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インタビュー

税理士事務所リリーフ 代表税理士 髙橋達徳

資産を守るためにも、新しい不動産への投資は必要。提案書には、自分の資産だと思ってストーリーを描きます。

税理士を格好良い仕事にしたい

インタビュアー(以下:I):コンサルティング業務に力を入れられているとお聞きしました。

髙橋税理士(以下:髙橋):税理士の仕事は3分の1が申告業務、次の3分の1はお客様の悩みを聞くこと、残りの3分の1が具体的にお客様の悩みを解決するために行動すること、この3段階だと思っています。通常の申告業務だけではなく、加えてお客様のお悩みを伺い、解決することがとても大事です。そのため、私はコンサルティングに注力したいと考えています。

I:主なコンサルティング内容は、中小企業の経営に関することでしょうか。

髙橋:中小企業の経営改善は当然行っています。どうしたら売り上げを伸ばし、経費を減らせるのか、関与先の社長と一緒に話し合います。それに加えて、経営と付随してご自身の会社をどう継いでいくかという、事業承継の話も数多くあります。今の経営には直結しないかもしれませんが、会社経営を支える家族のことで悩む社長も多くいらっしゃるので、そこまで踏み込んで話を聞きます。将来10年、20年後、若い社長であれば30年後、どのように事業を転換していくか、どのように承継していくかをなるべく早い時期に話して、対策を考えていきます。

I:税理士事務所でも承継問題が増えているとお聞きします。何か対策はされていますか。

髙橋:今、税理士事務所自体が承継問題に直面しています。ほかの中小企業同様に採用が厳しくなっています。私は「税理士を採用できないのであれば税理士を生み出してしまおう」という考えです。現在、私どもの事務所のメンバー3名が税理士試験を受けていて、なるべく早い段階で合格できるように、学費の援助、仕事面での時間的な配慮をしています。若い人に入ってきてもらって、どうしたら彼らが税理士試験を合格できるか、合格した後にどうしたら活躍できるかをアドバイスすることで、事業としても広がりますし、事務所のメンバーとしても人生の幅が広がっていくわけですから、相互に良い関係を築ければと思ってやっています。いろいろな人がトップに立てるような状態にしたいので、組織としてさまざまなメンバーが出てくれるようになってほしいですね。

I:髙橋税理士の事務所は若い方に人気が出そうです。

髙橋:「税理士を格好良い仕事にしたい」というのが私のテーマです。学生さんが税理士という仕事をイメージした時、難しい試験を受けてでもなりたいと思えるような仕事にしたいのです。AIが取って代わる仕事の一つに入ったことで、将来なくなる仕事に就いてもしょうがないと思われてしまうかもしれません。しかし、税理士の仕事はそれだけではなく、AIにはできないお客様の悩みを聞いて解決することが仕事の一部であって、それによってお客様に満足してもらえる良い仕事です。イメージを変えたうえで、新たに学生さんに税理士を目指してもらいたいと思っています。

資産を守るためには、「攻める」ことも大事

I:老朽化する賃貸住宅も増えていますが、どのような相続対策をご提案されることが多いのでしょうか。

髙橋:個人的には、建て替えよりもランドセットで不動産を増やしていくことが重要だと考えています。地主や資産家の方には、ランドセットで不動産を増やすことに抵抗感を持つ方も多く、「こんなに土地を持っているのに、なぜ新しいところを買うの?」と言う方もいらっしゃいます。しかし、建て替えだけでは資産は増えていきません。建物は古くなるという性質上、いずれどこかのタイミングで建て替えをする必要はありますが、それに加えて、新しい土地を買ってそこに賃貸住宅を建築するなど、資産を増やしていく、1+1で2にしていくことがとても重要です。なぜなら、そのほうが将来売却しやすいからです。先祖代々の土地は気持ち的にも売却しづらいですし、税金の面でも重くなります。
例えば、相続税の納税資金など、急にお金が必要になったとき、先祖代々の土地は売りづらくても、20年前に親が買ってきた土地と建物があれば、売却することで手元にお金が入ってきます。20年たっていれば借入金の返済もかなり進んでいるでしょうし、売却時に、もともと買った取得費があるため大きな所得税がかかることも少ないでしょう。
ただし、「今の資産を守るためにも、新しい土地を買ってランドセットで建物を建築していく」ことを理解しているお客様はなかなかいらっしゃらないので、戦略として必要だと理解していただけるような資料を準備し、取り組んでいきたいと思っています。
TKCでも資産防衛が大事だとよくいわれていますが、増やしていくからこそ守れることもあります。不動産は生き物で、価格は上下するものです。状況に応じて不動産を購入したり、時には売却したりといった選択肢が出てくるので、売却のシミュレーションもしっかりお示しした上で進めていくことが大事だと思っています。

I:貸住宅経営において、注意すべきポイントがあればお願いいたします。

髙橋:不動産賃貸業で一番難しいのが、税金計算上の所得、利益とキャッシュフローの差が生まれることです。そこをきちんとお客様に理解していただく必要があります。税金計算上は黒字だけどキャッシュフローはマイナスなのが最悪です。逆に、税金計算上はマイナスだけどキャッシュフロー上プラスなのは良いわけです。それを施設ごとに、現時点と長いスパンでシミュレーションします。 不動産を買うときには、試算表を作成して返済シミュレーションまで組みますが、多くの方が買う時にしか見ません。しかし、買った後にも経過観察が必要です。長期的なスパンで計画を見ていくことが大事です。確定申告で税金を申告するだけでなく、プラスアルファでそのような情報、資料をつけているところが私どもの事務所の強みです。

I:関与先様へのご提案ではどのようなことを心掛けられていますか。

髙橋:提案では、自分の資産だと思ってお客様にご説明するよう心掛けています。提案書にはストーリーを描き、皆様にお話している時を想像しながら作成します。せっかく良い提案をしても、見せ方によっては伝わらないこともあります。今後はさらに資料の見せ方を研究して、色使いなども深掘りして作り込んでいきたいですね。1時間の打ち合わせの中で資料の内容をすべて理解していただくのは難しいので、見てほしいポイントを工夫しながら資料のクオリティを上げていきたいと思っています。

ホールディングス化の提案機会が増える

I:企業における資産の承継においては、どのように取り組まれていますか。

髙橋:昨今の不動産価格の上昇によって、不動産の活用方法も変わってきています。また、これからも変わっていくことが予測されます。状況によって不動産の活用方法を変えるための準備の一つとして、企業のホールディングス化があります。ホールディングス化することで、将来どの選択肢でも取れるような体制を整えることができます。弊社でも、中小企業オーナーに対して、事業会社のホールディングス化の提案機会が増えています。
ある事例では、将来の事業承継を目的として、事業会社と資産を管理する資産管理会社を兼任するようなかたちで持ち株会社を設立しました。中小企業には、事業会社の中に個人的なものと事業的なものが混在してしまうケースがあります。ファミリーの資産と事業の資産を区分けすることが大事です。そこをしっかり分割して管理することで、事業の収益性が正確に見えてきます。逆に言うと、ファミリーの資産は当然残しておいたほうがいいわけです。

I:個人においても法人化は有効な手立てでしょうか。

髙橋:不動産賃貸業は事業なので、個人的には法人でやるべきだと思っています。法人化の多くの場合、利益が出ている人だけを法人化させるという傾向があるようですが、私は赤字であっても法人化したほうがいいと思っています。個人事業主の赤字は、白色申告であれば基本的に単年のみで、青色申告をすれば3年間繰り越せます。法人であれば赤字は10年間繰り越せます。減価償却も、個人であれば耐用年数として決まった年数で償却しなければなりませんが、法人であれば任意償却なので調整することができます。そのような点からも、個人的には、ほとんどの不動産賃貸業を行われている方は法人にしたほうが良いと思っています。

I:大和ハウス工業と一緒にお仕事をされる良さはどのようなことでしょうか。

髙橋:土地を購入するにあたっては、私が具体的に不動産を紹介することはなく、プロである大和ハウス工業さんにお任せしています。
大和ハウス工業さんは自ら土地を購入して販売しているのが強みだと思います。その土地が商品価値的に良い場所だと分かって購入し、建築して、商品として売却されているわけです。出口の見込みがある上で土地を買っているということイコール、市場として価値があるものだと判断しているので、お客様からしても安心感があります。知らない土地を第三者から買って、建築するのでは、ランドセットのハードルはなかなか低くなりませんが、大和ハウス工業さんが買って、建築して、商品化したものを買うということであれば、商品として成り立っているものですから、そこの安心感は強く、ランドセットを買うハードルも下がると思います。

I:本日はありがとうございました。