インタビュー

TKC関東信越会 茨城支部 川井義久 会員
精力的な活動で関与先さまの有意義な資産活用を支えるTKC会員にお話を伺いました。
※本コンテンツは、情報誌TKC&D CREARE vol.85掲載記事のロングバージョンです。
これからの時代に必要な不動産活用の視点とは
自ら経験するということ
インタビュアー(以下:I):福祉事業に取り組まれているとお聞きしました。
川井会員(以下:川井):はい、税理士法人を運営する傍ら、1995年に社会福祉法人 廣山会を設立し、現在では特別養護老人ホームやデイサービス、保育事業など展開しています。これらは、『自利利他の精神を通して地域貢献を果たしたい』という思いから取り組むことになりました。
実は、大和ハウスさんとの出会いも、2002年のグループホーム建築がきっかけです。以降、複数の介護施設の建築や増改築、税理士法人では事務所、個人では賃貸住宅(3棟)の建築でもお世話になり、ずいぶん長いお付き合いとなっています。
こうした経験があるため、関与先から不動産活用の相を受けたときには、自信をもって大和ハウスさんを薦めています。というのも、ただ賃貸住宅などを建てるだけなら、地元の工務店という選択肢もあるでしょうが、“資産活用”という観点で捉えると、将来に向けた信頼性はとても重要です。質の高い建物を建て、きちんと管理することで、資産としての価値を保持していく。大和ハウスさんはそういった提案をきちんとしてくれる企業だと、私は思っています。
I:ご自身でも賃貸住宅を所有されているのですね。
川井:私の場合、両親が所有していた貸家を引き継ぎ、老朽化などの状況に応じて建て替えるなどして維持しているものばかりです。ウチはもともと農家でしたが、私が小学生の頃、家族だけでの農業に限界を感じ、空いている土地に建てました。母からは「毎月の賃料が生活の足しになり、当時はとても助かった」と聞いています。いま、社会福祉法人の施設が建っている場所も、もともとは梨畑だったんですよ。
実は、所有物件の中に築10年の賃貸住宅があるのですが、今回初めて“賃料の値上げ”を実現しました。なかなかないことだと思います。信頼できるパートナーである大和ハウスグループの力を借り、『良い物件を良い状態のまま維持し続けること』が、いかに大切かを改めて実感しました。
I:貴重なご経験だと思います。
川井:ですから、関与先に土地活用を提案するにあたり、自分で経験してみることの大切さを実感しています。もちろん、大和ハウスさんをご紹介して後はお任せ。というのも良いのですが、その前に『目的に合わせた注意点』や『計画を進めるにあたって気をつけたいこと』など、経験者ならではのアドバイスをすることが、関与先のお役に立つと思っています。
しかしながら、不動産活用はいま重大な転換期を迎えているといっても良いでしょう。建築費の高騰による利回りの悪化によって、収益の柱・事業化を目的に、所有地の活用や分譲物件を購入するというのは、都市部であればまだ余地はあっても、家賃水準の低い地方では厳しいと言わざるをえません。こうした地域性に左右される傾向は、これからも強くなってくると思われます。
地域性や社会情勢を考慮し進める不動産活用
I:では、どのような方に土地活用を提案すべきなのでしょうか?
川井:社会情勢や経済の動きを考慮すれば、相続や事業承継の対策が必要な方が中心となるでしょう。前提としては、まず「活用できる土地がある」こと、自己資金が少なくても「賃料で融資の返済ができる」こと。そして、大きな収益性(利益)を期待するのではなく、固定資産税や管理・修繕費の分が賄えれば良いという、最低限の考えで進めることが重要だと思います。
もちろん、遊休地の維持管理に悩まれている方も対象となりますね。
I:関与先さまの意思や状況を把握する必要があると。
川井:関与先を見渡し、「そんな方はいない」という会員の方は多いかもしれません。現状では私も、親族や親しい友人などを紹介するケースが多く、それぞれがリピートしていて、新規の案件はほとんどありません。いまは、税理士として積極的に不動産活用を推進するというよりも、自身の経験や感想を伝え『どうしても必要であれば』と、相手の気持ちを確認しながら進めている状態。あくまで地域性にもよりますが、『土地活用は“儲ける”から“課題の解消”へ』と、主たる目的をシフトしつつあると思います。
本誌の実例レポートにも時折紹介されていますが、『事業転換や縮小を受け、新たな収益の柱として期待される不動産活用』などは、ある程度の人口を有する都市部であれば成り立っても、地方では難しいかもしれません。どちらかといえば、地域性に左右されるスキームだと思っています。
資産の見える化を相続に役立てる
I:相続対策へのお考えについてお聞かせください。
川井:関与先の資産を取り巻く課題の一つに挙げられるのが相続です。家族の資産を守り、対策に万全を期するため、やはり“見える化”が重要だと私は考えています。私も先日、「あなたの財産はどこにある?」と妻から聞かれました(笑) こんな感じで、家族が知らないケースは珍しくないと思います。
金融資産では、預金通帳や株券などの電子化が進んだことで、相続後に初めて分かるということがあるかもしれません。しかしその場合、納税によって実際の相続財産が目減りするだけのこと。
重要なのは不動産です。把握していなければ、新たに納税資金の調達が必要となることが考えられます。すぐに売却できるならまだしも、上手くいかないケースも珍しくありません。
I:早い時機から資産の全体像を把握すべきですね。
川井:複数の不動産を所有されている方は特に、何処にどんな物件があるのか、そして『いま、どんな活用状況なのか』ということを、相続を意識した時点で把握しておくことが大切だと思います。もちろん、ご家族だけでなく、いっしょに考える私たちにも共有いただくことが必要です。
そのためにも役立てたいのが、大和ハウスさんの「不動産の見える化」といったサービス。上手に活用することで、関与先の確かな相続対策をサポートしたいと思っています。
川井 義久(かわい よしひさ)
茨城県生まれ。1985年に税理士登録。医業経営コンサルタント。川井義久税理士事務所を1987年に開業。2005年にはひたち野総合税理士法人を設立し、代表社員を務めておられます。これまで、TKC全国会社会福祉法人経営研究会代表幹事、TKC関東信越会副会長、TKC茨城支部大和部会長などを歴任。1995年には社会福祉法人廣山会を設立。
本誌創刊号(2003年10月発行)の実例レポートにて、廣山会さま開設のグループホーム「プルミエールひたち野」をご紹介しています。