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コラム No.53-15

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(15)廃校活用事例1 廃校となった校舎を活用した地域活性化事例

公開日:2019/07/31

全国で増加している公立小中学校等の廃校の再利用により、地域の賑わいを取り戻している取り組みをご紹介します。

「みんなの廃校プロジェクト」に注目

近年、少子化による児童生徒数の減少や市町村合併などの影響により、公立学校が毎年500校程度廃校となっており、文部科学省によれば、平成14年度から平成29年度までに廃校となった公立小・中・高等学校等の数は7,583校に及んでいます。学校は地域にとって貴重な財産であり、また地域の象徴的な存在でもあります。そのような施設に対して、地域内の再活用ニーズが見いだせず遊休化することは、地域にとっても大きな損失ですし、地域の安全や環境面でもマイナスとなってしまいます。そこで文部科学省は、平成22年から「~未来につなごう~みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、地方公共団体の要望に応じて廃校情報を広く地域内外に発信し、廃校の活用を希望する企業や団体とのマッチングを図る取り組みを行っています。

国庫補助を受けて建設された学校施設を学校以外に転用・売却する場合は、公的施設であることから、原則として、補助金相当額の国庫納付等の財産処分手続きが必要となりますが、文部科学省では、廃校の活用を促進するために、国庫補助事業完了後10年以上経過した建物等の無償による財産処分の場合は、相手先を問わず国庫納付金を不要とするなど、財産処分手続きの大幅な簡素化・弾力化を図り、地方公共団体の取り組みを支援しています。

また、廃校を活用するための改修や整備に対しては、内閣府の地方創生推進交付金や国土交通省の社会資本整備総合交付金(空き家再生等推進事業)、総務省の過疎地域等自立活性化推進交付金など、さまざまな国庫補助制度が用意されています。
廃校施設の活用は、学校施設を活用することで、同規模の建物を建設する場合と比べて費用と時間の節約が期待できること、地域に密着した事業を展開する際に、学校施設を拠点とするために地域の理解が得やすいこと、「学校施設の再利用」という形の地域貢献により、地域活性化を推進できること、などのメリットが考えられます。

このプロジェクトはさまざまな活用事例を生み、「平成30年度 廃校施設等活用状況実態調査」によると、平成30年5月1日現在で廃校施設の75%がさまざまな用途に活用されています。

多様な廃校活用事例が続々

廃校の主な転用事例としては、公民館などの社会教育施設や体育館などの社会体育施設といった公営施設への転用、大学等の地方キャンパスなどの学校教育施設、医療福祉施設等への転用が比較的に多く見られますが、民間ニーズを掘り起こし、発想豊かなアイディアで廃校を再生した事例が近年増えてきています。

そこで、文部科学省がまとめた最新の「廃校施設活用事例集」から、ユニークな事例を少しご紹介します。

  1. 【高知県室戸市 旧椎名小学校】水族館として活用(愛称:むろと廃校水族館)
    NPO法人日本ウミガメ協議会の提案により、廃校をミニ水族館として再利用した興味深い事例です。当施設は、室戸の海域で生息する海洋生物の飼育・展示・研究を行うとともに、飼育魚類やウミガメ等への給餌、測定体験など、見るだけでなく海洋生物と触れ合える水族館として活動しています。
    プールはウミガメの飼育場に、手洗い場や跳び箱も水槽として活用、長い廊下にも水槽を並べて展示するなど、既存の設備を再利用することで、学校の雰囲気を残した懐かしさや親しみのある水族館だということです。
    この施設には、2018年4月~12月で観光客や家族ずれが約12.5万人訪れており、過疎化が進み子どもの声が少なくなった当該地域に再び子ども達の声が聞こえるようになったと、地元の住民にも好評とのことです。
  1. 【宮崎県えびの市 旧飯野小学校高野分校】トラフグ養殖・加工施設として活用
    民間事業者が、えびの市内で唯一屋内プールを有していた旧飯野小学校高野分校を借り受け、プール内に円形水槽を設置、地域資源である温泉水を利用してトラフグを養殖し、地域おこしを推進している好事例です。水質調整を行うことで、トラフグが通常より早く成長するため、1年程度で出荷可能とのことで、今後、地域の旅館や飲食店とも協力して、「えびの温泉トラフグ」の名称で地域名産品として育てていく計画です。
    民間事業者にとっては初期設備投資が大幅に抑えられるメリットがあり、また地域住民にとっては、地域の活性化や雇用の創出に繋がるとして、大いに期待されています。

公立小中学校は地域の「スマート・ベニュー」

都市部においては、学校の他にも大規模な商業施設が多くありますが、地方部における公立小中学校は地域のシンボル的な存在で、いわば地域の「スマート・ベニュー」といえるでしょう。特にその学校で学んだ住民にとっては、廃校となっても親しみのある施設として、特別な想いがあります。それが再生され賑わいを取り戻すことで、地域に活気が戻ることは、地域コミュニティを醸成する面でも大変意義のあることです。
「廃校プロジェクト」が契機となり、地域における廃校という遊休資産を利活用した産学官連携によるニーズの発掘がさらに進むことにより、地域活性化の取り組みが広がることに期待したいと思います。

※「スマート・ベニュー」
「周辺のエリアマネジメントを含む、複合的な機能を組み合わせたサステナブルな交流施設」を意味する造語で、(株)日本政策投資銀行の登録商標です。

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