インタビュー
TKC近畿京滋会 神緒美樹 会員
精力的な活動で関与先さまの有意義な資産活用を支えるTKC会員にお話を伺いました。
※本コンテンツは、情報誌TKC&D CREARE vol.88掲載記事のロングバージョンです。
目標は数字ではなく関与先さまの満足度、
だからこそ「顧問」という名にこだわる
長年にわたり、巡回監査を軸に顧問業務を続けてきた神緒会員。不動産活用による成約額は、13年間で累計100億円を突破しました。「大切なのは数字ではなく、関与先さまの満足度」と語る神緒会員に、顧問として大切にしてきた考え方や関与先さまとの向き合い方についてお話を伺いました。
巡回監査の積み重ねが、
長くお付き合いいただける関係につながる
インタビュアー(以下:I):神緒会員がお考えになる「顧問税理士」の在り方について教えてください。
神緒会員(以下:神緒):世間ではよく「顧問税理士」という言い方をされますが、私はあえて「税理士」をつけずに「顧問」と呼ばれることにこだわってきました。税理士と名乗ることで、仕事の範囲が税金計算に限定されてしまうように感じるからです。
毎月顧問料をいただく立場として、どのような付加価値を提供できるのかを常に考えてきました。私にとって、生命保険や倒産防止共済(経営セーフティ共済)は売るものではなく、関与先さまに情報提供を行い、指導するものです。人生で最も高額な買い物のひとつである不動産についても、その分野を知らなくていいはずがありません。私は京都市内のほとんどに土地勘があり、相場感も把握しています。それは特別なことではなく、顧問として当然備えておくべき知識だと認識しているからです。
I:顧問業務の中で、巡回監査はどのような役割を果たしていますか。
神緒:TKCが提唱している巡回監査は、私にとって顧問業務の根幹となるものです。巡回監査を行うことで、会社の状況だけでなく、社長個人やご家族のことまで自然と把握できるようになります。例えば、不動産が動いた、家族構成や状況が変わった。そうした変化は、決算書だけを見ていても分かりません。毎月顔を合わせ、会話を重ねているからこそ気づけるものです。だからこそ私は、できるだけ自分自身が直接関与先さまと会うようにしてきました。
確定申告も、もちろん職員に任せることもありますが、今も可能な限り一緒に行っています。確定申告は大変な時期ですが、一番楽しい時期でもあります。一年ぶりに会う関与先さまがどう変わっているのかを知ることができるからです。関与先さまの状況が変わったときこそ、私たちがアドバイスや提案をするチャンスです。結果的にそれが一番のビジネスチャンスになるかもしれません。
直接会って得た情報をすべて吸収し、次の提案につなげていく。それが私の基本的なスタイルであり、その積み重ねが、長くお付き合いいただける関係につながっているのだと思います。
不動産活用をライフプランとして提案するから
本当に楽しい
I:不動産活用はライフプランをつくるうえでも良い選択肢だとお考えですか。
神緒:「資産防衛」という言葉は、ご所有している資産をいかに有効活用するのかという観点から生まれたものだと思います。私もそうした目的で土地活用を提案することはありますが、それだけではありません。私が大切にしているのは、関与先さまが一生安泰にお過ごしになることです。例えば、京都周辺で全額借り入れをして有効活用を行った場合、キャッシュフローとして年2%で、1億円で年間200万円、2億円で400万円ほどが残ります。こうした数字を示して提案すれば、関与先さまは「これで生活していける」と安心できます。「これで子や孫に好きなことをさせてあげられる」と喜ぶ姿を、これまでたくさん見てきました。現役時に羽振り良く過ごすだけではいけません。
賃貸住宅経営を相続対策として紹介しても楽しくありませんが、ライフプランとして提案するのは本当に楽しいものです。関与先さまの顔が輝きますから。実際、私の関与先さまで嫌々建てたという方はほとんどいません。皆さん納得したうえで建てられるので、2棟目、3棟目につながるケースも多く、そうして積み重ねてきた結果が、13年間で100億円という数字になったのだと思います。
I:資産活用を提案する際、特に大切にしていることはありますか。
神緒:相続対策もライフプランも、一人ひとりまったく違います。だからこそ、会社のことだけでなく、ご家族のこと、そしてその方の人生全体を知らなければ、ピンスポットに当てるような提案はできません。個人で建てるのか、共有にするのか、法人で行うのか。そうした複数の選択肢を整理したうえで、建てることにはどんな意味があるのかを、関係する全員に理解していただくことが大切です。そうすると、空室などのマイナス面ばかりを気にすることはなくなります。関与先さまの頭の中ではすでに自分の楽しい人生を描けているので、必要以上にネガティブなことを考えなくて済むのです。
ただしそのためには、マイナスが出ないような仕組みを最初からつくっておく必要があります。その点において、私は、大和ハウスと積水ハウス以外で建ててはいけないとお伝えしています。そうでないと、後になって大変な目に遭うからです。ハウスメーカーをお勧めする際には、そのメーカーの特徴を理論整然と説明できなければいけません。専門的な知識でなくても構いませんが、推奨する根拠を明確に伝える必要があります。
私は、関与先さまから依頼されない限り、相見積もりもほとんどとりません。多くの棟数を手掛けてきた経験から、家賃と建築費を聞けば、頭の中でおおよその収支が計算でき、どのような結果になるかすぐにわかるからです。建て方や管理の仕組みまで含めて設計し、将来にわたって無理のない形で続けられるかどうかを見極めることが大切です。
I:大和ハウス工業の一括借上やサポート体制は、将来への安心感につながると思われますか。
神緒:そうしたサポート体制があれば、お子さんの代に替わっても管理の手間がかかりません。私は、一括借り上げの一番の良さは、家賃が固定される点よりも、大規模修繕以外にオーナーが登場しないで済むことだと思っています。小規模の修繕であれば、電話一本で「お任せします」で終わりです。そうなれば、その地域に住み続ける必要もなくなります。全世界を渡り歩くような方で、将来どこにお住まいになったとしても困りません。もちろん、大和ハウスさんに対する絶対的な信用がなければ、私がお勧めすることはありません。
I:提案が決まるタイミングはどのように見極めるのでしょうか。
神緒:有効活用を提案する前に、まず関与先さまの情報をしっかり把握しておく必要があります。巡回監査を通じて関与先さまの変化に気づくことで、自然とタイミングが見えてきます。そしてその時点で、私の中ではおすすめするものも決まっています。
話を切り出すまでは何度も関与先さまとお会いしますが、いったん切り出してからは2、3回で契約してしまうのが私のやり方です。最短2回目の訪問で営業を連れて行き、そのまま契約していただくことも多いですが、決して急がせているわけではありません。相続を前面に出して売ることも、関与先さまが望まない段階で話を進めることもありません。関与先さまが望まないのに、手元の資料で勝手に相続の現状分析を行うのは失礼ですし、相続を謳って売るのは脅迫営業になりかねないと思っています。
実際には、ご本人よりもお子さまがゴーサインを出すケースも少なくありません。ですから、お子さまに、「これで私の人生やっていける」と思ってもらうことが大切です。家族全員が納得できる状態が整ったときに初めて、話は自然と前に進みます。巡回監査を通じて築いてきた信頼関係があるからこそ、その方にとって最善の道を一緒に考えることができるのだと思っています。
私にとっての目標は数字ではなく関与先さまの満足度
I:事業承継や今後の経営について、どのような考えをお持ちですか。
神緒:事業承継で最も大切なのは、財務内容の良い会社をつくることです。財務内容が良ければお子さんは自然と事業を継ぎます。継がなかったとしても、M&Aという道がありますし、悪い条件で足元を見られることもありません。ですから、私は自己資本を最も重視しています。どうしても損益に目がいきがちですが、そこだけを見て「儲かった」「儲かっていない」と言っているうちはまだ半人前です。貸借対照表をきちんと見て、自己資本比率がどれだけ高まったかを語れるようになって、初めて一人前なのではないでしょうか。
最近では、事業承継に関わってM&Aを行うケースも増えていますし、分社、合併、組織再編を行うこともあります。今は分社して会社を分けることができるので、お子さまが2人いる場合はそうした提案も積極的に行っています。不動産の有効活用においても、法人の相続対策の一つとして、お子さまが3人なら3社つくるなど、お子さまの人数に合わせて会社を設けるケースもあります。
私は、お子さまが必ずしも事業を継ぐ必要はないと思っています。継ぐ・継がないを含めて、選択肢を用意してあげること。それが経営者の責任であり、事業承継の本質だと考えています。
I:経営のアドバイスとライフプランは、同じ延長線上にあるということですね。
神緒:だからこそ、巡回監査が大事なのです。関与先さまとのコミュニケーションを通じて信用を高めていくことで、何を言ってもすぐに響き、契約につながるのだと思っています。私は売り上げを求めて活用の提案をしたことは一度もありません。保険業務も同じで、挙績のことを考えたことは一度もありませんし、目標にすることもありません。売上目標を立てること自体は悪いことではないのですが、意識しすぎると請求が高くなってしまい、最適な保険を提案できなくなります。
私は石橋を叩いても渡らないような性格で、物事は徹底的に考え抜きます。自分の関与先さまであっても、必要なときには、はっきり伝えます。最初の話に戻りますが、顧問としてできることは全部やる。何を聞かれてもきちんと答えて、バックボーンに情報を持っていると思っていただけない限り、関与先さまからの信用は得られません。
私にとっての目標は、数字ではなく関与先さまの満足度です。「顧問」という言葉にこだわるのも、そういう理由からです。税理士と名乗ることで業務の幅が狭まってしまうので、私は顧問と呼ばれるほうが嬉しいのです。
巡回監査の徹底により、13年間で成約累計金額100億円超という金字塔を打ち立てられた神緒会員。大和部会において職業会計人の使命を体現される傍ら、大和ハウス工業の取り組みに対し多大なるご支援を賜りました。
【賃貸住宅における一括借上に関する注意事項】
- 賃貸住宅を賃貸する場合、借主(サブリース会社を含む)による一定の条件があります。
- 賃料は、契約開始日以降、賃貸借契約に基づき一定期間経過時およびそれ以降も契約に定める期間が経過するごとに、貸主借主協議のうえ、賃料の改定を行う場合があります。
- また、改定時期にかかわらず、物価・経済状況の変動や近隣賃料の著しい変化等により賃料が不相当になった場合も、貸主借主協議のうえ、賃料の改定を行う場合もあります。
- 賃料改定の協議が、賃料の改定期日以降に整った場合は、改定期日に遡って改定されます。
- 賃貸借契約においては、契約の定めに従い、賃料の免責期間が適用される場合があります。
- また、建物や設備の維持修繕等においては、建物の所有者としてご負担いただく費用があります。
- なお、賃貸借契約期間中においても解約になる場合があり、また、貸主から更新の拒絶をされる場合に正当な事由が必要となります。
神緒 美樹
1992年、神緒美樹税理士事務所を開業。京都・滋賀・大阪・奈良などの地域を中心に、関与先さまと共に明るい ”みらい” を創造することを目指し、2012年には税理士法人みらい経営を設立。大手ハウスメーカー、建設会社の顧問、数多くの相続対策を経験され、金融機関ほかにて数多くのセミナーも実施。TKC近畿京滋会 資産活用委員会 大和部会 元部会長。




