インタビュー

大和ハウス賃貸リフォーム株式会社
代表取締役社長 森田一彦
建物の価値向上を通して賃貸住宅オーナーの経営に役立つために、ご提案を続けていきます。
賃貸住宅専門のリフォーム会社として設立
インタビュアー(以下:I):賃貸住宅のリフォームに特化された背景を教えていただけますか。
森田:大和ハウス賃貸リフォーム株式会社は、大和ハウス工業がよりお客様に寄り添うための事業本部制に移行するに伴い、リフォーム事業においても賃貸住宅専門として分社化し、2021年4月に、賃貸住宅のリフォーム専門会社としてスタートしました。
これで、集合住宅事業領域として、賃貸住宅を建築し、長期的な経営をサポートする大和ハウス工業、建てていただいた建物を管理・運営する大和リビング、資産価値向上のためにメンテナンスや、リフォーム・リノベーションを行う当社という3つの会社が揃いました。3社がさらに連携を強化することで、オーナー様の大切な資産である賃貸住宅の価値を維持・向上させ、長期的な賃貸住宅経営のサポートが可能になったといえます。
I:個人住宅のリフォームとの違いはどこにありますか。
森田:個人の住宅の場合、そこにお住まいになるのはご本人やご家族ですが、賃貸住宅の場合は、別のご入居者が住むことになります。個人の住宅のリフォームやリノベーションを行う場合、ご本人やご家族の思いをかたちにすることが必要ですが、賃貸住宅の場合は、市場のニーズにマッチした建物にすることが必要です。和室から洋室へ、部屋数より広いLDKへ、最近ではテレワークスペースなど時代とともに入居者様のニーズは変化しています。
賃貸住宅オーナー様にとって賃貸住宅の運営は「経営」です。「経営」である限り、常に収支を念頭に提案をしなくてはいけません。そのために世間では今どのような部屋が喜ばれているのか、今後、どのような部屋が必要なのかを考え提案しています。
実際のオーナー様から伺った話ですが、ご入居者は、外装よりもむしろ内装の変化に対して敏感なのだそうです。内装が良くなると、大変喜んでいただけるようです。
ご入居者に選ばれる賃貸住宅のために
I:賃貸住宅の経営は長期に亘りますので、その間の変化にも敏感に対応する必要がありますね。
森田:新築時には市場に合った賃貸住宅であっても、築年数が経過すると、市場の要望とはかけ離れていくこともあります。必要に応じて手を加えていかなくては、次の入居者が決まらず収支が悪化することになります。一方、新築で建てられる賃貸住宅は、最新の設備や機能、デザインが採用されていることも多く、市場価値という点で差が開いていくことになります。
築年数や立地条件は変わりませんが、賃貸住宅の価値を維持・向上させていくことで、ご入居者から選ばれ続ける賃貸住宅へ進化させることが重要です。さらに、家賃相場を確認し、現状の家賃より上げることができれば、効果は非常に大きいと考えます。空室のまま時間が経過すれば機会損失となり、大きな差となります。オーナー様とご入居者、双方が満足できるリフォーム・リノベーションを追求していきます。
リノベーションは費用が大きくなりますが、オーナー様によっては経費や税金に対する対策になる方もおられますので、特にそのような場合にはTKCの先生方からのアドバイスをお願いします。
オーナー様へさまざまなご提案をさせていただいていますが、私たちは先手を打つ提案を行うことがオーナー様のためだと考えています。早めにご提案することで、オーナー様は考える時間が増えます。経営のためにお考えいただく機会をご提供することが大切だと考えています。
I:「次世代に遺す」ことを考えるオーナー様も多くいらっしゃいそうです。
森田:相続の際、定期的にリフォームされた価値ある賃貸住宅であれば、後継者がスムーズに引き継ぐこともできるでしょう。手入れを怠り、早急にリフォームが必要な状態では、せっかく愛着を持って経営してきた賃貸住宅も、後継者がためらうことになりかねません。経年劣化がひどく、市場価値が低い施設を喜んで相続しようとは思いにくいものです。
ですから、賃貸住宅を経営されている立場として、少しでも良い状態で次世代に渡してあげてほしいと思います。それも私たちと一緒に考えませんかとご提案を続けています。
I:価値を維持し、次世代に遺すためには、大和ハウス工業、大和リビング含めた、長期に亘る3社の連携が必要となりそうです。
森田:3社がお客様を中心にサイクルを回しながら、集合事業領域として、密に連携を図っていく必要があります。
私たちのお客様には、世代を超えて大和ハウスグループとお付き合いいただいている方がたくさんいらっしゃいます。親世代が大和ハウス工業で賃貸住宅を建てて、そのまま子ども世代が引き継いだ場合、建物だけではなく管理業務から保守メンテナンスの部分まで引き継がれています。さらに、そうした商品やサービス業務だけではなく、お気持ちや信頼感、営業担当者との関係まで含めて、引き継がれています。そして、将来にわたって、何億円もの投資を大和ハウスグループに全面的に託されているわけです。長くお付き合いのあるお客様と接していると、そのようなお気持ち、ご期待をひしひしと感じます。
まさに、それがブランドというものだと思いますが、そういうお客様の信頼を裏切るようなことがあってはいけません。お客様の思いを真摯に受け止め、期待を超えるような仕事を常に行わなければなりません。
こうしたご期待に応えるためにも、私たち3社は、常に連携を図り、お客様と共に歩んでいく必要があります。現在、うまく連携をとることができていると思いますが、さらに協力体制を強化していきたいと思います。
事業領域を広げながらオーナー様に貢献
I:最新のリフォームメニューを教えていただけますか。
森田:生活に直結する環境を整えるアイテムが注目されています。空気環境を良くするために、調湿機能のある壁材(エコカラット)は以前から注目されていますが、集合住宅での採用はほとんどありませんでした。また、窓を2重窓にする断熱工事は補助金もあり、特に注目されているアイテムです。窓の結露防止やエアコンの光熱費削減などが見込まれるため、ご入居者への訴求ポイントになります。また、水に関しては、話題となっているウルトラファインバブル(UFB)があります。一般的にはシャワーなどの部分的な使用ですが、建物すべての水をUFBに変えることもできます。ネット検索時に入居を検討されているお客様に「あっ!」と思っていただけることも必要だと思います。
I:賃貸住宅以外でも、業務を広げられているとお聞きしています。
森田:賃貸住宅を経営されている関与先様だけではなく、関与先様の事務所やご自宅のリフォームやリノベーションも行っています。病院を経営されている方で、クリニックと自宅併用の建物のリノベーションを手がけました。何度か改装が行われた施設でしたが、建て増しすることなく、リノベーションによって、スペースを効率的に活用し、病院経営にもお住まいにも快適な施設をつくることができました。
また、賃貸住宅ではありませんが、オーナー様に健康的で長く生活していただくために、オーナー様のご自宅の、断熱工事をおすすめしています。
オーナー様が長期的に賃貸住宅経営を行うには、健康でいていただくことが何より大切なことです。ヒートショックは、入浴時だけではなく、朝、起床時に寒い寝室から暖かい部屋へ移られたときなどにも起こります。オーナー様に健康的に長く生活していただくため、断熱工事は重要です。
日本でも、窓の断熱化に対して補助金を出すなど、国としても対策が始まっています。窓だけでなく、床下、小屋裏などを断熱化することで、より健康的に長く生活していただくことは、先生方にとりましても、大切な関与先様を守ることにつながると思います。
また、不動産を保有されている関与先様も多くいらっしゃるため、売買をはじめとした不動産事業にも強化しています。
関与先様へご提案いただけるように情報提供を続ける
I:今後のご活動を教えていただけますか。
森田:現在、空き家の増加が大きな問題となっています。今後人口が減少し、ストック物件が増加していく中で、建物のクオリティを維持しながら、賃料収入を得続けていくということは、本当に大変なことだと思います。
大和ハウスグループとしてご入居者様確保のためには、地域コミュニティーの活性化が必要だという考えのもと、大和ハウス工業、大和リビング、大和ハウス賃貸リフォームの3社で「D-ROOM地域共生基金」を立ち上げ3社の収益の一部を寄付金として、全国10団体に贈呈しました。この活動を継続することによって、地域コミュニティーの活性化の一躍を担うことができれば、ご入居者の確保に役立ち、オーナー様に還元できると考えています。
現在、機会があれば、大和ハウス工業、大和リビングと一緒に、TKCの先生方の事務所にも訪問させていただいています。また、私たち大和ハウスグループの持つ賃貸住宅経営に関する経験やノウハウを少しでもお伝えできるように、さまざまな会合や会議、研修会などにも訪問させていただいています。 事例のご紹介、リノベーション・リフォームのトレンドなど、ご用命いただければ、全国どこでも伺いますので、これからもよろしくお願いいたします。