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コラム No.53-5

PREコラム

戦略的な地域活性化の取り組み(5)日本版BID制度「地域再生エリアマネジメント」

公開日:2018/09/19

今回は、大都市の都心部、地方都市の商業地、郊外の住宅地などで取り組みが進められている、地域再開発・管理の手法「エリアマネジメント」について紹介します。

エリアマネジメントとは

国土交通省が発行した「エリアマネジメント推進マニュアル(2008年)」によれば、エリアマネジメントとは「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」と定義されています。つまり、地域の利害関係者が連携して、地域の環境づくりを行う取り組みです。エリアマネジメントの目的としては、地域の(にぎ)わいを創出し、地域のブランド力を上げることとされており、 その管理運営の範囲は、単なる土地建物の再開発に留まらず、イベントの開発や交通網の整備、防災・防犯など住環境の整備など、地域の課題解決の取り組み全般を含んでいます。エリアの広さ・広がりによっては、「タウンマネジメント」といわれることもありますが、ほぼ同義であるとされています。

エリアマネジメントの事例

最近、大都市の駅前再開発が盛んです。東京の大手町・丸の内・有楽町地域や品川港南地域、日比谷のミッドタウン、名古屋駅前地域、大阪駅の梅田地域など、見違えるような変貌を遂げています。実はこれらの地域では官民連携によるエリアマネジメントが実施されています。ひと昔前であれば、官主導の区画整理に乗って、民間事業者がそれぞれの商業施設を建設し管理運営することが主流でした。しかしそれでは、開発地域全体の管理運営が難しいために、地域課題に対応できず、地域の魅力も低下し、結果的に資産価値の低下を招くことにもなりかねませんでした。そのような考えから、大小の地域で利害関係者が連携して管理運営に取り組む活動が活発化しており、その主体も株式会社からNPO法人のような非営利団体、自治会、町内会などさまざまです。

地域を管理運営する難しさ

考えてみれば、地域を管理運営する活動は、昔からありました。自治会や町内会は、会費を住民から徴収して、地域の清掃やお祭り、こども会などの運営を行って地域の環境と賑(にぎ)わいを維持していましたし、地方都市では現在でも活動が活発な地域もあります。
しかし、少子高齢化と地域連携の広域化などにより、担い手が不足するとともに、地域企業との利害調整など管理運営の高度化が要求されることで、ボランタリーな活動では地域活性化、地域再生に十分な効果を上げることが困難となっています。エリアマネジメント手法は、そのような時代背景から必然的に生まれたものと考えることもできます。
さて、地域の管理運営(エリアマネジメント)を持続可能な活動とするためには、何が必要でしょうか。例えば、民間事業者(株式会社など)であれば、事業収益を上げ、雇用を確保し、収益を再投資することで事業が持続します。収益事業だけではないエリアマネジメント事業であっても、活動する人材と何らかの収入が必要です。広域的な公共性が高い事業であれば、行政からの補助金などで市民税を薄く広く活用する手段もありますが、地域が限定した事業に対する補助を継続するのは難しいのではないでしょうか。この人材と活動資金源の確保が、エリアマネジメントの大きな課題ではないかと思われます。

欧米のBID(Business Improvement District)制度

BID制度とは、1960 ~ 1970年にかけてカナダで開発され、1980年代から米国や欧州をはじめ世界的に導入されているエリアマネジメントの取り組みです。BID制度は、国や州によって法制化されており、BIDに認定されると、地域の地権者や事業者から徴収する負担金を財源に、地域の維持管理やプロモーション活動を行うことができます。例えば米国ニューヨーク州マンハッタンでは、治安が悪化したブライアントパーク周辺の地権者がBIDを立ち上げ、公園の治安改善を行い、イベントや売店などを設置することで賑(にぎ)わいを取り戻した事例などがあります。このBID制度を、日本にも取り入れることで、エリアマネジメント組織の基盤が明確となり、人材や財源の確保手段が可能になれば、地域の維持管理、賑(にぎ)わいの創出、地域の再生が進むものと思われます。

日本版BID「地域再生エリアマネジメント負担金制度」

2018年2月6日に「地域再生法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、2018年6月1日に公布されました。その中に、日本版BID「地域再生エリアマネジメント負担金制度」の創設がありました。簡単に説明すると、まず、エリアマネジメント団体が受益者の3分の2以上の同意を得て、市町村に「地域来訪者等利便増進活動計画」を申請します。市町村がこれを認定し、条例で受益者の範囲、負担金の額や徴収方法などを規定したうえで、受益者から「受益者負担金」を徴収、交付金としてエリアマネジメント団体に交付します。エリアマネジメント団体は、交付金を元にエリアマネジメント活動を実施することができます。これによって、地域の合意形成プロセスが明確となり、受益者負担のルール化によってエリアマネジメント活動から得られる地域活性化効果にフリーライド(ただ乗り)する事業者を排除し、受益者の公平性を維持しながら、エリアマネジメント活動を支える安定的な財源が確保できることになり、活動に弾みがつくことが期待されます。

エリアマネジメント活動が制度化されたことで、これまで地域活動を支えてきた活動団体の再編成が進み、官民連携による地域再生・活性化のエコシステム(自然界における生物と、それを取り巻く環境が相互作用しながら存続する循環システム)として定着すれば、地域のさまざまな課題を解決するエンジンとして、大いに有効なモデルとなるでしょう。

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