インタビュー
TKC千葉会 京葉支部 宇田川滝也 会員
精力的な活動で関与先さまの有意義な資産活用を支えるTKC会員にお話を伺いました。
※本コンテンツは、情報誌TKC&D CREARE vol.87掲載記事のロングバージョンです。
積み重ねた経験と知識で関与先の見えない課題に
真摯に向き合っていく
事務所全体で不動産への知識を高めることの大切さ
インタビュアー(以下:I):事務所の事業承継当時は、随分ご苦労されたと聞きました
宇田川会員(以下:宇田川):2013年7月、現事務所に社員税理士として入職。その1年半後には先代の引退に伴い、ご縁があって代表に就任いたしました。しかし、当時の経営状況はあまり思わしくない状態だったのです。そこで。私が先頭に立って業務の見える化から着手。顧客それぞれへの関わり方を改めて精査し、職員全員で一つひとつの仕事の整理や効率化を図ることで改善を目指しました。
この“見える化”という作業はとても大事で、大和ハウスさんが個人の土地オーナーさまに向けて行われているPDBシステム※と同じように、私たちは会計事務所として経営や業務の可視化を行うことで、今後どのようにして事業(資産)を守り、成長させていこうかの土台として捉えたのです。
※PDB(Personal Data Base)システム:大和ハウス工業が独自に開発した、総合資産管理システム。資産の現状把握と20年分の相続税・損益収支の推移を予測し、予測に基づいたシミュレーションも行えます。
I:関与先さまが持つ不動産への意識を高められたのも、その頃からだとか
宇田川:業務改善を図ったことで、新たな顧問先が10件20件と増えたとしても、その成果は一朝一夕に得られることはありません。「経営が安定するまで、どうにか業績を補完する手立てはないか」と思案する中、偶然にも所有地の売却を検討されている関与先から相談を受けました。長年のお付き合いで信頼いただいている方だったこともあり、少しでもお役に立ちたいと、親身になって動く中、『買いたい』という業者が複数見つかり、その関与先に満足いただくことができました。
そのときの売却先は大和ハウスさんではありませんでしたが、結果として経営に思っていた以上の余裕が生まれたことが印象的でした。『これからの事務所経営において、思い切ったこともできる』と思いましたし、何より『本来業務以外で、こんなにも関与先に喜んでいただけることがある』と、不動産への意識が一気に高まったことを憶えています。
I:不動産活用の提案をされるにあたり、難しさを感じることはありますか?
宇田川:これからの時代、不動産活用に関わっていくことは、関与先のお役に立つとともに、事務所の発展や経営安定においてもプラスアルファの効果があると感じています。しかし、初めは分からないことが多く、動く金額も大きいだけに怖さはありました。
そんな私が大和ハウスさんに感謝しているのは、営業担当者が日頃、さまざまな案件を事務所に持ち込んでくれて、この案件はどんな趣旨(狙い)で、背景には何があって、スキームの特徴や、お客さまにどんなメリット・デメリットがあるというポイントをきめ細かく教えてくれること。
こうした経験を積み重ねたことで、紹介すればするほど私たちには、不動産に対する知識と知見がどんどん増えていきました。何年もかかりましたが、ようやく不動産業のことが分かってきたと思っています。
I:知識が増えると提案の質も高まるということですね
宇田川:たとえばですが、とある不動産賃貸業をされている関与先から確定申告の相談を受けたとします。申告書を見て「こういう状態だから、いま必要なのは、法人化か、相続対策か、所得税対策か、もしくは事業拡大なのか」ということが分かるようになってきました。新規の方であっても1年分の申告書さえあれば、大まかな内容が分かるので、「今度こんな案件があったら案内しよう」ということが分かるようになってきます。
しかし、注意しなければいけないのは、担当者が信頼を得られていない場合には、いくら良い提案でも相手は「うん」と言ってくれないということ。だからこそ日々の業務が大事で、その方がいまどんな状態かをしっかり把握することで、最適な処方箋(提案内容)が見えてくるのだと思います。
I:そうなると職員の皆さんのスキルアップも重要ですね
宇田川:日頃、関与先との接点が多いのは職員。彼等が日々の業務を通じて信頼を得ていなければ、関与先は話を聞いてくれませんし、計画が定まることはありません。自ずと興味を持ち積極的に取り組んでもらうため、当事務所では成果を出した職員には独自の評価を与えています。
そうなると課題になるのは、関与先がどんな状況であっても、土地活用の話題を各自が勝手に仕掛けるようになること。だから、『本当にその方のためになる提案なのか』と考えることの重要性を、日頃から事務所内で徹底しています。職員には提案前に「この案件のどこがいいと思った?」と必ず聞きます。「協定企業のおすすめだから」と答えるが、よく見ると気付く点があるものです。だから、そこは所長の私が一旦立ち止まって考えさせてあげないといけないと思っています。
いま当事務所では、資産防衛や企業防衛といった関与先の資産に関わる提案については、すべて私が目を通すようルール化しています。協定企業さんから提供されるさまざまな情報も、職員に知識がないと、関与先の不信感につながり、本来業務に支障が生まれる可能性だってあります。だからこそ、職員も不動産の知識を深めなければ。そういった意味でも、大和ハウスさんが定期的に開催してくれる所内研修やランチミーティングなどが役立っていると思います。
関与先の状況と時代の変化を捉えた提案を
I:実際、資産や不動産に課題を抱える関与先さまは多くおられますか?
宇田川:皆さまの事務所におかれましても、大和ハウスさんから「こんな案件をお探しの方はいませんか?」「所有地に困りごとを抱えた方はおられますか?」といった話があると思います。これは、実際に相談を受けていたり、関与先から課題を知らされている場合には、非常に対応しやすい投げかけです。難しいのは、お客さまの潜在的な課題を見つけ出して、具体的な提案につなげること。当事務所では、いままで経験させていただいたさまざまなケースを、課題の顕在化に活かしています。
I:大切なのは課題の顕在化ということですね
宇田川:不動産に限らず、資産に関する課題に気づきを与えることは、税理士業務において、とても重要なことだと思っています。なぜなら自ら『困った』と感じた人は顧問税理士を変えようとするから。いま、当事務所に新規の不動産オーナーの関与先が増えているのは何故か。それは、困りごとを解決してくれる税理士を求めてのことだと思います。確定申告書を見て「こんなところが課題点ですね」、「当事務所ならこう改善していきます」と、税務や収支、資金繰りに関することが中心ですが、上手く解決できればそのまま顧問契約につながります。それに課題解決を通して、将来やるべきことも把握できるので、潜在的な不動産活用ニーズを持つ関与先が一人増えたということになるのです。
確定申告だけの依頼を敬遠される会員もおられると思いますが、私たちはむしろウエルカム。なかには、ある程度の規模の不動産を保有される方がおられますから、機を見て事業拡大や法人化のご提案だってできます。
I:宇田川会員が実践されている提案のポイントを教えてください
宇田川:不動産は、取引額が大きいこともあって、唐突に提案しても多くの方は受け入れてくれません。前置きというか具体的に考えるための土台が必要になります。
私の場合、毎回の確定申告時に「近いうちに相続対策や不動産購入を考えるなら、あなたの場合、これくらいの規模は必要だ」と伝えます。そして、「ちなみに過去にはこんな案件がありました。いまはもうありませんが、次に同様の物件が出たら案内します」と続け、心の準備を促すのです。そうしておけば、条件に合った新規物件が出た際、先の物件との比較を行い、より決断に近づくことになります。こうした話法は、営業同行を通じて大和ハウスさんから学んだ部分が大きいですね。
私は、不動産の提案においても、責任感を持って行動し、「あなたにとって、いまこれがベストです」と、心の底から言いたいのです。実際、それができていれば、結果的に関与先の満足にもつながっていますよね。
I:社会環境が変化する中、注意すべきことはありますか
宇田川:この10年で不動産活用を取り巻く環境はかなり変化してきました。いま、新たに不動産活用を考える方に対しては、所有地の有効活用ならまだしも、土地ごと買うとか、分譲マンションの区分所有などに35年ローンでといった場合、よほどの資産背景と収入がない限り『35年間持ち続けるのではなく、購入後5年・10年でどれだけ稼げるか』という視点で見てくださいと伝えています。
あくまで個人的な考えですが、買ってずっと持ち続けるしか選択肢がないという時代ではなく、売る前提で考えるのが、これからの不動産賃貸業ではないでしょうか。利回りが低下する中でも5年間の収支だけ見れば、プラスになる物件はまだたくさんあります。また同じ物件でも、それぞれの目的や初期投資、所得のバランスなどによって、儲けの度合いが異なるので、私たち税理士はシミュレーションを元に、関与先の判断をサポートする必要があるのだと思います。
I:今後の展望をお聞かせください
宇田川:いまや不動産オーナーの皆さまも、意識改革が必要な時代。保有してきた、あるいは相続した不動産を、ただ守り続ければ良いのではなく、不動産=資産として捉えることで、買い替えや組み換えなども活用の選択肢に含まれてきます。つまり、事業をしているという意識をもっていただきたいのです。
税理士でありながら不動産活用に関わらないのはもったいないと思います。大和ハウスの営業担当者と関わりを持って、不動産への興味を持って、税務だけでなく不動産への知識を深める。何なら物件1棟でも自身で買ってみたら、オーナーの気持ちがよく分かるかもしれません。
建築費の高騰もあり、不動産活用への判断が年々シビアになってきています。そこで関与先それぞれの資産の背景や全体像を把握している私たち税理士が、判断要素を提供してきっちりとサポートしてあげる。もちろん、その土台となるのは、「先生が言うなら間違いないね」と言ってもらえる信頼関係をどうやってつくるか。そのためにも、こちらの思いが伝わり共感いただけるよう、日々の業務をコツコツと愚直に、関与先の悩みに耳を傾け、丁寧に接していくことが基本なのだと思います。
宇田川 滝也(うだがわ たきや)
税理士・行政書士 税理士法人宇田川・松村会計事務所 代表社員 2013年に税理士登録後、すぐに税理士法人を設立し、2015年には代表社員に就任。
資産税と不動産賃貸業を得意分野とされ、「不動産オーナーさまの課題解決はもちろんのこと、課題の発見も事務所の仕事!」という意識で、千葉県全域の土地オーナーさまを中心に関与先の資産防衛に取り組んでおられます。
TKC千葉会企業防衛制度推進委員長を務め、現在はTKC千葉会京葉支部 支部長。
