変動があるなかでも安定した業績を維持し、16期連続の増配を実現できました。こうした成長性と安定性を兼ね備えた企業であることを、引き続き投資家・株主の皆さまに丁寧にお伝えするとともに、還元方針についてもよりわかりやすい説明を心掛けながら、対話を重ねていくことで、当社の企業価値を正しくご評価いただけるよう努めてまいります。




