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コラム No.53-6

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戦略的な地域活性化の取り組み(6)地域の資産価値を向上させるBID制度(地域再生エリアマネジメント制度)

公開日:2018/10/23

海外でのBID制度

BID(Business Improvement District)制度は、1970年代にカナダのトロントで誕生し、1980年代に米国で発展、欧州をはじめ全世界に普及したといわれています。米国での発展の背景としては、当時の政府が経済の急速な冷え込みにより、地方都市への交付金を減らしたことが挙げられます。 1970年代のニューヨークなど米国の大都市部は、犯罪の多発やゴミの散乱による都市美化の低下、街灯設置など歩行空間の整備の遅れ、ホームレスの増加などで、地域の魅力が衰え不動産価値が低迷するなど、地域の地権者は多くの課題を抱えていました。その解決手法として、受益者負担によるエリアマネジメント制度(BID制度)が、1981年にニューヨーク州とニューヨーク市で法制化され、全米に広がりました。

BID制度は、一言でいえば「受益者負担による経営的アプローチ手法」です。 つまり、地域活性化のさまざまな取り組みの恩恵を受ける対象者を明確にし、認定事業者が受益者から強制的に負担金を徴収し財源を確保。その財源を活用し地域再生に向けて投資する適正な事業を選定・実施し、地域の資産価値を向上させる制度といえます。そのBID制度には、次のような特徴があります。

  1. (1)地域受益者の明確化
    地域(区画)を明確にし、その地域で不動産を所有する全地権者(あるいは事業主とする地域もあるようです)が対象であることを明確に定義します。
  2. (2)地域受益者のコミットメント
    BID制度の認定を受けるにあたり、地域地 権者の3分の2以上(または過半数とする地域もあるようです)の賛成を得ることが条件となります。これにより、地域の地権者の賛同を確認し、 BID制度へのコミットメントを明確にします。
  3. (3)財源の確保(受益者負担金の徴収)
    BID制度の大きな特徴ですが、法制化されたBID制度の認定を受けると、地域の受益者は強制的に負担金を徴収されます。地域で賛成票を入れなかった地権者も徴収を逃れることはできません。徴収方法としては、多くの場合、自治体が受益者の受益規模に応じて、税金と同じように徴収し、認定された事業推進組織に交付する仕組みを採用しています。
  4. (4)独立した意思決定機関の設置
    当然ですが、強制的に徴収した負担金の運営にあたっては、一部の地権者や特定者の恣意的な利益を排除する必要がありますので、公平で透明性のある意思決定機関の設置が必要になります。いわば、受益者から預かった資本を地域のどのような事業に投資して地域を活性化し、受益者に利益をどう還元するかといった、会社経営と同様の機能が求められます。

BID制度とこれまでの地域活性化の取り組みとの違い

国内においては、現在まで、商店街振興組合や市民参加型まちづくり活動など、さまざまな地域活性化に向けた制度や取り組みがあります。地域による子どもや高齢者の見守り活動、市街地の美化活動、空き店舗などへのテナント誘致活動、各種イベントの企画など、地域自治体や商工会・商工会議所など支援機関と連携したモデル的な取り組みが多く報告されています。
その反面、活動資金の不足や、活動をマネジメントする人材の不足、活動効果の不明瞭さ、地域全体ではなく部分的な利益への優先傾向など、持続可能な活動を困難にする課題も、いくつか指摘されています。そのような課題や問題を解決する制度として、受益者負担によるアプローチであるBID制度に期待が寄せられています。

国内初のBID制度「大阪版BID制度」

大阪うめきた地区周辺は、JR・阪急・阪神・地下鉄3線、9駅が乗り入れし、1日240万人が行き交う西日本最大のターミナル機能を有しています。現在、この地域にあるJR西日本の梅田貨物駅跡地の再開発が進んでいます。まず、先行開発区域(7h)として、2013年4月に「グランフロント大阪」が開業し、2期区域(14h)の開発も引き続き進んでいます。その「グランフロント大阪」で、まち全体のマネジメントを担っているのが「一般社団法人グランフロント大阪TMO」です。同団体は現在、巡回バスの運営やイベントの企画、オープンカフェ・広告の管理、清掃・ 巡回・施設点検などの歩道空間の管理など、地域全体の活性化に向けた活動を行っています。しかし、エリアマネジメント活動に要する費用の確保や運営団体の権限に関する法的根拠の未整備などの課題がありました。そこで大阪市は2014年4月に、現行法を前提とした「大阪市エリアマネジメント活動促進条例」(大阪版BID制度)を創設、2015年4月には、グランフロント大阪の地権者であるデベロッパーや建設会社、不動産会社、鉄道会社、銀行など12社で構成する「一般社団法人グランフロント大阪TMO」が制度適用の第1号団体となりました。2018年6月に公布された日本版BID「地域再生エリアマネジメント負担金制度」は、「大阪版BID制度」の根拠法を整備した側面もあります。

大阪版BID制度によるエリアマネジメント運営への効果として、大阪市などより次のようなことが報告されています。

  • ・行政が徴収する財源のもとで活動できる(活動財源を安定的に確保できる)
  • ・協定に基づいてより大きな裁量のもとで公共空間を活用した事業展開が可能となり、事業収益の確保などが期待される(自主財源を確保しやすい)
  • ・分担金を財源として、単なる公物管理にとどまらず、公共性のある事業を含めた幅広いエリアマネジメントに発展する可能性がある(今後の幅広い事業展開が期待される)

このような運営基盤の下で、柔軟で計画的なエリアマネジメント活動が実現したことにより、「グランフロント大阪」を中心に地域の来街者数は確実に増加しており、地域経済の活性化につながっています。また、地域の経済的発展あるいは居住環境の整備など、地域の魅力度が向上したことにより、公示地価も上昇しており、地域の地権者の利益にも貢献しています。うめきた地域は、国内におけるエリアマネジメントの先行モデル的事例といえるでしょう。

うめきた地域では現在、「みどり」と「イノベーション」の融合拠点をテーマに、2期区域の開発が進んでいます。「みどり」豊かなうめきた地域に、国内外から多くの人々が集い、「イノベーション」が生まれ、新産業を創出する「うめきた」が、将来にわたって発展していくことで、日本版BID(地域再生エリアマネジメント負担金)制度が新しいトレンドとなることが期待されます。

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