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コラム No.53-3

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戦略的な地域活性化の取り組み(3)所有者不明土地の利用の円滑化

公開日:2018/07/31

未利用土地の有効活用に関して、平成27年度に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されましたが、今年6月に所有者不明土地の活用に関連する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が国会で可決され、来年6月までに施行されることが決定しました。

所有者不明土地問題

所有者不明の土地に関しては、次のような報道を目にすることがあります。

  • ・台風で裏山が崩れ、ふもとの住宅に土砂が流れ込んだ。しかし、1年たっても工事が進まないため、近隣の住民の不安は募るばかり。この裏山の所有者は50人で、その所在がはっきりしない。
  • ・都内の住宅地にある道路の拡幅が必要だが、所有者不明の土地に阻まれて、一部に出っ張りが出来てしまっている。名義人は100年以上変更されていない。自治体は10年間相続人の確認作業をしているが未だに全容がつかめない。
  • ・市街地の中心にある3階建てのビルの外壁が剥がれ落ちて、いつ崩壊してもおかしくない状態。自治体は所有者を調べたが、行方は分からない。
  • ・地方にある土地。登記簿上の所有者は40年以上前に死亡。昨年、東京に住む孫にあたる女性が相続したが、自分には使い道がないし、登記にお金がかかるので、登記簿を更新していない。土地の価値がないので買い手もいない。
  • ・東日本大震災のあと、所在者不明地が見つかり、復興事業が遅れる要因となった。

このような所有者不明土地のトラブルは、枚挙に暇(いとま)がありません。国土交通省の2016年度地籍調査によれば、所有者不明土地は、2016年時点で約410万ha、九州全土よりも広いとされています。また、不動産登記簿上で所有者の所在が確認できてない割合は約20%に上り、探索した結果でも、最終的に所有者の所在が不明な土地は0.41%となっているそうです。

不動産登記簿の変則型登記と土地収用法の運用

不明土地が発生する原因のまず一つ目は、不動産登記簿の記載不備の問題があります。
不動産登記簿の表題部所有者欄には、所有者の住所・氏名が記載されることになっていますが、これが氏名のみだったり、村落の名前が書かれている場合などがあるそうです。このような変則型登記がされているのは、1960年の税徴収のために使われていた土地台帳と不動産登記簿を一元化した際、正しい所有者を探さずにそのまま引き継いでしまったためだといわれています。さらに、不動産登記には法的義務はないので、その後も相続人などによる登記もされずに、元のままの状態が続いている登記簿が多数発生することとなりました。
二つ目は、所有者不明土地の利用に関する法的な整備の問題です。
憲法29条(財産権)には、公共の福祉に適合する財産権は不可侵であることが明記されています。一方、第3項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定しており、これを受けて1951年に制定されたのが土地収用法です。
仕組みとしては、公共の利益と私有財産との調整を図るために、公正中立な立場で判断する権能を与えられた行政委員会「収用委員会」を設置し、収用が必要な事業の「事業認定手続」、土地所有者等に対する補償金の額等を決定する手続「収用認定手続」を経て、土地収用が可能となります。また、土地所有者が確知できない場合は、収用委員会が土地所有者不明としたまま裁決することを可能とする制度もあります。その場合は、起業者が補償金を供託することにより、土地所有権の取得と同じ効果が生じることになります。
しかし、所有者不明土地の収用に関していえば、土地収用法の運用では、土地所有者や相続人の探索や、裁決手続きに多大な時間と労力を要することになり、所有者不明土地の活用を推進する妨げになっていました。

「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」

土地収用法の特別措置法を制定し、所有者不明土地の活用を促進し、更に所有者不明土地の根本的な問題を解決する第一弾となる法律が、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」です。具体的には、以下のような改善策を講じます。

  • (1)国、都道府県知事が事業認定した事業について、収用委員会による裁決手続等を経ずに、収用委員会に代わり都道府県知事の裁定で収用することができる。
  • (2)道路、学校、公民館、図書館、社会福祉施設、病院、公園、緑地、広場、運動場、災害復興のための住宅や施設など、地域住民などの共同の福祉または利便の増進を図るために行われる地域福利増進事業を創設し、都道府県知事が公益性を確認、一定期間の公告に付した上で、10年以下の期間を定めて、申請事業者に対し利用権を認める。
  • (3)土地の所有者の探索のために必要な公的情報について、行政機関が利用できる制度を創設する。
  • (4)登記官は、長期にわたり所有権の登記がされていない場合は、職権で、長期相続登記等未了土地である旨を土地の登記に記録することができる制度を創設する。
  • (5)所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設する。

また国は、2020年を目途に、「地籍調査等の着実な実施」、「登記所備付地図の整備」、「変則型登記の解消」、「登記制度・土地所有権等の在り方、相続登記の促進」、「土地所有者情報を円滑に把握する仕組み」等に関する法整備を行う予定としており、所有者不明土地の解消と円滑な利活用に向けた抜本的な対策に乗り出しています。
将来的に、これらの法律が効果的に運用され、未利用の財産が地域資源として有効に利活用されて、地域の活性化につながることを、多いに期待したいところです。

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