大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

CFOメッセージ

CFOメッセージ 代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武

事業環境やビジネスモデルの変革に応じた最適な資本戦略を追究する

大和ハウスグループは、時代に応じてビジネスモデルを進化させながら成長してきました。創業当初は請負事業が中心でしたが、その後、分譲事業へも事業を拡大してきました。そして事業用定期借地権制度ができたことによる土地所有者の「土地を売らずに貸して収益を得たい」というニーズに応えるための事業を手掛けるようになり、さらには、当社が購入した土地に商業施設や物流施設などを開発する不動産開発事業も展開するなど、私たちは多くの土地情報と様々なテナントさまのニーズをつなぐ事業を拡大してきました。特別なことをしてきたわけではなく、「世の中の役に立つ」という創業者精神のもと、お客様のニーズに真摯に向き合い、事業を行ってきた結果であり、当社グループらしい進化の形として、これからも変革は続くと考えています。
持続的な成長と企業価値の向上を追求する企業として、足元では、金利の変動をはじめとした多岐にわたる事業環境の変化や課題に直面しながら、ビジネスモデルを変革し、状況に応じて資本戦略の見直しを行っています。

変動する世界経済・金利のある世界への対応

日本では、長らく低金利の時代が続いていましたが、徐々に「金利のある世界」へと移行が進みつつあります。足元では、大きな影響を受けている状況ではありませんが、金利上昇が事業に及ぼす影響は決して軽微なものではないと考えています。
例えば、多くの方が住宅を購入する際には住宅ローンを利用されますが、住宅ローン金利が上昇すると、お客さまが負担するコスト(支払総額)は増加するので、購買意欲の減退に繋がり、住宅販売に影響を及ぼす可能性があります。また、不動産開発事業における収益性も金利の影響を受けます。建物が完成し、安定稼働した後に、物件を売却することで、利益を得るわけですが、売却の際のキャップレート(投資家の期待利回り)が上昇すれば、売却が予定通りに進まなくなる可能性があります。さらには、有利子負債に対する支払利息が増加することで費用が増えます。当社では金利上昇のリスク等を鑑み固定金利と変動金利のバランスをとりながら資金調達をしていますが、変動金利の部分はもちろんのこと、将来的には固定金利による調達コストにも影響が出ることが想定されます。これらのリスクを鑑み、今後の事業展開に向けた対応策を講じています。

— 変動する金利への打ち手

2023年2月に将来の金利上昇を見越して、不動産開発におけるハードルレートであるIRR(内部収益率)の基準を引き上げました。ハードルレートの引き上げについては、当初、積極的に投資を行いたい現場からネガティブな反応もありましたが、不動産開発の規模が拡大していく中、金利上昇へのリスク対応は重要であり、実施しました。今後想定される利上げの範囲であれば現在のハードルレートの水準で対応は可能だと見ています。
直近では、従業員に対して「金利が発生する世界への対応」という内容のメッセージを発信しました。私自身が大和ハウス工業に入社した1980年代の高金利時代の経験を踏まえながら、業績に与える影響額や、創業者の「金利は眠っている間にも働く」といった言葉を用いて、変革に対する意識の醸成を行っています。長らく低金利の環境が続いてきましたが、従業員一人ひとりが金利上昇のリスクを認識し、今後の営業活動、投資判断ができるようマインドチェンジすることが大切であると考えています。
また当社では、現場への意識づけ、資産の回転率向上につなげることを目的に「社内金利制度」を設けています。管理会計の仕組みの1つですが、各セグメント、各事業所で保有する資産に対して金利を賦課させることで、現場に金利を認識させる制度です。この制度があることで、現場はよりキャッシュフローを意識し棚卸資産を回転させること、お客さまとの契約の回収条件の改善に動かなければならなくなります。金利への意識は現場にも浸透していると感じています。今後も、現場の金利への意識、資産回転率向上への意識が薄れないように、効果的な策を検討していきたいと考えています。

変わりゆくビジネスモデルと今後の成長戦略

代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武

私が総資産回転率の改善は不可欠であると考えている背景には、以前は0.95倍から1.05倍の範囲内に収まっていた総資産回転率が、2020年のコロナ禍を経て、現在は0.8倍程度にまで下がっているからです。これは、投資が回収を上回っているということを意味しています。事業拡大に伴い、成長投資が回収より先行している部分はありますが、仮にこの状態が続くと、環境が変化した際の財務運営の舵取りが難しくなるリスクがあると認識しています。CFOとしては、第7次中期経営計画の最終年度としていた2026年度までに、万難を排して改善していきたい思いです。

— 海外事業における成長の方向性

現在、海外事業の構成比が徐々に高まり、なかでも米国事業への投資(M&Aや不動産投資)が増えています。海外への投資については、国内での投資と比較してリスク管理がより重要であると考え、海外でのプロジェクトについては、日本国内における投資ハードルレートより投資エリアのリスクに応じた高い水準を設定しています。またモニタリング機能の強化や現地子会社との連携の機会を増やすなど、慎重に海外事業を推進しています。
米国政府が導入を進めている関税については、米国の戸建住宅3社がカナダから輸入する木材が影響を受ける可能性がありますが、2025年4月にカナダ産木材は追加関税の対象外との発表もあり、現状は業績への影響は限定的であると見ています。米国の経済全体が急激な物価上昇やスタグフレーションに直面するリスクは考えられますが、人口が増加するエリアでの住宅需要は依然として強く、事業機会は多いと見ています。当社グループの成長において米国市場は引き続き重要な位置付けであり、今後も注力していきます。

— 国内事業の課題と対応策

日本国内では、人口減少に伴う世帯数の減少などによる住宅市場の縮小や建設業界における従事者の激減は大きな課題です。当社では初任給の改定などの人財確保に向けた施策や、現場の業務効率化と生産性の向上を目指す「建設DX」の取り組みを進めています。また、事業機会としては、老朽化した建物の建替え需要などのニーズはまだまだあると考えており、中でもBIZ Livness(事業施設・商業施設など非住宅分野の売買仲介、リノベーション・リフォームなどの不動産ストック事業)をより伸ばしていく必要性があります。
財務面では、戸建住宅のみならず、賃貸住宅、商業施設、事業施設でも積極的に展開している分譲事業により棚卸資産は増加傾向にあります。計画通りに進んでいない土地などに対しては、各事業部門に対応を任せるのではなく、コーポレート部門も一緒になって、全体最適を考えながら積極的に資金化を進めています。

資本戦略とROE13.0%へのストーリー

資本効率としてROE13%以上と財務規律としてD/Eレシオ0.6倍程度は優先順位をつけず両立したいと考えています。ROEは株主さまやエクイティ投資家の皆さまにお約束している指標ですが、一方でD/Eレシオは、金融機関や債券保有者をはじめとするデッド投資家の皆さまに対しての責務であると考えています。ROE目標を達成するために自己資本を抑えると共に、D/Eレシオの水準も見なければならないため、そのバランスは非常に難しいと考えています。
持続的な成長のための資金調達が必要な当社にとって、現在AA格である信用格付の維持は重要です。昨今の金利上昇や、特に2008年のリーマンショックの際にAA格以上でなければ社債発行ができなかったという経験などを踏まえると、今が重要な局面だと認識しております。D/Eレシオ0.6倍程度に向け資産の回転率向上、グループ内資金融通なども活用した有利子負債の圧縮を着実に進めていきます。投資が先行しているということはいずれ回収をしなければならないため、不動産売却による資金の回収、売却益の計上等、中期経営計画の期間中に様々な手を尽くしてROEとD/Eレシオの目標に向けて努力したいと考えています。
次期中期経営計画においては、どれだけの成長資金が必要であるか、また利益の積み上げによる自己資本の状況を鑑み、改めてD/Eレシオの水準を検討していきます。当社グループの成長のためには、アクセルとブレーキのバランスを考えながら、ビジネスチャンスをつかんでいくことが重要ですので、格付会社の方々を含めたステークホルダーと、丁寧なコミュニケーションをとっていく必要があると認識しています。

代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武

また、2027年度からは新しいリース会計基準が適用となり、従来オペレーティング・リースとして扱われていた取引がバランスシートにも影響を与えることが想定されます。既存のD/Eレシオについても、基準が変更された時に見え方が大きく変わりますが、キャッシュフローは変わらない為、影響はないと考えています。システム変更などの社内準備は進めていますが、会計監査人とも綿密なコミュニケーションを取りながら、会計基準変更により影響を受ける取引について、より詳細な検証を行っていきます。

— 株主還元等により自己資本をコントロール

当社グループは成長投資、株主還元ともに重要だと捉え、第7次中期経営計画では配当性向を35%以上、配当下限額も設定し、その基準を守りつつ成長投資を進めています。株価や投資案件の状況を鑑み、自社株買いについても機動的に実行することで、自己資本をコントロールし、ROE目標の達成を目指していきます。
また、当社株式への投資魅力をさらに高めるとともに、当社グループのサービスをご利用いただくことによって事業内容をより深く知っていただくことを目的として、2025年3月より株主優待制度を拡充しました。株主構成を見ると、個人株主の比率は約12%に留まっており、東京証券取引所平均と比べると低い水準です。当社グループの売上高の半分は戸建住宅やマンション、賃貸住宅など、個人のお客さま向けの事業ですから、より多くの方に当社の株式を保有していただくきっかけになればと考えています。個人株主の比率が増えることで、資本コストの低減にもつながると考えています。

資本コストと株価を意識した経営の推進

— 企業価値のさらなる向上への取り組み

2025年5月に、上場来高値を更新したことを大変嬉しく思います。2025年2月に発表した第3四半期決算発表の内容が良かったことに加えて、同日にリリースした株主優待の拡充も影響したのではないかと考えています。しかし、私たちは現在の株価水準に満足していません。PERは11~12倍程度ですが、これはプライム市場上場企業の平均(16.5倍)や建設・不動産セクターの平均(建設:14.9倍、不動産:14.0倍)よりも下回っています。将来に向けた成長ストーリーをしっかりと投資家にお伝えし、最適な資本政策を追求することでさらなる株価の向上を目指していきます。

PERの数値は日本取引所グループ公開の2025年4月末時点加重平均を参照。

— 資本コストの改善に向けて

当社グループの資本コストは約7%(CAPM理論より算出)であると認識していますが、十分なエクイティスプレッドも意識しながらROEの目標値を設定しています。成長戦略の推進の途中経過をしっかりとお見せするなどの適時適切な情報開示に加え、サステナビリティ経営の推進や強固なガバナンス体制の構築など、資本コストの低減に向けて取り組んでいきます。また、これまでの実績も含めて、当社の今後の成長性についての理解を更に深めていただけるよう、持続的な成長と企業価値の向上を追求する企業として、多様な投資家の皆さまとの建設的な対話を今後も継続していきます。

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